Con Gas, Sin Hielo

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「イニシエーションラブ」

2015年05月31日 13時48分56秒 | 映画(2015)
AB間のまちがいさがし。


堤幸彦監督は策士だ。

これはおもしろい、大満足したという記憶はないのだが、予告・宣伝を見るとどうも気になってしまう。

最後の5分ですべてが覆る。原作とは違うエンディング。あなたは必ず2回観る。と煽るだけ煽った本作。

正確には、「150万人が騙された」という言葉に騙されたと言っていい。ただしそれは必ずしも悪い意味ではない。

もともと宣伝で「騙される」予告をしている以上、観る側はどこにタネがあるかを探りながら話を追うことになる。

そうしていると、ところどころに分かりやすいように引っ掛かるポイントが現れるのだ。

まず冒頭から、予告や宣伝にまったく出てきていない男性が出てきて語り始めるところで違和感を覚えるのだが、彼が「たっくん」と呼ばれる経緯の不自然さでその感覚は更に強くなる。

ただ、物語の構成をカセットテープのA面・B面になぞらえる妙手で切り替わりのテンポが潔いために、最大の違和感である「鈴木」の違いに決定的な判断を下すタイミングを失ったまま最後の5分へなだれ込む。

だから、どんでん返しの感想は、「そうだったのか」と「やっぱり」が半々であり、気付かなかった違和感がまだあるんじゃないかと、確かに「2回観たくなる」作品となっているのである。

本作の主役である繭子は、A面では「鈴木」に対して上位に立ち、言動と行動で魅了する。見事なまでのぶりっこは完全に悪女なのだが、かわいさに翻弄される男の性は悲しいほど理解できる。

それがB面では力関係が一転して、繭子は遠距離恋愛に耐え忍ぶ女性として描かれる。悪女と無縁の姿は、どちらが本当の彼女なのかと混乱しそうになるが、なんのことはない。人間は誰しも二面性を持っているのだ。

それは付き合う相手によって変わる場合もあれば、自らが確信して違う性格を出現させる場合もある。

繭子は生来の悪女だったのか。いや、辛い経験や記憶から自分を守るためにスイッチを切り換えたのだと捉えたのだが、やっぱりそれは男の甘い考えなのかもしれない。

繭子役の前田敦子。AKB48時代から先頭で世間の賞賛と非難を一身に浴びてきた彼女だからこそこの変わり身の役がハマる。

「鈴木」Bが言うように、木村文乃の方が洗練された魅力を持つ女性であることに疑いはないが、まったく別のオーラを発信する前田敦子のために本作は作られたと言っても過言ではない。

(80点)
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