鉛色の空の下、鮮血への渇望。
人気のない広い平地をまっすぐに伸びる並木道。1台の車が走り抜けようとした瞬間に木陰から突然人が飛び出してくる。
事故を避けようとした車は、反対車線側の並木に衝突して大破。飛び出した人影がゆっくりと車の方へ近付いて行く。
静かではありながら、いや、静かに展開するからこそ謎が深く印象的な冒頭の場面は、何の説明もないままタイトルを経て本篇へ切り替わる。
主人公は、獣医を学ぶ大学へと進学したジュスティーヌ。両親も獣医なら、姉も1年先に同じ大学へ入学している獣医ファミリーだ。
ジュスティーヌは成績優秀で、その神童ぶりは早くから大学にも知れ渡っていたが、彼女の特異さはそれだけではなかった。
どうやら全寮制のこの大学。新入生を待っていたのは「洗礼」という名の上級生からの「いじり」。まるでひと昔前のわが国体育会系のようなノリだが、フランスでもこんなことするんだね。
獣医ならではと言おうか、ベジタリアンのジュスティーヌにうさぎの生の臓物を食べさせる悪趣味さ。ネットに投稿すればたちまち火の手が上がって、学校の責任問題に発展しかねないレベルだ。
姉のアレックスはそんな大学にすっかり馴染んでいるようで、多少エキセントリックな振る舞いもするものの、少しずつ妹を慣れさせようと世話を焼く。しかし生肉を口にしてしまったジュスティーヌに次第に異変が生じ始める。
全篇を通して画面を覆う空気がとにかく陰鬱である。空模様がどんよりしている以上に、退廃した学生寮生活が輪をかけて気分を重くさせる。音楽も致命的に重い。
ジュスティーヌの変貌、冒頭の謎めいた場面を要所に取り入れる演出など、巧いなと思わせるところは多い。
しかし、謎が解けたときに抱いたのは、救いのない不道徳への不快感だった。「あなたたち、こうなること予想してたんじゃない」と。
もちろん世の中はきれいごとばかりになってはいけないから、この手の作品があることはむしろとても意義がある。と思うが、積極的に評価はしない。できない。
登場人物の誰もが荒んでいて感情を重ねることができないのも、もやもや感が抜けない原因だと思う。アレックスともルームメイトのアドリアンとも接近と対立を目まぐるしく繰り返すので、どれが本当なのかを見失いついていくことができない。
アレックスといえば、あの場面で失神してしまうのは後から思い返すと少し不自然な感じがしてしまったし、そうした細かい点が気になってしまうということは、やっぱり作品の質というより感性が合わなかったということなのだろう。
(65点)
人気のない広い平地をまっすぐに伸びる並木道。1台の車が走り抜けようとした瞬間に木陰から突然人が飛び出してくる。
事故を避けようとした車は、反対車線側の並木に衝突して大破。飛び出した人影がゆっくりと車の方へ近付いて行く。
静かではありながら、いや、静かに展開するからこそ謎が深く印象的な冒頭の場面は、何の説明もないままタイトルを経て本篇へ切り替わる。
主人公は、獣医を学ぶ大学へと進学したジュスティーヌ。両親も獣医なら、姉も1年先に同じ大学へ入学している獣医ファミリーだ。
ジュスティーヌは成績優秀で、その神童ぶりは早くから大学にも知れ渡っていたが、彼女の特異さはそれだけではなかった。
どうやら全寮制のこの大学。新入生を待っていたのは「洗礼」という名の上級生からの「いじり」。まるでひと昔前のわが国体育会系のようなノリだが、フランスでもこんなことするんだね。
獣医ならではと言おうか、ベジタリアンのジュスティーヌにうさぎの生の臓物を食べさせる悪趣味さ。ネットに投稿すればたちまち火の手が上がって、学校の責任問題に発展しかねないレベルだ。
姉のアレックスはそんな大学にすっかり馴染んでいるようで、多少エキセントリックな振る舞いもするものの、少しずつ妹を慣れさせようと世話を焼く。しかし生肉を口にしてしまったジュスティーヌに次第に異変が生じ始める。
全篇を通して画面を覆う空気がとにかく陰鬱である。空模様がどんよりしている以上に、退廃した学生寮生活が輪をかけて気分を重くさせる。音楽も致命的に重い。
ジュスティーヌの変貌、冒頭の謎めいた場面を要所に取り入れる演出など、巧いなと思わせるところは多い。
しかし、謎が解けたときに抱いたのは、救いのない不道徳への不快感だった。「あなたたち、こうなること予想してたんじゃない」と。
もちろん世の中はきれいごとばかりになってはいけないから、この手の作品があることはむしろとても意義がある。と思うが、積極的に評価はしない。できない。
登場人物の誰もが荒んでいて感情を重ねることができないのも、もやもや感が抜けない原因だと思う。アレックスともルームメイトのアドリアンとも接近と対立を目まぐるしく繰り返すので、どれが本当なのかを見失いついていくことができない。
アレックスといえば、あの場面で失神してしまうのは後から思い返すと少し不自然な感じがしてしまったし、そうした細かい点が気になってしまうということは、やっぱり作品の質というより感性が合わなかったということなのだろう。
(65点)
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