Con Gas, Sin Hielo

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「ドントブリーズ」

2016年12月23日 22時12分41秒 | 映画(2016)
耳をすませば。


この正月いちばん楽しみにしていた作品である。どこに興味をひかれると言えば、障害者がモンスターであるというところ。これは思い切った設定、少なくともわが国では実現が難しい企画なのではないだろうか。

盲目の老人が一人で住む家へ強盗に入る若い男女3人。楽々大金を手に入れられると思った彼らがはまり込む地獄とは一体どういうものなのか。

デトロイト郊外のゴーストタウンで周りには誰も住んでいない。数年前にたった一人の親族であった娘を交通事故で亡くし、示談か何かで大金を得たこともあり、盲目ながら誰の助けも受けずに一人暮らしを続けている。

こうした一見攻めやすそうな設定が、侵入してからことごとく不利な方向へ裏返っていく展開がおもしろい。

真夜中の古い屋敷。床のきしむ音、息遣いを敏感に察知する老人。退役軍人だけあって体は屈強で、一度つかまれば勝ち目がない。音さえ立てなければ何もない点は、「サイレントヒル」に出てきたクリーチャーのようでもある。

相手は自宅で間取りを知り尽くしている。忍び込んだのは夜中だから灯りを消されたら圧倒的に不利だ。しかも、家の中を逃げ惑ううちに、老人の本当の恐ろしい一面が露わになる。

狭い家の中で「音」を介した緊迫のやりとりが続く。観ている側もちょっとした音を拾おうと神経を集中させ、ポップコーンをつまむことさえはばかられる(買ってないけど)。

ここで効果音とともに何か現れたら心臓に悪いだろうなどと緊張しながら観ることが更におもしろさを増幅させており、これは圧倒的に映画館での鑑賞に向いた作品といえる。

この困難な闘いに挑むことを強いられる主人公だが、家庭環境に問題があるとはいえ強盗を働く輩であるという設定もまたユニークだ。いかに老人がモンスターであっても、家に押し入らなければ、関わらなければ何の危害も与えてこないわけで、実は作品全体が自業自得の一語で片付けられてしまうのだ。

老人が隙を見せる場面も多く、屋敷から脱出するチャンスが複数回訪れるのだが、その度に彼らは大金に惑わされ逃げ出すことができない。実に愚かしく、これは逃げ切っちゃだめでしょと思うこともあるくらいだ。

そんな両者の闘いの結末だが、悪くない。老人は哀しいけれど強かで、強盗の幸せは簡単には見えてこない。悪いことに手を染めたら、生涯息を潜めて暮らす覚悟を持たなければならないのだ。

(75点)
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