Con Gas, Sin Hielo

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「すすめの戸締まり」

2022年11月12日 22時13分19秒 | 映画(2022)
11年経って、子供たちは大きくなった。


もはや新海誠監督作品の公開はお祭りである。

そのおかげで「君の名は。」「天気の子」を地上波で見ることができた。

公開時の記事ではいろいろ言ったけど、改めて観ると両作品ともやっぱりおもしろい。特に「君の名は。」は、最終的に町民が避難できた流れを今回は飲み込めたので評価が変わった。まあRADWIMPSが出過ぎという印象は変わらないが。

そこで本作である。公開前には、東日本大震災を題材にしていて緊急地震速報の音が流れるのを事前に周知したことが大きな話題になった。

世の中の災いは、廃墟にたたずむ扉の向こうからやって来る。扉の内側には災いが外へ行かないように見張る「要石」があるのだが、ときどき抑えきれずに災いは「ミミズ」という形で飛び出していく。それが地震だ。

前2作ではフィクションの災害、それも確率としては低そうな隕石や首都沈没を描いたのに対し、今回のテーマは過去に実際に起きた地震災害ということで、アプローチも観る側の姿勢も大きく異なることとなった。

ベクトルも違う。前2作は災害が発生してしまったのに対し、今回は全力で起きないようにするというものである。どんなに力を尽くしても抗えないことが世の中にはあるということを見せた後に、それでも努力することは尊く価値のあることだと言っているのだ。

まあ正しいよね。自然災害以外にも理不尽なことが多く無力感に襲われるけど、世の中そうそう悪いことだらけでもない。これは同じ東日本大震災を扱った「天間荘の三姉妹」とも通じるところか。

今回は何より「戸締まり」という言葉のチョイスが良い。「見守り」とか「番人」とかではない極めて日常的な言葉であり、しかも響きとしてとても新鮮である。

そして廃墟。廃墟となった地では、かつて人が集い営みが形成されていた。被災地も同じ。その地の過去に、かつて暮らしていた人々に思いを馳せて大切に鍵をかける。これらの要素を結び付けて物語を紡いでいく感覚はさすがだと思った。

緻密さとダイナミックさが一体となった画の迫力は当然今回も健在である。全国各地を回るサービスと、何と言っても災いをもたらす「ミミズ」の造形が特に印象深かった。

少し分かりづらかったのは猫のダイジンだろうか。彼はすずめに何を期待していたのか。そしてなぜ草太が邪魔だったのか。これももう1回観ないとだめかな。

(85点)
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