Con Gas, Sin Hielo

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「ズートピア」

2016年05月14日 20時53分24秒 | 映画(2016)
それぞれの夢や理想のきっかけに。


ディズニーは強い。いくらUSJが飛ぶ鳥を落とす勢いといっても、ディズニーの強さにかげりが見えるという話はます聞かない。

特に映画関係では、スターウォーズもマーベルコミックもいつの間にかディズニー傘下となり、次々とビッグヒットを生み出している。その傾向は、伝統の屋台骨でもあるアニメにおいても同様で、「アナと雪の女王」の爆発的ヒットは記憶に新しい。

そのディズニーアニメが放った最新作がこの「ズートピア」だ。

「ズートピア」とは、言葉からすぐ分かるとおり、動物が暮らす場所(Zoo)+理想郷(Utopia)である。

登場するキャラクターたちは姿かたちこそ動物であるが、文明の発達した「人間社会」的な都市を構築し、文化的な生活を送っている。

ライオンの市長、水牛の警察署長、トムソンガゼルのポップスター。肉食動物も草食動物も野生の本能を抑え協調して暮らす様子はまさにユートピアだ。

そんな世界では、おとなしくニンジンをかじる印象しかないウサギだって警察官になる夢を叶えることができる。こちらは言ってみればアメリカンドリーム。

誰もが平等を保証された世の中で夢を追っていける社会。思い返せば、20世紀はそんな夢を純粋に持ち続けていた時代だった。冷戦の枠組みに囲まれながら、西と東がそれぞれの進む道を正しいと信じて疑わなかった。

しかし、その夢は実際には努力すればするほど何故か遠のいて行く。今やたいていの人が、平等も夢もかなえられるのは一部の力ある者に限られることに薄々勘付いていて、露骨に夢や理想を語ることに気恥ずかしささえ感じてしまっている。

しかし、本作はその恥ずかしさのハードルを、人間社会の構成員を擬人化した動物に置き換えることによって、いとも簡単に越えてみせた。

キャラクターを人間として描くと、どうしても長所・短所のようにプラスマイナスの判断をしてしまいがちなのだが、肉食や草食、体の大きさ、動作の速さなどの動物が持っている特質だと、違って当たり前のものとして受け止められるのは、目からうろこであった。

優劣のない世界の中で掲げられる平等は、叶わぬ夢や理想ではなくあるべき姿であり、うさん臭さや説教臭さをまったく感じないのである。

もちろん、そんな小難しいことを考えずに、彩り豊かな絵の中で愛らしいキャラクターが繰り広げる冒険を楽しむこともできる。というより、基本的には子供が純粋に楽しむ娯楽作品だ。これが何より本作の素晴らしいところである。

キャラクター設定も巧みだ。前述の「動物が持つ特質」を生かしつつ、ステレオタイプな性格の部分をアレンジして、意外な展開を組み立てている(途中で読める部分もあったが)。

毎度のごとく、字幕版を観るために六本木まで足を運んだが、やっぱりShakiraの歌は良かった。「インサイドヘッド」のように(あれはピクサー作品だが)余計なビデオが付いていないのも良かった。

(85点)
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