Con Gas, Sin Hielo

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「アルゴ」

2012年11月15日 02時44分18秒 | 映画(2012)
胆力、そして使命感。


冒頭のワーナーのマーク。あれ?間違った場所に入ったかなと一瞬思う。

時代は70年代から80年代へ移ろうという頃。記憶がフラッシュバックする。

そう、あの時代のアンチヒーローは、国家ではソ連であり、個人では間違いなくホメイニ師だった。

熱心にニュースを見ていなくても、パーレビ国王といった名前は耳に馴染んでいたし、何となくイランが怖いということも感じていた。

しかし歳月が過ぎ、曲がりなりにも外国で暮らす経験を持った身として、異国の地で煽動された群衆に囲まれることの底知れぬ恐ろしさを、改めてまざまざと見せ付けられた。

古いワーナーのロゴは、説明抜きに観る側をあの時代の緊張感へと運び、見事に再現された70年代の風景が作る空気とともに、6人の救出が完了するまで決して途切れることはない。

もちろん印象に深く刻まれるのは物語である。

特に、米国を感じ、中東を感じ、それを通じてわが国を思う。

外国で窮地に陥っている自国民は全力で救う。それが今も昔も変わらないアメリカの美学であり、そのためには、突拍子もない考えでも一度決めれば団結してそれに当たる。

作戦が成功しても決して手柄の奪い合いはしない。大局に立ったときに何を優先すべきかをそれぞれが心得ている。

その信念に呼応するのか、本作では隣人のカナダがしっかりとサポートする。他の国際舞台でも、盟友の英国を筆頭として巧みに戦略的互恵関係を築き上げる。

かたや中東は常に資源と宗教に明け暮れる。資源は財力を生み、宗教は感情の暴発を引き起こす。

静かなる協力者はイランを脱出してイラクへ入国するが、歴史としてそこに待っているのは、イラン・イラク戦争であり、フセイン体制と米国の侵略なのだから皮肉である。

翻ってわが国といえば、北朝鮮に残された拉致被害者を救うことができない。隣人は言わずと知れたあの面々である。

国の柱が頼りないのか、そもそも地理的・歴史的に不幸な立場にあるのか、それともひょっとして我々がうかがい知らないところでしたたかな外交が繰り広げられているのか。

繰り返しになるが、表向きの評価が得られない中で命を賭して闘う人たちの姿が何よりも輝いている。

もちろん"Based on"であり、演出の部分も多々あるだろうけれど、実際の緊張感は劣るどころか遥かに過酷なものであったろうし、救出側の対応も映画ができ過ぎなどでは決してなかったものと想像できる。

それがこの作品の力強さであり、実は現代の世界が求めて止まない理想なのだと思う。

(95点)
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4 コメント

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今晩は☆★ (mezzotint)
2012-11-21 00:11:53
クラムさん

お邪魔するのが遅くなりました(汗)
面白かったですね。本当に見ているだけで物凄い
緊張感!ハラハラドキドキものでした。
中東の人たちの絡みもマジで怖かったですよね。
地味だけにリアルで、、、。まさにリアルタイムで見ている
中継のように感じました。
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Unknown (mig)
2012-11-22 10:31:24
わぉ!すごい点数高いですね。
今年のナンバーワンでしょうか?
あと1ヶ月ほどでランキング決める時期となりました。
今年もガツンとくるのはなかったけど
これもベスト入りです★
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100%アウェイの緊張感 (クラム)
2012-11-24 01:13:50
mezzotintさん、こんばんは。

当時の事件を詳しく知らなかっただけに、
結末がどうなるのかも含めて緊張しながら見ていました。
大使館の人質もよく無事に解放へこぎ着けたと思います。
中東、怖いですよね。
そんな人ばかりじゃないと分かってはいても、
あの群集の中に放り込まれたら、普通の精神状態ではいられない気がします。
返信する
かいしんのいちげき (クラム)
2012-11-24 01:20:07
migさん、こんばんは。

今年「も」ガツンとくる作品ありませんでしたか。
確かに衝撃まではいかないのかもしれませんが、
本作には何か手ごたえというか味わい深いものを感じました。
あとひと月でどのくらい観られるか、
心に残る出会いがどこかにあるのか、期待しているところです。
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