Con Gas, Sin Hielo

細々と続ける最果てのブログへようこそ。

「嘘を愛する女」

2018年01月21日 09時31分23秒 | 映画(2018)
愛の力で、また歩き出せる。


5年の間ともに過ごしてきた相方が、実は経歴から何からすべてを偽っていたことが明らかになった。

予告篇を見る限りはサスペンス風の作品。なぜ彼は嘘をつかなければならなかったのか。

長澤まさみ演じる川原は、東日本大震災の日に研修医の小出という男性に困っているところを助けてもらう。

その後同棲を始めた二人。川原が自分の母親に小出を紹介しようとしたその日に、小出はくも膜下出血で意識不明の状態に陥る。

公園で倒れたという小出が所持していた身分証は一時警察の手に渡るが、そこで分かった事実が「身分証の記述は、住所を除いてすべてがでたらめ」ということであった。

こんなとき人はどうするのだろう。川原はとにかく知りたいと思った。同僚の親戚である私立探偵を雇って小出の正体を探る選択をとった。

「過去を知って良い結果が生まれたことはない」と忠告されても、彼女の決意は変わらなかった。

彼に対する愛なのか、それとも単なる意地なのか。自分でも分からなかったと思う。ただやみくもに探し続ける中で、次第に彼女と小出の本当の関係が見えてくる。

川原はキャリアとしては成功しているが、決して完全な人間ではない。むしろ性格は悪いくらいとして描かれている。そこが最初はうざったいが、後半になると「気づき」による変化を明確にする点で大きな効果をもたらしている。

対する小出は終始穏やかである。それ故に川原は彼の本質に気づけなかったのである。

二人が出会う前に、小出に起きたことは何だったのか。それが分かった最後の場面で映し出される小出の表情は、演じる高橋一生の独特な風貌とも相まって、同じ表情なのに内なる感情が投影されているように映りとても印象に残る。

全力で愛したはずなのに幸運な結果をもたらすことができなかった。そんな悲しい経験をしたとして、それを癒やすことができるのも、また愛しかないのである。

適切かは分からないが、先日の小室哲哉氏の会見を思い出していた。その人がどのような感情を抱き、どれだけの愛を注いでいるのか。それは他人が簡単に推し量って裁定を下すべきものではない。いま巷で聞かれる反応の数々は、そうした緩やかではあるが大きな共通認識の下に発生しているものだと思う。

(75点)
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「伊藤くん A to E」 | トップ | 「パディントン2」 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

映画(2018)」カテゴリの最新記事