Con Gas, Sin Hielo

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「アメリカンハッスル」

2014年02月02日 16時37分36秒 | 映画(2014)
上質な脂のノリ具合を堪能。


今年初めて映画館に足を運んだ。少しでも足が遠のくと、「観てもいいかな」くらいでは重い腰が上がらなくなってしまう。映画の記事を書いている人間でこれなのだから、配給会社の宣伝部があれこれ知恵を捻る苦労は想像してありあまる。

時は既にアカデミー賞レースが本格化。今回10部門と圧倒的な支持を受けている本作。

監督ももはや常連と言っていいD.O.ラッセルだから、それは期待するなというのが無理な注文だ。

さらに期待値を高めるのは俳優陣だ。客を呼ぶというよりも、いまノッてる面子をそろえた感じがいい。役の中での騙し合いと並行して、役者同士のつばぜり合いがびしびし伝わってくる。

登場人物は、誰もが上昇志向で完璧を目指しつつも、弱点をさらけ出し結局は突き抜けることができていない不完全な人間。冒頭のハゲ隠しは象徴的であり、ここを長く映すことによってスリリングでありながらどこか滑稽な空気が最後まで崩れない。

個性的な役をノッてる役者が生き生きと演じていて目移りがするほどなのだが(オスカーノミネートが多く出ているのも納得)、個人的に今回点を稼いだと感じたのはJ.ローレンスだった。

「世界にひとつのプレイブック」でワケあり女性を演じた経験はある(というより賞を総ナメにしてしまったわけだが)が、今回はひと回り大きくなって、もはや20代にして風格さえ感じるほどなのには驚くばかりだった。

年齢も実績もはるかに上回るC.ベイル演じる有能な詐欺師アーヴィンがどうにも手こずってしまうという設定に説得力を持たせているのは彼女の功績だと思う。

登場人物のある種均等な不完全さは善と悪の区別もあいまいにしていて、駆け引きの行方も容易に想像がつかないという効果も生んでいる。

特に標的にされた市長が以外にも好人物だったことに驚いた。贈賄は確かに悪いことだが、あの時代は政治的によくやられていたことだったのだろう。FBIの方がよほど薄汚い。

よく練られた物語を旬の俳優が演じるだけで満足な上に、時折挟まれる70年代の音楽も味わいのある空気づくりにひと役買っている。ぜいたくな作品だと思う。

(90点)
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2 コメント

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ご無沙汰しています。 (mezzotint)
2014-02-15 16:56:28
クラムさん
こんにちは。
わあ~点数良いですね。
私は期待度大だっただけにちょっと肩すかしだったような感じを受けてしましました。それぞれのキャラクターはなかなか味があったとは思うのですが、、、、。
70年代の音楽は懐かしくて思わず口ずさみました。
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ついついインフレ (クラム)
2014-02-16 22:14:01
mezzotintさん、こんばんは。

いま思うと、確かに点数あげ過ぎの気がします。
映画館に行けたのがうれしかったので、下駄履かせたようです。
でも、役者さん好きな人ばかりだし、音楽も良かったし。
早くこれを上回る作品に会えることを願っています。
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