Con Gas, Sin Hielo

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「スパイダーマン:ファーフロムホーム」

2019年06月29日 11時17分29秒 | 映画(2019)
インフレじゃなくても盛り上げることはできるんだ。


アベンジャーズが終わるという触れ込みの「エンドゲーム」であったが、MSUの第3フェーズのラストを飾るのは実は本作。それだけに、どのような世界を見せてくれるのか期待が膨らむ公開であった。

「エンドゲーム」で後見人でもあったアイアンマンを失ったスパイダーマンことピーターパーカー。日常に戻って高校生活を楽しもうとしていた矢先に、ニックフューリーから世界を救う戦いに手を貸すように要請される。

修学旅行先のヴェネツィアに突如現れたエレメンタルズという脅威。サノスとの戦いがきっかけで次元の扉が開かれたとのことで、これまた別の次元からやって来たミステリオという謎の男を紹介される。

異なる系列の作品ながら、奇しくも「スパイダーマン:スパイダーバース」が公開されて間もないこともあり、なるほど次のフェーズは異なる次元を取り入れて発展していくのかと理解していく流れだ。

ところが初登場のミステリオ。どうやら原作ではヴィランだったらしい。設定を変えてピーターと共に戦う?それともどこかで裏切って敵として立ちはだかる?このあたりの興味を掻き立てる手法は上手い。

本作はスパイダーマンの映画ということで日常の学園モノ的な話がベースにあるから、全体としてトーンは明るく楽しい。半熟英雄であるピーターが悩んだり過ちを犯したりする場面も微笑ましく見られる。

そして何より、ミステリオを集中して見ていたら、もっと大きい仕掛けがあったことが明らかになり、これはきれいに騙されたと思わず手を叩いてしまう展開。確信的な宣伝から意図しない世の中の空気までがミスリードになっていた。お人好しなピーターじゃなくともこれは信じてしまう。

次への繋ぎだけではなく、「エンドゲーム」の回収や後日談もふんだんに盛り込まれている。他のヒーローは出てこないが、失われた5年間が人々の生活をどのように変えたのかが「親愛なる隣人」の視点を通して描かれる。これまた「エンドゲーム」の後に本作を据える必然と言える。

サノスの次は何が来るという問いに明確な答えは出ていないが、視覚の脅威、科学技術の暴走、個人の葛藤、そして今後大きくなるかもしれない社会的圧力と、世の中は強大な敵になる可能性を有する様々な事象に満ち溢れていることを、本作は分かりやすい形で示してくれた。これは別の意味で次元の扉が開かれた、まさにフェーズ4への繋ぎにふさわしい作品だと言っていいだろう。

それにしても、スパイダーマンほど安定したコンテンツもなかなかない。T.ホランドのキャラクターとのマッチングも最高だ。

(95点)
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