Con Gas, Sin Hielo

細々と続ける最果てのブログへようこそ。

「スノーデン」

2017年02月18日 21時02分10秒 | 映画(2017)
ロシアはユートピアなのかな。


何が驚いたと言えば、作品が一貫してスノーデンという人物を英雄として描き通していることである。

映画が辿るのは、愛国心から軍隊を目指していた一人の青年が、恋人リンゼイの影響を受けて清く正しい人間へと成長する物語である。

巨大な権力が弱き個々人の生活のすべてを監視下に置いているということは、自由に生きる権利を尊重する立場からすればとんでもないことだ。

だからと言ってスノーデンの行ったことが100%正しいのかというと、映画の宣伝文句にあるように英雄か裏切り者か意見が二分されるのが普通だろう。

しかし、作品は常にスノーデンの側に立ち続けている。テレビ電話の大画面を威圧感全開で迫ってくる指導教官コービンなんて、字幕の言葉を読まなくてもはっきり巨悪と分かる勧善懲悪方式なのである。

それ故にドラマとして見る分には見応え十分でおもしろい。謎が多かったスノーデン事件の流れをざっくりと掴む上でも有効だ。

ただ社会派の作品として評価しようとしたときには、あまりに視点が偏り過ぎて話にならない。

彼の行為は、個人のプライバシーを米国の権力から守るという一面では正しい。しかし、莫大な情報収集の先にある、米国の国益となるはずだった本来の目的の達成を遠ざけたという別の一面に触れることはしない。

どちらが正しいかではない。視点をどこに置くかで正しさは変わりうる。結果として未だ世界に残る人権無視国家が情報戦に勝利すれば、いま以上に多数の人民の権利が脅かされることになるだろう。

でも不思議なことに、この作品はけしからん!とも実は思わないのである。

それは、O.ストーン監督は敢えてこういう作り方をしたのだろうと推測できるからである。

自分が信じる正義こそ唯一として他の思想を徹底的に排除する妄信的な人たちは始末に負えないが、O.ストーン監督は多面的な考え方があることはおそらく分かっている。その上で、それでも自分が優先するものはこれなのだという意志を押し出しているのである。

しかし、残念と言おうか皮肉と言おうか、スノーデンがいくら力を尽くそうとも自分たちの正しさを競う戦いの場は収まる気配がない。そろそろ疲れて休んでくれないものかと切に思う。

(70点)
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「サバイバルファミリー」

2017年02月15日 21時49分47秒 | 映画(2017)
間違いなくワープ使用。


もし突然電気がない世界になったら。

想像以上に何もできないことが分かったのは、東日本大震災後に実施された計画停電のときであった。

数時間でも日常にストレスフルな影響が出る状態が、長期間にわたり強いられることになったら、我々はどういう選択をとるのか。

こう書くとちょっとしたディザスタームービーのようにとられかねないが、本作のテーマはどちらかといえば家族や日常の大切なものを見直そうよという極めて道徳的なものであった。

スマートフォンに夢中になってお互いの顔を見合わせることもなくなった家族が、極限状態に置かれて初めて知るかけがえのないもの。

分かりやすいと言えば分かりやすく、とても健全だ。小日向文世演じる器の小さい父親っぷりも、無難に場内の笑いを誘う。

ただ残念なことに発見はない。意外性もない。

電気が消失して予想どおりみんながあたふたして、主人公の無茶な提案に乗った家族はやっぱり散々な目に遭って、それでもどこからか救いの手が現れて、なんとか目的地に辿り着いて家族も幸せを取り戻す。

道中の描き方も相当に粗っぽい。

飛行機に乗ろうと羽田へ向かうが、滑走路横のフェンスまで来てようやく飛んでないことが分かるとか、高速道路にトンネルは数限りなくあるのに、日本坂トンネルだけでとんでもない体験をするとか。

大阪を越えたら高速をやめてとんでもない田舎道を走っているのも意味不明。

もともとリアリティを求めていないと言えばそれまでだけど、序盤で沿道に九州の紳士服フタタが出てきたり、まったく関係のない仙台のDIYダイシンが出てきたり。

海老名SAの付近が2車線だったり、ちょっと下りると山の中だったり、とにかく違和感が半端ない。

フィルムコミッションが盛んに活動しているのは結構なことだが、何でもかんでも手を上げるのは考えものである。

まあ、主軸に据えている道徳観にはまったく文句はないので、そこまでこき下ろす必要もないのだが、映画館で観るほどのものではないのは間違いない。

(55点)
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「ドクターストレンジ」

2017年02月02日 19時39分23秒 | 映画(2017)
人生に迷ったら東洋を目指せ。


まだまだ広がるMARVELの世界。本作の主人公は時間と空間を操る能力を持つ、まさに最強のキャラクターとの触れ込みである。

映像はとにかく張り切っている。歪んだり、切り離されたり、繋がったり。プロジェクションマッピングを映画に入れ込むとこんな感じなのかなと思った。

ただ、これまでのヒーローと違う次元にいるからだろうか、話がうまく頭に入ってこなかった。

魔術師の師匠・エンシェントワンが永遠の命の力を借りていたことが発覚するのだが、何故分かったのかがよく理解できず。

このことを単純に悪事と見なす兄弟子・モルドと経緯を咀嚼して師匠の立場を理解する主人公の違いは興味深いが、観ている側にも主人公の思考が実感できるようもっと丁寧に描いてもらいたかった。

丁寧さ絡みでもうひとつ、映画の尺を考えると仕方のないことだが、高慢な医師だったストレンジが魔術の力と向き合うことで正義のヒーローに生まれ変わるという最も大事な下りが、やはり物足りなかった。

天才医師としての能力故に魔術の才能に早く目覚めても構わないが、正義に目覚める明確なきっかけが分からないまま敵と戦っていたように見えた。まあ、マントは完全に見抜いていたようだが。

全体的に派手な画像に圧倒されて他の部分の印象が薄まってしまったのかもしれない。シリーズ1作めは詰め込むべきものが多くまとまりが悪くなる傾向があると言えばそれまで。

もちろん良かった点も多くあった。出番はそれほど多いわけではないが、ヒロインがR.マクアダムスという時点で点数アップだし、手術室で魔術師たちの大立ち回りに翻弄されるパーマー医師の下りは最もおもしろい場面だった。

まずはごあいさつ。これから他のヒーローたちとどんな絡みをするかで大きく印象は変わるはずだ。

(65点)
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「沈黙-サイレンス-」

2017年01月27日 20時39分02秒 | 映画(2017)
沈黙は金。


それほど昔ではない。力ずくで人の思想や尊厳を踏みにじることができた時代。

多くのキリスト教徒が不当に弾圧されたということは子供のころに歴史で習って知ってはいたが、改めて映像で再現されると思わず目を背けたくなるような光景である。

なぜそれほどの仕打ちを受けても信仰を捨てなかったのかというのは、宗教とはほぼ無縁の日常に暮らす立場からはなかなか理解し難い。

本作の主役は「転び」となる外国人司祭。本来誰よりも強い信仰心を持っているはずの人物がなぜ棄教したのか。より深い謎に迫る。

劇中に登場する日本人の隠れキリシタンたちの描写を見るかぎり、どうやら日本のキリスト教は伝来後に本来のキリスト教とは異なる形のものに変化していたらしい。

教徒がしきりに口にするのは「パライソに行けるんですよね」ということ。なんかこれってキリスト教というより浄土真宗っぽい。その度に司祭たちは複雑な表情を浮かべながらもうなずいてみせる。

これは外国のものを自分たちの解釈でカスタマイズする島国日本の伝統芸である。万物に神が宿るという言い伝えがある国では宗教の捉え方も自由自在なのである。

本作のもう一人の主役とも言えるのが窪塚洋介演じるキチジローという男である。

キリスト教を信じながらも、繰り返し踏み絵を踏み、他人を裏切り、それでも今度こそ懺悔してやり直したいとすがってくる姿は、愚直に信仰を貫いて死んでいった者たちの対極に位置する。

しかし、司祭はこの男を哀れな存在と切って捨てることができない。自分の中に芽生えた信念の揺らぎと同調するから。

人間の強さとは何か。信仰を貫くのが強さなら、どんなに醜くてもひたすら生きようとするのも一つの強さとは言えまいか。

八百万の国へ来て、同じ神でも異なる信仰があることに気付いた司祭が、悩み抜いた末に出した結論。それこそが沈黙だったのかもしれない。

これは推測であるが、キリスト教がなぜ禁制となったのか、なぜ時の幕府に脅威とみなされたのかを考えると、そこは現在で言うところの戦略ミス、特に顧客の立場を軽視したアプローチにあったのではないか。

これこそが素晴らしい教えで他に神はいないといきなり自らの存在を否定されたとしたら、受け入れられるものも受け入れられなくなる。

宗教の対立は現在も世界中で大きな紛争の種となっている。信仰心は自分を強くする一方で、使い方を誤ると他者を傷つける武器にもなる。

司祭は「転び」を経た後に日本人の名を持ち、生涯を日本人として過ごす。最後まで心の内にキリスト教の教えを抱いていたことが描かれるが、彼の神は表向きは姿を変えながらもそのエッセンスだけは日々の暮らしに現れていたということなのだろう。

舞台が日本ということで多くの日本人俳優が出演していたが、今回出色であったのはやはり窪塚洋介である。奇行などで不遇な時期が続いたが、映画を中心にこれからの世界的な活躍を期待したい。

浅野忠信の安定感とイッセー尾形の器用さも、ただやみくもに弾圧していたわけではないあの時代なりの日本人の深みを表現できていたと思う。

(85点)
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「ローグワン/スターウォーズストーリー」

2017年01月21日 21時39分39秒 | 映画(2017)
潔く美しい使い捨て。


新しく誕生したトランプ大統領と真っ向から対立しているショウビズ業界。本作の舞台設定をみると、やはり考え方の根本が違うことを実感する。

1年前に公開されたエピソード7と同様に、主役を張るのは女性である。その程度ならよくあることだが、周りを固める同士たちがことごとくマイノリティであることに驚く。

もともと宇宙モノということで人間以外のクリーチャーも多く交じっているシリーズではあるが、人間側に黒人、東洋人、ネイティブアメリカンのような風体の人物を配する多様性推しは、時節柄新政権を挑発しているようにさえ映る。主人公のパートナーなんてヒスパニックだし。

それはさておき、既存の、しかもあまりにも有名なスターウォーズシリーズの真ん中に突然新たな物語をねじ込むという難易度が高い課題を、本作は見事にクリアしている。

特に、「新たなる希望」との繋がりにおいては、40年前の作品より世界を発展させない範囲で斬新な作り込みをしなければならないという縛りがあるのだが、そこは、帝国軍対反乱軍の知られざる前日譚を描く脚本が優れていた。

帝国軍が巨大な恐怖として君臨するベイダー卿の下で着々とデス・スターを完成に向かわせる中で、本作の反乱軍は真の統率者がおらずまったく力を持っていなかった。

そこに喝を入れて「新たなる希望」の輝ける功績へと結び付ける存在が今回の主役「ローグワン」というわけだ。

ジェダイたちが中心となって進む本家シリーズと同じ世界観を持ちながらも、存在はまったく一線を画している登場人物が何より魅力である。

盲目の東洋人は超越した力で敵と戦うが、彼の使う力は「なんちゃってフォース」である。口々に「フォースとともに」と言う割りには、劇中で本当のフォースを使えるのはベイダー卿だけで、故に彼の力が宇宙を制圧する脅威であることが明確に伝わってくる。

誰もフォースを使えないから、本家のクライマックスがフォースを使ったライトセイバーでの一騎討ちの印象が強い一方で、本作はもっと普通の人間的な戦闘になっている。

そして「新たなる希望」には誰一人として出てくるキャラクターがいないので、もったいない話と躊躇しそうな想いを断ち切って作中ですべてを整理している。

特に敵ではあるが、自分の指導で作ったデス・スターが上空にうっすらと姿を現すのを地上で確認する敵将の姿が、無力な人間を象徴していて切なかった。

改めて、課題の困難さを見極めた上で押さえる点と切り捨てる点を的確に判断し実行した制作陣の努力に敬意を表したい。

C.フィッシャーの冥福を祈る。

(80点)
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今年の19館(2016)

2016年12月31日 17時25分24秒 | 映画(2016)
映画の本数は減りましたが、いつでも映画館へ行けるという環境はありがたいものです。TOHOシネマズ新宿限定の「モク割」もありがたい。ただ、のみ会で終電を乗り過ごした後に時間潰しで行ったときは、さすがにまったく内容が入ってきませんでした(あたりまえ)。よって、そのときの作品「何者」は今年観た本数からは除外しました。

TOHOシネマズ海老名(神奈川)20回

今年になってから、TOHOシネマズとユナイテッドシネマだと思うのですが、映画泥棒の広報が流れるタイミングが変わりました。確かに、予告と本篇の間にあれが入ることに異議を唱える向きがあったと聞いたことがあります。個人的にそこまで気にはなりませんが、予告で少しずつ映画館の気分を盛り上げてそのまま本篇へ流れる方がスマートとは思います。

TOHOシネマズ新宿(東京)6回

新宿は通勤経路の途中なので寄りやすい場所なのですが、繁盛ぶりが他の場所とは1ランク違います。仕事が早く終わっても、そのころにはもう座席が埋まっていることが多く、かといって夕方の予定の見当がつかないうちに予約はできないし、結局今日は観るの諦めようということになってしまいます。周りに大きめのシネコンがあるのに、やはり東京のど真ん中にあるメリットは大きいわけです。

イオンシネマ北見(北海道)4回

確か「ザウォーク」を観に行ったときだったと思うのですが、「空調の調子が悪く館内がとても寒くなっております」と使い捨てカイロを渡されました。厚手のコートを着ていたので、そのままカイロは使わずに観たのですが、確かに寒かった。子供向けアニメや超話題作であれば、満員の人いきれで少しは暖かくなったかもしれませんが、そのときの観客は5人かそこらだった記憶があります。

新宿ピカデリー(東京)2回
TOHOシネマズ六本木ヒルズ(東京)2回
イオンシネマ海老名(神奈川)2回

東京に戻ってきたメリットは、米国産アニメ映画を字幕スーパー版で観られるということ。ただ、それも一部の決まったところでしか掛からないので、毎年のように六本木ヒルズへ何度か足を運ぶことになります。吹き替え版は字幕を読んで理解するひと手間が減るから楽ではあるんだけど。

札幌シネマフロンティア(北海道)1回
ユナイテッドシネマ札幌(北海道)1回
TOHOシネマズ仙台(宮城)1回
MOVIXさいたま(埼玉)1回
TOHOシネマズ日劇(東京)1回
シネマート新宿(東京)1回
新宿バルト9(東京)1回
TOHOシネマズ南大沢(東京)1回
チネチッタ(神奈川)1回
イオンシネマ港北ニュータウン(神奈川)1回
109シネマズ湘南(神奈川)1回
横須賀HUMAXシネマズ(神奈川)1回
TOHOシネマズアミュプラザおおいた(大分)1回

仙台と大分の映画館はいずれもJR駅に直結または至近の好立地にあります。上記の新宿で明らかなように、やはり街なかには映画館の賑わいがよく似合います。かつての仙台には、青葉通りと愛宕上杉通りの角に地方一番館の「仙台東宝」がありました。名前は「東宝」ながら洋画を公開する劇場で、東宝が制作した作品は斜め向かいの「日之出劇場」で上映されていました。日之出の同じフロアには「シネマ仙台」というにっかつロマンポルノの映画館があって子供には禁断の場所だったのですが。今回のTOHOシネマズはそれらの劇場が閉館して以来の西口の映画館であり、感慨もひとしおなのです。
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今年の45作(2016)

2016年12月31日 00時23分20秒 | 映画(2016)
今年はせっかく東京勤務に復帰して、以前よりは超過勤務の少ない部署に座ったのに作品数がかなり減ってしまった。正直観たいと思うような映画が少なかったように思う。

世間的には「君の名は。」がスーパーサプライズのヒットとなり活況を呈したようであるが、ぴりっと味のある小品があまりなかったのではないか。最近ミニシアターが減ってきているのも一因かもしれない。

俳優も、最近特に外国の女優さんで目を奪われるような人にお目にかかれていない。ときどきいいなと思っても覚えきれない頭の方に問題があるという話もあるけれど。そのような中で、例年になく邦画が上の方に来ている今年の記録は次のとおりです。

1.「この世界の片隅に」(11月14日)

グローバリズムに対する反動が顕著になった2016年。内向きも外向きもイデオロギーの押しつけが激しくなる中で、目線の位置を変えて冷静かつ丁寧に物事を捉える本作の姿勢に心を動かされた。来年も心惑わされることなく謙虚に生きていきたいと思う。

2.「シングストリート 未来へのうた」(7月23日)

今年は70~80年代の音楽界をけん引した偉大なスターが多くこの世を去った。D.Bowie、Prince、G.Frey、そして最後にG.Michaelまでも。本作がこのタイミングで、30年以上前に音楽を聴き始めたころの気持ちを呼び覚ましてくれたのは偶然ではない気がしている。

「シン・ゴジラ」(8月3日)

災害も多かった2016年。本作のゴジラに対して政府は「防衛出動」という判断を下したが、かの石破茂元防衛大臣は「災害派遣」で対応可能であるしそうするべきだと述べていたようだ。

4.「教授のおかしな妄想殺人」(6月11日)

あまり一般的評価は高くないようだが、人間誰しもが持つしよーもなさを面白おかしく描いた良品と感じた。先生の肩書で難しいことさんざん語っての最後のどたばたには声を出して笑った。

5.「殿、利息でござる!」(6月18日)

今年、磯田道史先生の話を直接聴く機会があったが、本当におもしろかった。個別の民家などに埋まっている古文書を地道に発掘し読み解いていく作業にも感嘆するが、これからもまだまだ我々の知らない史実が明らかになるのではないか。

6.「エクスマキナ」(7月2日)

AIの造形がどこかのコミックから抜け出たような完璧なたたずまいだった。所詮穴だらけの人間が取って代わられるのではないかという危惧は、本当に取って代わられることがない限り永遠に続くのだろう。

7.「イットフォローズ」(1月23日)

新年初回に観ていなかったらもっと評価を上げていたはず(1作めの評点は基準扱いなので)。発想の新しさ、画にしたときの恐怖、じりじりと迫ってくるものにこれほど絶望感を覚えるとは。館内の空調が故障していたわけでもないのに震えが止まらなかった。

8.「X-MEN:アポカリプス」(8月14日)

新3部作の大団円。前の3部作をひっくるめて上手く話をまとめ上げた力量に評価。ウルヴァリンのH.ジャックマンは来年が見納め。シリーズはどうなるのだろう。

9.「ズートピア」(5月7日)

意外と侮れない巧妙な設定に感心した。行き過ぎた理想の追求が世界中で摩擦を引き起こしている中で、誰でも夢を持っていいという米国の伝統芸に立ち帰ってみる作品。

10.「シビルウォー/キャプテンアメリカ」(5月4日)

ただヒーローを集めればいいわけではない。DCコミックスになくてMARVELにあるものを映し出しているのが本作。「アベンジャーズ」より遥かにこなれた感があった。

11.「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」(12月29日)

時間軸のベクトルを変えることで生まれた感情の高まりの行き違いが唯一無二の切ないドラマを完成させた。不思議な魅力を湛える小松菜奈が健気な女性を演じるところも新鮮。

12.「ヘイトフルエイト」(4月21日)

一からしっかり作り込まれた舞台のようなサスペンス作品。怪演あり、グロあり、観終わった後は不思議な爽快感に包まれた。

13.「ソーセージパーティー」(11月5日)

なんでこんなに上にいるのだろうと我ながら不思議に思うが、下品なお遊びがときに必要なこともある。

14.「ハドソン川の奇跡」(9月25日)

T.ハンクスの主演作が立て続けに公開された1年。いずれも権威を持った初老に差し掛かる男性役だが、物語として本作が最も優れていた。

15.「ルーム」(4月9日)

少女の監禁を描いているが、テーマは事件そのものやその恐怖ではなく、事件後の心の解放に迫るもの。これは重要。

16.「ファンタスティックビーストと魔法使いの旅」(12月10日)

「ハリーポッター」シリーズの映画を観たことも原作を読んだこともないのに子供とMX4Dで鑑賞。観ればそこそこおもしろいことは容易に想像がついていたということ。

17.「PK」(11月3日)

インド映画の現在。娯楽にプラスアルファで、宗教という世界的にも神経質な問題に敢えて触れた異色作。

18.「デッドプール」(6月1日)

お下品映画をわが国で、特に大きい市場の商品として売り込むのは難しい。それでも「ウルヴァリン」での借りを返す活躍を見られて良かった。

19.「ブリッジオブスパイ」(1月30日)

米ソ冷戦のころが最も平穏な時代だったという皮肉。次期トランプ政権はプーチン大統領と通じ合っているということだが、今よりはマシになると期待していいのか?

20.「アンフレンデッド」(7月30日)

PCの画面だけで展開するという実験的な意欲に敬意を表する。年に数本はこうした一芸モノの作品を観ることも映画の楽しみ。

21.「マネーショート 華麗なる大逆転」(3月6日)

経済の報道は冷静で実利に繋がる分だけ政治よりマシだが、いわゆるエコノミストが語る見解は地震予知級で当てにならない。情報が溢れていながら確かなものがない世の中をどう生きるかを突き付けられている。

22.「ドントブリーズ」(12月23日)

新しい恐怖を求める映画業界の佳作。身体に障害があったとしてもサイコパスに油断は禁物。

23.「ザギフト」(11月3日)

こちらもサイコパス・・・と思いきやの変化球で記憶に残る作品に。最後はギフトで痛恨の一撃。

24.「死霊館 エンフィールド事件」(7月17日)

かわいい女の子に無慈悲な悪魔が憑依したという映画。本当に悪魔がいるのか何かしらのフェイクなのかは微妙にぼかしている点が良心的。

25.「クリード チャンプを継ぐ男」(1月28日)

ロッキーの永遠のライバルはやはりアポロ・クリード。数多く制作した続篇の中でもっともと言っていいほど高い評価を獲得。S.スタローンは映画人としての嗅覚が秀でている。

26.「帰ってきたヒトラー」(6月18日)

実物は似ても似つかぬ俳優が髪型をいじってヒゲを付ければ、はい(る)ヒトラー。メディア操作の怖さは現代の漂流する政治とも繋がって興味倍増。

27.「君の名は。」(8月26日)

2016年の社会現象。しかし、この映画をして隕石災害対策に腰を上げようとしない政府は何をやっているのだ。とゼロリスクを求める風潮に言ってみる。

28.「ザウォーク」(2月6日)

9.11から15年。WTCが初めて迎えた珍客は更に遡ること28年。無機質に見えた細長い建物にも歴史と人々の思いが詰まっていた。

29.「ヒメアノ~ル」(6月5日)

森田剛の怪演が話題に。とはいえ、アイドルグループにいながらも元々危険な匂いがする人物であったから、それほど意外性は感じなかった。

30.「高慢と偏見とゾンビ」(10月1日)

「不朽の名作、感染。」のコピーだけで、評判が悪くても映画館に足を運んでしまった。コンセプトはいいと思う。

31.「怒り」(9月22日)

黙っていると不気味な東洋人。イケメン枠の俳優だってそれは同じ。さて犯人は誰でしょう?の展開は面白かったけど、ちょっとミスリードをやり過ぎ。

32.「ライト/オフ」(9月1日)

今年はアイデア系の恐怖映画が頑張った年。動画映像を膨らませて映画にした本作も同類だが、元の動画を超えられていないところが惜しかった。

33.「スポットライト 世紀のスクープ」(5月4日)

アカデミー作品賞の箔が付いたが、よく言えば真摯な、身も蓋もなく言えば地味な作品。でも日常の仕事の積み重ねが地味なのは事実。

34.「ファインディングドリー」(8月1日)

最近のピクサーが続けている過去の遺産で商売するシリーズ。元が良作なので安心して観られる。

35.「アイアムアヒーロー」(5月3日)

ノリにノッている大泉洋の主演作。でも片瀬那奈のZQNっぷりの方がインパクトあったなー。

36.「クレヨンしんちゃん 爆睡!ユメミーワールド大突撃」(5月1日)

劇団ひとりが脚本を担当。器用な人であることは周知のことであるが今回は合わなかった。

37.「鷹の爪8~吉田くんの×ファイル」(8月27日)

鷹の爪シリーズといいながら吉田くんの昔話という設定。鳥取にスタバができて、山口・長門にはプーチンが来て、広島は野球で盛り上がって、島根はどうする?

38.「ロストバケーション」(7月27日)

ここにも1点アイデア勝負作品。映画史に輝く「ジョーズ」で描かれた人喰いザメの恐怖に、切り口を変えて敢然と挑んだ心意気や良し。

39.「10クローバーフィールドレーン」(6月21日)

前回の「クローバーフィールド」とは特に関係ないらしい本作。これって何かの記号なのでしょうか?

40.「キャロル」(2月14日)

世間的に評価が高いらしい本作が理解できなかったのは誠に遺憾。同性愛に対して偏見を持っているつもりはないのだけれど。

41.「エージェントウルトラ」(1月28日)

何がしたかったのかよく分からなかった作品。コメディ要素があると勘違いして入ったのも敗因のひとつ。

42.「レヴェナント 蘇えりし者」(5月14日)

おめでとう、ディカプリオ。動物の毛皮にくるまると暖かいことだろう。

43.「オデッセイ」(2月20日)

プーチンには接近しても、中国と手を携えて宇宙開発などということはまずもって考えられないところ。オバマ時代の映画ということでハリウッド的には何ら不思議はなし。

44.「バットマンVSスーパーマン ジャスティスの誕生」(3月28日)

「マンオブスティール」は微妙と思っていたら、やっぱり破壊し過ぎと世論の反発を買っていたスーパーマン。絶対的な強さを無理くり隠して話を作ったけどやはり微妙。

45.「暗殺教室 卒業編」(3月26日)

前作を普通に評価した分だけマイナスイメージが強くなった。映画館に足を運ぶレベルではない。
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「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」

2016年12月30日 22時47分54秒 | 映画(2016)
恋するベンジャミンバトン。


売り出し中の若い俳優が出る恋愛映画と侮っていたら不意打ちを食らった。

本作の感心する点は、まず題名だ。物語の核心をそのまんまタイトルに付ける完璧なネタバレである。

映画の中でもそのまんまのことが起こるのだが、実際に観てみないと分からないからくりと、そこから繰り広げられる二人の切ない運命が、話を追うごとにボディーブローのように効いてきて、最後には涙腺が壊されてしまった。

はじめは、どう考えてもあり得ない時系列のずれをどう落とし込んでいくのかお手並み拝見とばかりに高所から見ていたつもりだった。福士蒼汰は背が高くてすっきりした顔立ちなのに演技は相変わらず垢抜けないなんて思いながら。

もちろん後から思い返せばツッコミどころはかなりあるのだが、それ以上に主役二人の固い絆に負けてしまった。あれだけ切ない話を繰り返して「ぼくたちはすれ違ってなんかいない。端と端を結んだ輪になってひとつにつながってるんだ」なんて言われたら、大概の横にある情報はバグになってしまう。

毎度の如く原作は未読である。でも、映画は良くできていたと思った。前述のとおり福士蒼汰はもっさり冴えないのだが、これが実は重要で、主人公の高寿は映画で描かれる30日の間にまるで一つの人生を生きるくらいの経験と成長を果たすのである。

彼が恋人・愛美との運命を知り、それを受け入れることを決めて初めて、愛美を優しく導く大人の男性へと変わるのである。変わった後の時間があまり描かれていなかったので、福士くんのもっさりが演技だったのかは判断がつけづらいが、配役として成功だったことに間違いはない。

一方の愛美を演じた小松菜奈は、こちらは映画の時間軸とは逆向きに生きていることを、悟られ過ぎず自然過ぎず演じるというなかなか難しい役どころだったと思うが、心の奥深くに何かを湛えているような容姿がこれも功を奏していた。

決して万人が支持するような美人ではないけれど何かが引っ掛かる感じ。だからテレビドラマやCMで露出を増やすよりも映画を中心とする現在の戦略は正しいと思う。「渇き。」は面白くない映画だったが、彼女を発掘した中島哲也監督の眼力はやはり素晴らしかった。

話を映画に戻すと、もうひとつ本作が持つ大きな特徴はどんでん返しが話の中盤に現れることである。そして大きな謎が明らかになる驚きのその先に、新たな一つの物語が始まる。

更に、その物語には裏の物語が存在して、表裏を重ね合わせることによって、比類なき程に切ない男女の運命の全貌が見えてくるという仕組みになっているのだ。

ここまで過酷な設定を考え出してしっかりと一つの話として仕上げた原作の力と、その世界を限られた時間の中で着実に映し出してみせた制作の技量に敬意を表する。

(85点)
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「ドントブリーズ」

2016年12月23日 22時12分41秒 | 映画(2016)
耳をすませば。


この正月いちばん楽しみにしていた作品である。どこに興味をひかれると言えば、障害者がモンスターであるというところ。これは思い切った設定、少なくともわが国では実現が難しい企画なのではないだろうか。

盲目の老人が一人で住む家へ強盗に入る若い男女3人。楽々大金を手に入れられると思った彼らがはまり込む地獄とは一体どういうものなのか。

デトロイト郊外のゴーストタウンで周りには誰も住んでいない。数年前にたった一人の親族であった娘を交通事故で亡くし、示談か何かで大金を得たこともあり、盲目ながら誰の助けも受けずに一人暮らしを続けている。

こうした一見攻めやすそうな設定が、侵入してからことごとく不利な方向へ裏返っていく展開がおもしろい。

真夜中の古い屋敷。床のきしむ音、息遣いを敏感に察知する老人。退役軍人だけあって体は屈強で、一度つかまれば勝ち目がない。音さえ立てなければ何もない点は、「サイレントヒル」に出てきたクリーチャーのようでもある。

相手は自宅で間取りを知り尽くしている。忍び込んだのは夜中だから灯りを消されたら圧倒的に不利だ。しかも、家の中を逃げ惑ううちに、老人の本当の恐ろしい一面が露わになる。

狭い家の中で「音」を介した緊迫のやりとりが続く。観ている側もちょっとした音を拾おうと神経を集中させ、ポップコーンをつまむことさえはばかられる(買ってないけど)。

ここで効果音とともに何か現れたら心臓に悪いだろうなどと緊張しながら観ることが更におもしろさを増幅させており、これは圧倒的に映画館での鑑賞に向いた作品といえる。

この困難な闘いに挑むことを強いられる主人公だが、家庭環境に問題があるとはいえ強盗を働く輩であるという設定もまたユニークだ。いかに老人がモンスターであっても、家に押し入らなければ、関わらなければ何の危害も与えてこないわけで、実は作品全体が自業自得の一語で片付けられてしまうのだ。

老人が隙を見せる場面も多く、屋敷から脱出するチャンスが複数回訪れるのだが、その度に彼らは大金に惑わされ逃げ出すことができない。実に愚かしく、これは逃げ切っちゃだめでしょと思うこともあるくらいだ。

そんな両者の闘いの結末だが、悪くない。老人は哀しいけれど強かで、強盗の幸せは簡単には見えてこない。悪いことに手を染めたら、生涯息を潜めて暮らす覚悟を持たなければならないのだ。

(75点)
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「ファンタスティックビーストと魔法使いの旅」

2016年12月10日 22時18分41秒 | 映画(2016)
ウィザーディングワールドオブファンタスティックビースト。


「ハリーポッター」は世の中に出遅れて結局未だに1作も観ていないのだが、本作は共通の世界観はあれどまったく新しい物語だということで、他に食指を動かされる作品がないこともあり、ひさしぶりにファンタジーもいいかと思い足を運んだ。

とかなり言い訳がましく書いているが、最後のひと押しは子供が観に行きたいと言ったこと。「ベイマックス」以来だから実に2年ぶりである。自分で観に行くお金がないからこっちに回ってきたと分かってはいるけど、一緒に行けるのはうれしいもの。奮発してMX4Dまでサービスした。

映画は冒険と奇跡に満ち溢れたMX4Dにうってつけの作品だった。個性豊かな魔法動物がまるで実在するかのように動くこと自体はもはや驚きの対象にはならないが、魔法使いを含めて出てくるキャラクターたちの設定がしっかりしていて、それぞれが個性を生かした活躍を十二分に果たしてくれるから全篇を通して楽しく観ることができる。

主演のE.レッドメインは、経歴にはオスカー俳優としての箔が付いているものの見た目はまだまだ線が細いおにいちゃんという感じで、このニュートという魔法動物学者にはぴったり。

ニュートが抑えきれなかった魔法動物たちの騒動に巻き込まれてしまった人間=ノー・マジのジェイコブが本作の肝である。彼のあたふたが劇中の魔法世界と観る側の間をがっちりと結び付けて、あたかも共に冒険をしているかのような感覚にさせるのだ。王道といえば王道であるが。

3Dメガネを通して観る画面が暗かったり、「新セーレム救世軍」といった特異な固有名詞がさらっと使われたり、その場で理解することが困難なところはあったが、大まかな粗筋を追う限りでは大きな問題はなかった。敵役のグレイブス長官や不幸な青年クリーデンスはまだ底を見せていない様子。E.ミラー「少年は残酷な弓を射る」以来だが、やっぱり影がある役が似合うといったところか。

「ハリーポッター」はいつ観ることになるのかな。

(80点)
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