Con Gas, Sin Hielo

細々と続ける最果てのブログへようこそ。

「ゲットアウト」

2017年11月05日 02時59分39秒 | 映画(2017)
「出て行け!」って、どこへ?


秋の夜長はしっとりと恋愛映画で・・・というのはひと昔前の話らしい。11月は妙にホラー作品の公開が目に付く。

本作は北米では2月に公開されて異例のヒットを記録した。

黒人青年のクリスが白人の恋人ローズの実家へ挨拶に行ったのだが、どうもその家は何かがおかしいという話。

初の黒人大統領だったオバマから、レイシストと非難を浴び続けるトランプ政権になって、完全に対決姿勢となっているハリウッド。

人種問題を匂わせたテーマ設定は商業面からも上手なやり口に見えたが、話が進んで行くに連れてこの映画の、特に題名の巧妙さに大いに驚かされた。

至るところに散りばめられた不穏な空気は、普通に見る限り黒人と白人の微妙な社会的関係に端を発するものと捉えてしまうのだが、そこが大きな穴となっていたのだ。

いや、正確に言えば、明らかに人種差別的な要素は根底に確実に流れている。ローズの実家・アーミテージ家では、初対面の父親がクリスの緊張をほぐそうと敢えて人種の話題に触れ、ローズもクリスが気を悪くするのではないかと常に気にかける。

ローズの家族は、白人社会に一人紛れ込んでしまった黒人の居心地の悪さを理解する進歩的文化人として振る舞う一方で、過去の経緯から黒人の使用人を雇ってもいる。身分で差別をしているように見えるかもしれないが、アーミテージ一家は使用人たちを家族同様に扱っていた。

しかし、この家で過ごす時間が長くなるほど、家を取り巻く異様な空気が次第に強まってくる。そしてその異様さを発信するのは、何故か決まって黒人である使用人や来客であった。

この描写がものすごい。差別される側で描かれて然るべき黒人がまるでモンスターの如く振る舞うのだから、観ている側は混乱を余儀なくされる。

そして後半、この家の秘密が明らかになると同時に、クリスの絶望感が一気に押し寄せてくる。

明らかになった敵にどうすれば勝つことができるのか。その鍵も前半の物語にしっかりと置かれていたものが効果的に使用され、すべての展開が見事に繋がるクライマックスがまた素晴らしい。

新鮮な驚きに会うことを求めて映画館に足を運ぶのが、この季節なんだと改めて感じた。

(95点)
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「IT/イット"それ"が見えた... | トップ | 「ブレードランナー2049」 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

映画(2017)」カテゴリの最新記事