Con Gas, Sin Hielo

細々と続ける最果てのブログへようこそ。

「LION/ライオン 25年目のただいま」

2017年04月15日 23時02分23秒 | 映画(2017)
1,600kmも回送で走る列車があるなんて。


大海を隔てて離れ離れになった母と子が25年ぶりに奇跡の再会を果たす。それが実話だと言うのだから事実は小説より奇なり、映画にはうってつけの題材である。

多くの人は主人公・サルーの波乱の人生に寄り添いクライマックスの再会の場面で涙するために来たのだろう。そしてその期待は無事叶えられたことと想像する。

しかし、個人的にはどことなく物足りなさを感じてしまった。それほど大きな感動は得られなかった。

前半はサルーの少年時代。インドの田舎町で兄とはぐれてからオーストラリアに住む夫婦に養子として迎えられるまでの過酷な道のりが描かれる。

同じ国でも言語が違う、自分の住んでいた町の名前も満足に言えない、八方ふさがりの中で綱渡りのように何とか命を繋いでいく。

子供の行方不明は社会問題である。犯罪に巻き込まれることも多いと聞く。サルーにも魔の手が迫ったが、危険を察知して間一髪で逃げ出すという場面があった。

この映画で観るかぎりサルーはとても賢く、社会性や判断力に優れていた。故に、オーストラリアに引き取られた後も理想的と言えるキャリアを歩むことができた。

対照的と言えるのがサルーの1年後に同じ夫婦の元に連れてこられたもう一人の少年・マントッシュだ。新しい環境に順応できない彼の存在は一家に常に影を落とすようになった。

世界には貧困から抜け出せずに苦しむ子供が大勢いる。少しでも力になればと願うオーストラリア人夫婦の行為は極めて尊い。それでも本作で描かれる養子たちの心の内は単純なマッチングで解消できない大きな壁を感じざるを得なかった。

サルーにとってそれは、はぐれた本当の家族への負い目となって現れた。友人の助言で、グーグルアースと自分の記憶とを結び付けて故郷の町を探そうとするがなかなかうまくいかない。順風だったはずの人生の軌道が乱れていく。

しかし、諦めという言葉が見え始めたときに突然光明が射す。すべての謎が解け、サルーは無事本当の母や妹との再会を果たした。

奇跡の再会は素晴らしいことである。ただ、映画の描写が事実に即しているのであれば、オーストラリアにもらわれたこと、グーグルアースで故郷の町を見つけたことという2つの大きなターニングポイントは偶然によるものに過ぎず、良かったという感動よりも、そこまで奇跡が重ならなければ不幸な子供の問題は解決しないのかという重い気持ちの方が勝ってしまった。

救われたのは、最後の場面で映された実際の映像や写真の記録であった。本篇とは違う心からの笑顔に見えて、映画は苦悩の部分をデフォルメしたものだったのかもしれないと感じた。

(70点)
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作品インデックス(あ~こ)

2017年04月09日 01時04分42秒 | 映画インデックス
○過去(2009年以前)の記録

2009年以前(あ~こ)
2009年以前(さ~と)
2009年以前(な~ほ)
2009年以前(ま~わ)

○当ページ内

<あ行>
「アーティスト」
「アイアムアヒーロー」
「愛、アムール」
「アイアンスカイ」
「アイアンマン2」
「アイアンマン3」
「アオハライド」
「悪人」
「悪の教典」
「悪の法則」
「アザーガイズ 俺たち踊るハイパー刑事!」
「あと1センチの恋」
「アナと雪の女王」
「ANNIE/アニー」
「あの日見た花の名前を僕たちはまだ知らない」
「アバウトタイム~愛おしい時間について」
「アバター」
「アベンジャーズ」
「アベンジャーズ/エイジオブウルトロン」
「アメイジングスパイダーマン2」
「雨の日は会えない、晴れた日は君を想う」
「アメリカンスナイパー」
「アメリカンハッスル」
「怪しい彼女」
「アリスインワンダーランド」
「アリスのままで」
「アルゴ」
「アンコール!!」
「暗殺教室」
「暗殺教室 卒業編」
「アンストッパブル」
「アントマン」
「アンフレンデッド」
「イースターラビットのキャンディ工場」
「怒り」
「イコライザー」
「一枚のめぐり逢い」
「イットフォローズ」
「イニシエーションラブ」
「イミテーションゲーム エニグマと天才数学者の秘密」
「インサイドヘッド」
「インシディアス」
「インセプション」
「インターステラー」
「イントゥザウッズ」
「ウーマンインブラック 亡霊の館」
「ウォームボディーズ」
「ウォールフラワー」
「宇宙人ポール」
「ウディアレンの夢と犯罪」
「海街diary」
「裏切りのサーカス」
「ウルヴァリン:SAMURAI」
「映画と恋とウディアレン」
「映画ハートキャッチプリキュア!花の都でファッションショー・・・ですか!?」
「映画プリキュアオールスターズDX2 希望の光レインボージュエルを守れ!」
「映画プリキュアオールスターズDX3 未来にとどけ!世界をつなぐ虹色の花」
「英国王のスピーチ」
「エイプリルフールズ」
「エージェントウルトラ」
「エクスペンダブルズ」
「エクリプス/トワイライトサーガ」
「SP 野望篇」
「SP 革命篇」
「エクスマキナ」
「X-MEN:ファーストジェネレーション」
「X-MEN:フューチャー&パスト」
「X-MEN:アポカリプス」
「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q」
「エリジウム」
「遠距離恋愛 彼女の決断」
「おおかみこどもの雨と雪」
「オールユーニードイズキル」
「オズ はじまりの戦い」
「オデッセイ」
「おとなのけんか」
「オブリビオン」
「俺物語!!」
「オンザハイウエイ その夜、86分」

<か行>
「ガーディアンズオブギャラクシー」
「怪盗グルーの月泥棒」
「怪盗グルーのミニオン危機一発」
「海難1890」
「帰ってきたヒトラー」
「鍵泥棒のメソッド」
「崖っぷちの男」
「神さまの言うとおり」
「紙の月」
「カラスの親指」
「カラフル」
「カリフォルニアダウン」
「華麗なるギャツビー」
「渇き。」
「完全なる報復」
「キス&キル」
「寄生獣」
「寄生獣 完結編」
「北のカナリアたち」
「キックアス」
「キックアス ジャスティスフォーエバー」
「きっと、星のせいじゃない」
「きみがくれた未来」
「君に届け」
「君の名は。」
「君への誓い」
「キャタピラー」
「キャピタリズム~マネーは踊る」
「キャビン」
「キャプテンフィリップス」
「キャロル」
「教授のおかしな妄想殺人」
「桐島、部活やめるってよ」
「麒麟の翼 劇場版・新参者」
「キングスマン」
「グッモーエビアン!」
「海月姫」
「グラスホッパー」
「グランドイリュージョン」
「クリード チャンプを継ぐ男」
「クレイジーハート」
「クレヨンしんちゃん 超時空!嵐を呼ぶオラの花嫁」
「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ 黄金のスパイ大作戦」
「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ!オラと宇宙のプリンセス」
「クレヨンしんちゃん バカうまっ!B級グルメサバイバル!!」
「クレヨンしんちゃん ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん」
「クレヨンしんちゃん オラの引越し物語 サボテン大襲撃」
「クレヨンしんちゃん 爆睡!ユメミーワールド大突撃」
「クロニクル」
「GAMER」
「劇場版 SPEC~天~」
「劇場版3D あたしンち 情熱のちょー超能力♪母大暴走!」
「劇場版ポケットモンスターダイヤモンド&パール 幻影の覇者ゾロアーク」
「劇場版ポケットモンスターベストウィッシュ ビクティニと白き英雄レシラム」
「劇場版ポケットモンスターベストウィッシュ キュレムVS聖剣士ケルディオ」
「劇場版 魔法少女まどか☆マギカ(前編、後編)」
「恋するベーカリー」
「恋とニュースのつくり方」
「恋のロンドン狂騒曲」
「高慢と偏見とゾンビ」
「ゴーストインザシェル」
「コードネームU.N.C.L.E.」
「ゴールデンスランバー」
「ゴーンガール」
「告白」
「GODZILLA」
「この世界の片隅に」
「(500)日のサマー」
「コララインとボタンの魔女3D」
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作品インデックス(さ~と)

2017年04月09日 00時59分27秒 | 映画インデックス
<さ行>
「最強のふたり」
「最後の忠臣蔵」
「サイドエフェクト」
「西遊記 はじまりのはじまり」
「サイレントヒル:リベレーション」
「ザウォーカー」
「ザウォーク」
「ザギフト」
「ザタウン」
「サバイバルファミリー」
「砂漠でサーモンフィッシング」
「ザファイター」
「サプライズ」
「猿の惑星:創世記」
「しあわせの隠れ場所」
「ジェニファーズボディ」
「シビルウォー/キャプテンアメリカ」
「ジャージーボーイズ」
「シャーロックホームズ」
「シャーロックホームズ シャドウゲーム」
「シャッターアイランド」
「ジャンゴ 繋がれざる者」
「十三人の刺客」
「シュガーマン 奇跡に愛された男」
「シュガーラッシュ」
「ジュラシックワールド」
「シュレックフォーエバー」
「少年は残酷な弓を射る」
「白ゆき姫殺人事件」
「死霊館」
「死霊館 エンフィールド事件」
「死霊のはらわた」
「白いリボン」
「SING」
「シングストリート 未来へのうた」
「シングルマン」
「進撃の巨人 ATTACK ON TITAN」
「シン・ゴジラ」
「人生の特等席」
「人生万歳!」
「ズートピア」
「スーパー!」
「好きっていいなよ。」
「スコットピルグリムVS邪悪な元カレ軍団」
「スターウォーズ フォースの覚醒」
「スノーデン」
「スパイアニマル Gフォース」
「スプライス」
「スポットライト 世紀のスクープ」
「スマーフ」
「スマーフ2 アイドル救出大作戦!」
「300 帝国の進撃」
「世界にひとつのプレイブック」
「セッション」
「セル」
「ゼログラビティ」
「ゼロダークサーティ」
「ゼロの未来」
「ソーシャルネットワーク」
「ソーセージパーティー」
「ソウルサーファー」
「そこのみにて光輝く」
「ソロモンの偽証 前篇・事件」
「ソロモンの偽証 後篇・裁判」
「ゾンビ処刑人」
「ゾンビランド」

<た行>
「ダークナイトライジング」
「ターミネーター:新起動/ジェニシス」
「ダーリンは外国人」
「第9地区」
「大統領の執事の涙」
「タイピスト!」
「太平洋の奇跡 フォックスと呼ばれた男」
「TIME/タイム」
「鷹の爪GO 美しきエリエール消臭プラス」
「鷹の爪8~吉田くんのXファイル」
「抱きたいカンケイ」
「007 スカイフォール」
「007 スペクター」
「ダラスバイヤーズクラブ」
「チェイス!」
「チェブラーシカ/くまのがっこう」
「中学生円山」
「超高速!参勤交代」
「沈黙-サイレンス-」
「月に囚われた男」
「綱引いちゃった!」
「TSUNAMI -ツナミ-」
「ツレがうつになりまして。」
「ディクテーター 身元不明でニューヨーク」
「テイクディスワルツ」
「てぃだかんかん~海とサンゴと小さな奇跡」
「テッド」
「テッド2」
「デッドプール」
「テルマエロマエ」
「10 クローバーフィールドレーン」
「デンジャラスラン」
「トイストーリー3」
「東京島」
「TOKYO TRIBE」
「塔の上のラプンツェル」
「トータルリコール」
「ドクターストレンジ」
「Dr.パルナサスの鏡」
「図書館戦争」
「殿、利息でござる!」
「ドライヴ」
「ドラフトデイ」
「トランス」
「ドリームハウス」
「トロン:レガシー」
「トワイライトサーガ/ブレイキングドーンPart1」
「トワイライトサーガ/ブレイキングドーンPart2」
「ドントブリーズ」
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作品インデックス(な~わ)

2017年04月09日 00時51分45秒 | 映画インデックス
<な行>
「ナイト&デイ」
「ナイトクローラー」
「9<ナイン> 9番目の奇妙な人形」
「ニューイヤーズイブ」
「NY心霊捜査官」
「脳内ポイズンベリー」
「のぼうの城」
「ノルウェイの森」

<は行>
「her 世界でひとつの彼女」
「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」
「ハートロッカー」
「ハーフデイズ」
「バーレスク」
「ハイブリッド刑事」
「バウンティハンター」
「博士と彼女のセオリー」
「バクマン。」
「パシフィックリム」
「パッセンジャー」
「バットマンVSスーパーマン ジャスティスの誕生」
「ハドソン川の奇跡」
「バトルシップ」
「パレード」
「バレンタインデー」
「ハンガーゲーム」
「阪急電車 片道15分の奇跡」
「ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い」
「ハングオーバー!! 史上最悪の二日酔い、国境を越える」
「ハングオーバー!!! 最後の反省会」
「PK」
「東のエデン劇場版Ⅰ The King of Eden」
「東のエデン劇場版Ⅱ Paradise Lost」
「ピクセル」
「美女と野獣」
「ヒックとドラゴン」
「ピッチパーフェクト」
「ピッチパーフェクト2」
「ビフォアミッドナイト」
「秘密結社鷹の爪The Movie 3~http://鷹の爪.jpは永遠に」
「ヒメアノ~ル」
「127時間」
「ヒューゴの不思議な発明」
「ピラニア3D」
「ビリギャル」
「ひるなかの流星」
「ヒロイン失格」
「ファインディングドリー」
「ファミリーツリー」
「ファンタスティックビーストと魔法使いの旅」
「フィフティシェイズオブグレイ」
「50/50 フィフティフィフティ」
「フィリップ、きみを愛してる!」
「フェーズ6」
「フォーカス」
「フォックスキャッチャー」
「武士の家計簿」
「ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン」
「フライトゲーム」
「ブラック&ホワイト」
「ブラックスワン」
「フランケンウィニー」
「プリズナーズ」
「ブリッジオブスパイ」
「プリデスティネーション」
「プリンセスと魔法のキス」
「プリンセストヨトミ」
「ブルー 初めての空へ」
「ブルージャスミン」
「プレシャス」
「friends もののけ島のナキ」
「プロメテウス」
「ヘイトフルエイト」
「ベイマックス」
「ベストキッド」
「ヘルプ 心がつなぐストーリー」
「僕が結婚を決めたワケ」
「ぼくのエリ 200歳の少女」
「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」
「ホットロード」

<ま行>
「マイインターン」
「マイブラザー」
「マイレージ、マイライフ」
「マジックインムーンライト」
「マジックツリーハウス」
「マチェーテ」
「マチェーテキルズ」
「マネーショート 華麗なる大逆転」
「魔法少女まどか★マギカ[新編]叛逆の物語」
「マリーアントワネットに別れをつげて」
「マリリン 7日間の恋」
「マンオブスティール」
「ミッション:インポッシブル ゴーストプロトコル」
「ミッション:インポッシブル ローグネイション」
「ミッション:8ミニッツ」
「ミッドナイトインパリ」
「ミニオンズ」
「MIRACLE デビクロくんの恋と魔法」
「ムーンライズキングダム」
「ムーンライト」
「メイズランナー」
「メリダとおそろしの森」
「メンインブラック3」
「もうひとりのシェイクスピア」
「モテキ」
「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」
「モンスター上司」
「MONSTERZ」
「モンスターズユニバーシティ」

<や行>
「ヤング≒アダルト」
「夢売るふたり」

<ら行>
「ライアーゲーム The Final Stage」
「ライト/オフ」
「LIFE!」
「ラストソルジャー」
「ラブアゲイン」
「ラブ&ドラッグ」
「ラブリーボーン」
「ラ ラ ランド」
「リアルスティール」
「リトルランボーズ」
「[リミット]」
「リミットレス」
「LUCY/ルーシー」
「LOOPER/ルーパー」
「ルーム」
「レヴェナント 蘇えりし者」
「レポゼッションメン」
「レ・ミゼラブル」
「ローグワン/スターウォーズストーリー」
「ローマでアモーレ」
「ローラーガールズダイアリー」
「6才のボクが、大人になるまで」
「ロストバケーション」
「ロックオブエイジズ」
「ロボット」
「ロマンス」
「ロラックスおじさんの秘密の種」

<わ行>
「ワールドウォーZ」
「わたしに会うまでの1600キロ」
「私の男」
「嗤う分身」
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「ゴーストインザシェル」

2017年04月08日 22時59分00秒 | 映画(2017)
「強力わかもと」を出すまで振り切ってもよかった。


毎度のごとく元ネタを知らないので、あくまで1本のSF映画としての感想となる。

舞台は時代も場所も分からない大都会。人間は損傷した部位を義体化して生きる技術を取得していた。

本作の主人公は、義体の肉体に脳だけを移植された「少佐」と呼ばれる女性。脳は生きていると言いながらも過去の記憶はほとんどなく、役割は日々公安のために任務を遂行するだけであった。

まばゆいばかりのネオンサインがきらめく雑然とした街並みは、古くは「ブレードランナー」辺りから連なる定番だ。

近未来SFは結構好きなのだが、冷静に考えればこの景観完全無視のカオスな光景はたとえ中国が世界の盟主となったとしても実現しそうにない。そう思ってしまったせいか物語に対しては今ひとつ感情が入っていかなかった。

映画の尺に詰め込むには世界が大き過ぎたということもあるかもしれないが、話の流れに唐突感を抱くことが多かったように思う。少佐が誕生した裏にあった事件など予想を裏切る形ではっとする展開もあるのだが、心動かされるとまではならなかった。

ただ本作の肝は、この異世界の造形をどれほど楽しめるかである。

もちろんその中心にあるのはS.ヨハンソンである。今やすっかり肉体派女優(声もかなり重用されているが)であり、アクションを含め全篇が彼女のためにあると言っても過言ではなかった。

でも「肉体派」なだけに、アップになると逆に肉感が主張してきて作り物から逸脱してしまうという面も感じられた。その意味では「エクスマキナ」は良くできていたと改めて思い返す次第である。

一方で意外に良かったのがビートたけしだ。敢えて台詞をすべて日本語で通す演出も功を奏して、北野映画に出てくるヤクザの親分ばりの風格であった。

そして彼らが駆け回る世界のきらびやかさは映画館の大画面でこそ映える。ビートたけしも自分の映画が何本も作れるくらいお金をかけていると言っているとおり、イメージ映像として十分に見応えありであった。

続篇が作られる可能性は低そうだが黒歴史にするまで酷くもない、その意味では全体的に突き抜けていない作品という位置付けになってしまうのだろうか。

(65点)
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「雨の日は会えない、晴れた日は君を想う」

2017年04月08日 10時07分13秒 | 映画(2017)
愛と悲しみの破壊。


意味深な邦題が付けられているが、原題は"Demolition"=「破壊」。実にシンプルだ。

妻の死をきっかけに心の迷走を始める男の物語。原因は突然の変化に対する違和感と戸惑いである。

いちばん身近な人間を失ったのに何故自分は悲しみを感じないのか。主人公のデイヴィスは違和感を覚えながらも日常へ戻るが、これまで目に留まることのなかった事柄がやけに引っ掛かるようになったことに気が付く。

「心の修理も車の修理も同じ。隅々まで点検して組み立てなおすことだ」という義父の言葉を受けて、デイヴィスは気になった身の回りの物を分解し始める。もともと手先は器用ではない彼。そこには分解された部品が並ぶだけだった。

しかし彼の行動は収まるどころかエスカレートする。どうせ元に戻らないからであろうか、丁寧な分解は叩き壊す行為へ変わり、その対象は最初の違和感の元である夫婦関係へと移っていく。

デイヴィスは優秀な人間である。そして妻への愛がないわけでもなかった。それだけにうやむやにできない自然な感情が湧いてきたのかもしれない。

一度壊れたものが完全に元の通りに戻ることはまずない。破壊の果てにデイヴィスが知る真実は重いものであった。ただそれでも彼にとって真実を知る意味は大きく、誰を恨むでもなくすべてを受け入れて前へ進もうとする最後の場面には救われる思いがした。

迷走を続けるデイヴィスに寄り添うシングルマザーのカレンとの関係も印象的だ。奇妙な違和感を正直に語るデイヴィスに親近感を抱くも彼女にはデイヴィスを手助けする余裕などまったくない。

どんな関係に発展させたいという思惑がないままに交錯し影響し合う二人。一連の心の旅が一区切りした後も二人の距離が縮まらない流れには感心した。

不器用でも真っ直ぐに生きることが人々の共感を呼ぶということであれば、つい小賢しく振る舞いがちな自分にはやや耳が痛くなる話である。

主演のJ.ギレンホールの眼力は本作でも健在。違和感について熟考する静のときも、破壊行為に邁進する動のときも、台詞なしで奥深くの心の揺れ動きが伝わってくる様子は、まさに適役であった。

(75点)
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「ムーンライト」

2017年04月01日 20時31分50秒 | 映画(2017)
抜け出せないけど、少しだけ救われる。


今年のアカデミー作品賞や助演男優賞を本作が獲得したのは、昨年の「白過ぎるアカデミー」への反動やトランプ大統領を生んだ時代へのメッセージという声がある。

確かに本作は登場人物がすべて黒人であり、黒人社会に未だはびこる問題を深くえぐる力作である。

ただそのバックにはしっかりB.ピットが製作総指揮として名を連ねている。

ハリウッドはほぼ反トランプ一色のリベラリストが多数を占めており、その偽善的行動に対して時に嫌悪感を覚えることもあるが、本作の訴えは真っ直ぐ心に響いた。やはり大事と思うことをメッセージとして世の中へ発信することは重要だ。

黒人社会の中でも底辺と言うべき地域で暮らすシャロンの過酷な運命が、少年期、青年期、成人後の3時代に分けて描かれる。

少年期のシャロンは、学校ではいじめられ、母親は薬物に溺れて子供を育てるどころではない家庭状況にあった。いじめの現場に偶然立ち会った男性・フアンは恵まれない境遇のシャロンを気にかけ、いろいろなことを教えるようになる。

この話の何が重いかと言うと、シャロンの周りはすべて黒人の単一社会であるにも拘らず、格差の底辺に独りだけ閉じ込められてなかなか抜け出せないことにある。

黒人が同じ黒人に対して酷く当たる背景には、自分たちが虐げられているという自覚がある。そして比較的裕福なフアンでさえ、薬物の売人としてシャロンの母親を含めた多くの、おそらく黒人の人生を踏み台にして生きている。

少年期パートの最後の場面でシャロンはフアンに「薬物の売人なのか?」と尋ねる。フアンは正直に応えるが、あまりの恥ずかしさに顔を上げることができない。

しかしそのシャロンも巡り巡って行き着く先は同じなのである。わが国でも貧困の固定化が問題視されるようになったが、薬物、暴力、犯罪といった事象は、どう善悪を説いたところで一定の範囲において再生産されている。

シャロンは極めて劣悪な環境で育ったが、フアンとの出会い、そして唯一心を許せる級友のケヴィンという存在があった。

この2つの関係がなかったら、シャロンの人生は底が抜けて大人になることすら叶わなかったかもしれない。愛情によりシャロンは救われて、かろうじて再生産の軌道に乗ることができたとも言える。

最後の場面は、愛があればその日暮らしではあるけど何とか生きられると安堵する一方で、どうやっても再生産を超えた世界には辿りつけない閉塞感に心が痛んだ。

(80点)
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「ひるなかの流星」

2017年03月26日 21時24分57秒 | 映画(2017)
本当にあったら怖い話。


外国、特にハリウッド映画に正統派恋愛映画が見られなくなって久しい。他方、わが国はといえば、男女の恋愛を描いた少女漫画や小説を原作とした映画がひっきりなしに作られている状況が続いている。

と思えば、テレビに目を向けると、こちらはこちらで恋愛モノを基軸に一時代を築いた「月9」ドラマが瀕死の状態に喘いでいる。これらは一本の線で繋げることができる現象なのだろうか。

今回の映画館の客層は、こちらの肩身が思いっきり狭くなるくらい若年層女子がほとんどを占めていた。どうやら白濱亜嵐というEXILEグループの男性を目当てに来ているようだ。そんなに人気があるんだ。

このところの青春映画の乱発のカギはどうやらここだ。EXILEだけじゃなく、ジャニーズであったり、若手女性俳優であったり、コアなファン層に働きかけることでそこそこの収支を見込めるコンテンツになっているのだ。

ファン度が深いほど複数回観たり関連グッズを購入したりと儲けは上がる。一度流れて終わるテレビと比べて効率的だから、視聴率にすれば5%程度の人気度でも十分勝負に打って出られるという算段なのではないか。

かくして情報に疎い人たちにとっては、主演俳優が回転ドアのように入れ替わるだけの似たような作品が次々に作られていくのである。

本作の主人公を演じる永野芽郁は、「俺物語!!」以来のヒロイン役であるが、最近はUQのCMで抜擢されるなどまさに伸び盛り。今後回転ドアの一員となるかの試金石である。

前置きが相当長くなったが、本作。少女漫画の恐ろしさを見せつけられた。

漫画の中のキャラクターであれば線が細くて夢の王子さまなのが、実写化した途端に倫理観の崩壊が前面に出てきてしまう。

これは決して教師役の三浦翔平の外見が怪し過ぎるからだけではない。主人公のすずめに対する所作のすべてがあり得ないのである。

すずめだから呼び名が「ちゅんちゅん」。鳥肌が立ちそうだ。二人の関係は食堂のおばさんでも知ってるって、それで学校としていいのか。

すずめもすごい。先生から、友達を積極的に作るようアドバイスを受けて向かった先がいきなり異性の馬村である。これは同級生からはどう映るのか。

まあ、怖いもの知らずの田舎娘という設定と繋がるものとはいえ、おそらく原作ではもう少し丁寧に描かれているものと信じたい。

その点では、きらきらともっさりが混ざり合う永野芽郁の表情は役柄にハマっていたと言えるだろう。最後の落とし方も健全で無難であった。

でも最近の映画に出てくる高校生活って、あまりうらやましく感じられない。

(50点)
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「パッセンジャー」

2017年03月25日 23時54分48秒 | 映画(2017)
宇宙は荒唐無稽に溢れてる。


人工冬眠から90年早く目覚めてしまった男女の物語って設定はおもしろそうなのに、先に公開された北米ではえらく評価が低い本作。

百聞は一見に如かずで観てみたが、原因がはっきり分かった。

良くできたSF映画は、元々作り話であることを承知の上にも拘らず、「とんでも」な部分をもっともらしく見せることに長けている。

しかし本作は肝心なところで微妙に外してしまっているのだ。

例を挙げればきりがないが、クライマックスの極限の危機にど素人の2人が立ち向かっていく下りはあまりに無茶な選択だし、なんでもいいからとにかく蘇生をという場面はもはやコメディであった。

主人公であるジムとオーロラの関係も否定する人は多いだろう。不道徳な出会いもさることながら、一度冷え切った後の展開はちょっとあり得ないのではないか。

とは言いながら、個人的には結構面白く観ることができた。不道徳の部分は意外性に驚かされたし、J.ローレンスが全篇通して体を張っていたことも大きい。

また、少しずつ変調を示す宇宙船の描写は興味深かった。機械のちょっとしたバグが重篤なエラーの予兆であるというのは我々の日常と同じなのだが、そう考えると120年もエラーなしで自動運転なんて相当な無理筋と思わざるを得ない。もう一度人工冬眠に入っていいよと言われても、おちおち寝ていられないのが正直なところだ。

無理筋が出発点なのだから、まあ荒唐無稽がどれだけあったとしても割り切ってしまえば結構許せるものである。「タイタニック以来」を盛んに宣伝に使っていたからどうなることかと思っていたが、好き嫌いでいえばこちらの方が好きかもしれない。

歴史に残るなど大層なことは期待せずにお気楽な娯楽映画だと思って臨めば、支払った料金分は楽しめる作品である。

(75点)
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「SING」

2017年03月25日 12時25分31秒 | 映画(2017)
テーマパークだけじゃないユニバーサルの強さ。


ラジオ日本の「全米トップ40 THE 80's」の放送が3月で終了とのこと。懐かしい音楽に浸って過ごす時間とのお別れは寂しい。

「SING」には懐かしい曲も出てくるが、現役のTeylor Swift、Sam Smithから往年のFrank Sinatra、果ては00年代初頭の一発屋Crazy Townまで幅広い年代とジャンルの音楽が全篇を彩る。それだけでとても楽しい。

「ララランド」の成功がミュージカルの復活などという向きもあるが、過去を振り返るとミュージカルに限らず音楽を題材にした映画は常に一定程度あり、そのどれもがお気に入りであることに改めて気が付く。

昨年の「シングストリート」、もう少し前だと「ピッチパーフェクト」「ヘアスプレー」も良かったし、一般にはあまり評価が高くなかった「ロックオブエイジズ」でさえ個人的には大好きである。

結局、映画と音楽のコラボに弱いんだ。単純だけど認めざるを得ない。

ただ、本作はそれだけではない。なにしろ最近絶好調のユニバーサルのアニメである。

ミニオンのシリーズ以降はずっと安定していて、今回もキャラクターの外見と個性は魅力十分。本作は「ズートピア」よろしく動物に当てはめていく手法をとっているが、比較しても特に見劣りしない出来栄えである。

もう少しキャラクターのことを詳しく書こうと思っていたら、あることに気が付いた。それは、本作には悪役が登場しないということだ。

様々な環境にあるキャラクターのエピソードが並行して描かれるが、いずれも生きていく中で障害を持った普通の動物(?)たちが奮起して一つのことを成し遂げる一本道に絞っている。

物語の上で転換点となるのは悪役による妨害ではなくて自身の弱さが招くトラブルとなっている。これは地味だけどとても好感が持てる脚本である。

自分の至らなさの原因を誰かに押し付けて非難ばかりする光景が日常絶え間なく流され続ける中で、自分を謙虚に見つめて立ち上がる動物(?)たちの姿に素直に感動することができた。

音楽に戻ると、最も良かったのはゴリラのジョニーが魂を込めて歌うElton Johnの"I'm Still Standing"。洋楽を聴き始めて間もないころに大好きだった曲でもあり、この選曲がいちばん痺れた。歌ったTaron Egertonもお見事。

(90点)
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