Con Gas, Sin Hielo

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「ジャージーボーイズ」

2014年10月05日 19時40分06秒 | 映画(2014)
天賦の才能に引き寄せられる夢と挫折。


解説を読むと、大ヒットミュージカルの映画化とのこと。

メガホンをとったC.イーストウッド監督は、主要キャストにミュージカル版の経験者を配置。馴染みのない顔が並ぶが、貧困層からスターダムを駆け上がる青年たちを映し出す手段としてはこちらの方がいい。

音楽業界の話なので劇中で使われる音楽の質が生命線なのは言わずもがなだが、本作はそのラインを軽々と越えてみせている。何より映画全体のテンポがいい。

冒頭からいきなりフォーシーズンズの面々がカメラに向かって話しかける演出。W.アレンの映画かと見紛うが、ミュージカル版の手法を踏襲したものとのことらしい。

これを踏み切りとし、その後は軽快なピッチと大胆なストライドでエピソードが続けて描かれ、ぽんぽんと先へ進む。

大きな成功を夢見ながらも、いや、夢見ていたがために危ない橋を渡り刑務所に入ったり出たりを繰り返す時期から、やがて一転成功の道へ。

展開は速いが決して雑ではない。小さなエピソードを簡潔に、それでいて要所は押さえた上で見応えのある画を入れているから、その後の各人が出遭う苦悩にしっかりと結び付く。

本作の実質的な主役となるのは、今も現役で活動を続けるフランキー・ヴァリ。映画の製作総指揮にも名前を連ねる。

理髪店の見習いで働いていた時点で既に、神から与えられた歌声に周りが惚れ込んで、大切に大切に育てようとしていた様子が描かれる。

成功の階段を上るにつれ、経験に裏打ちされた自信から自らの意見を通そうとするようになり、やがて迎える衝突とグループの決裂。

メンバーのトミーとニックの描き方には少し同情したくなる部分もあるが、4人の個性と思惑が交差する物語は観る側の心にぐいぐいと迫ってくる。

解散状態となったグループ、最愛の娘の死。失意のフランキーが最後にすがったのはやはり音楽だった。"Can't Take My Eyes Off You"ののメロディーが流れると自然に涙があふれた。

時は過ぎ1990年。ロックの殿堂入りを果たした彼らはひさしぶりの再会を果たす。ステージ上で観客に顔を向けると、そこには若かったころの彼らの姿が。そして演者全員が登場する大団円へ。

テンポの速い展開も、ラストの演出もそうだが、ミュージカル的でありながら映画だからこそ可能な技術を効果的に取り入れている。

あまり「感動」という言葉を安易に使いたくはないが、文句なしに楽しくて感動できる作品に仕上がっている。

(95点)
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