Con Gas, Sin Hielo

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「アンコール!!」

2013年08月02日 03時27分07秒 | 映画(2013)
つのる思いを歌に込めて。


言ってみれば、とことん甘い。

容姿は違えど、誰もが明るく気さくなお年寄りたちが集まったコミュニティ。若くてキレイなセンセイは本業以上に熱心に指導にあたる。

少しぎくしゃくしている親子関係ながら真面目に仕事と育児に取り組むデキた息子に、生意気さのかけらも見当たらない完璧にかわいい孫娘。

自分を除いた周りにこれだけ恵まれて人生を見直せないとしたら救いの道はない、というくらいのお花畑設定なわけである。

でも憎めずについ微笑んでしまう。それはきっとおとぎ話だと考えれば辻褄が合う。

そして音楽の力だ。ロックやラップの曲を合唱に採り入れ、活き活きと歌い上げるお年寄りたちの姿は、それだけで観る側を惹きつける。

偏屈なじいさんであるT.スタンプ演じるアーサーだが、長年連れ添った妻・マリオンへの想いは、誰もが認めるまっすぐなものであった。

それはマリオンのすべてを理解し包み込む愛の映し鏡である。年老いて変化する夫婦という形態の最終理想形だろうと思う。

映画を観ながら思い出していたのは山口県周南市の事件。

高齢者に限らず人間が生きていく中で大切なのは社会への適応性だ。基本中の基本であり、それがありさえすれば結構幸せに生きられる。

アーサーは、これまで息子とうまく行かず、特定の友人以外には自分を閉ざす人生だった。それでもやってこられたのは、マリオンとの関係が良好であったとともに、マリオン自身が周囲との潤滑油になってくれたからに相違ない。

マリオン亡き後、裸になった自分と向き合い、改めて妻の偉大さを知るアーサーが、彼女を夢中にさせていたコーラスに関心を抱く設定はなんらおとぎ話ではない。こうした話の肝が強いことも本作の印象を良くしている要因なのだろうと思う。

繰り返しになるが、様々な歌の場面が時にはとても楽しく、時には心に迫ってくる佳作だ。

(80点)
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