Con Gas, Sin Hielo

細々と続ける最果てのブログへようこそ。

「半世界」

2019年02月14日 23時03分15秒 | 映画(2019)
いつの間にか人生折り返し。


半人前、半熟。「半」という字は半分ではなく不完全なものを表すときにも使われる。本作のタイトルである「半世界」は完全ではない世界、広い世界の一部という意味を持つのだろう。

挫折して故郷へ帰ってきた元自衛官の瑛介は、同級生の紘に対し「お前は世間を知っているが世界を知らない」と言う。しかし彼は気付く。田舎の世間という狭い空間にも複雑で深い世界があることを。

主人公の紘は三重県の南伊勢町で父親から継いだ製炭を生業にして暮らしている。三重県は伊勢志摩より南に下ると鉄道も道路も少なくなるなど過疎地域の印象が強い。昼間も人通りはまばらで、夜の遊び場といえばおそらく1軒しかないカラオケスナックに同じ顔触れが集まる日々だ。

中古車販売業を営む光彦も含めて過疎地での生活は厳しい。紘が作る備長炭だって、いくら品質が良かったとしても買ってくれる先の思いに左右される不安定な商売だ。

本作は、社会人となって約20年が経過した40歳を人生の折り返し地点と位置付け、それぞれが生きてきた世界=半世界にどう向き合うかを描く。

行き詰まって新たな世界を探す瑛介と、わき目もふらず生きてきて改めて足元を見つめ直す必要に駆られる紘。学生の頃は想像もしなかった重い荷物を背負って生きる人生。大人って大変だと思わされる。

阪本順治監督のオリジナル脚本ということだが、50歳を過ぎてボーっと生きているのが申し訳なく思ってしまう。

そんな精神年齢の高い同級生3人に突然訪れる悲報。輪をかけて過酷な状況が訪れるがそれでも明日は来る。反抗ばかりしていた紘の息子がとった最後の選択は、意外性とともに重い空気の中を軽やかに吹き抜ける風のように感じられた。

主演の稲垣吾郎は、年齢的には問題ないのだろうけど紘が抱える負担に比べるとどうしても若さを感じてしまった。というより、やはりこの役が40歳前後という設定に違和感を覚える。

一方で紘の妻を演じる池脇千鶴が全篇を通して素晴らしい。妻として母としてたくましくもかわいらしい女性を体現している。華やかな役を演じることは少なくなったが着実にキャリアを重ねている印象だ。

そろそろ自分のキャリアと人生も見つめ直した方がいいのかな。

(70点)
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「アクアマン」 | トップ | 「女王陛下のお気に入り」 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

映画(2019)」カテゴリの最新記事