Con Gas, Sin Hielo

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「ウディアレンの夢と犯罪」

2010年04月17日 01時03分04秒 | 映画(2010)
中途半端な勝負が招く男の悲劇。


W.アレンといえば何故かガーデンシネマが多い。巨匠と呼ばれてもなおメジャー系にはあまり縁のない不思議な監督だ。

巷ではロンドン3部作なんて括り方をされているけど、本作はコメディ要素は皆無だし、S.ヨハンソンも出てこない。

主役の兄弟の情けなさは滑稽ではあるものの笑える筋のものではない。基本的には悲劇だ。

どツボにハマっていく兄弟というと昨年観た「その土曜日、7時58分」を思い起こす。そういった意味で新鮮味にやや欠けてしまったのは残念であった。

ただ、もう少し目を凝らして見てみると、ところどころおもしろいことに気付く。

まずは作中の男女のコントラストである。

本作は、S.ヨハンソンに限らず特に有名な女優さんが出ているわけではない。しかし出てくる女性はとてもまぶしい。

兄・イアンがベタ惚れしてしまう女優アンジェラ、弟・テリーの常に傍らで支えるケイト。タイプの違う2人の女性は、派手に振る舞うわけでもないのにオーラ的な女性の魅力に満ちている。これは監督の腕なのか。

それに比べて男性陣は、まあことごとく欠陥を露呈して情けない。

テリーは酒・薬・ギャンブルの日々。勝った勝ったと言いながら、映像で流れるのはなぜか負けシーン。勝ったという言葉は虚言かもしれないとも思える演出だ。

借金は増えるけど止められない。スポーツマンで勝気な性格に表向きは見えるが、実はかなりの小心者。

イアンは対照的に頭が回る。端麗な容姿と相まって、田舎でくすぶっているのはもったいないと周りから思われ、本人もその気になっている。

しかしそんな自意識は過剰気味に持っている彼が地元を出られない本当の理由は、才覚と決断力の不足である。

そんな二人だから人生はぱっとしない。父母を交ぜて囲む食卓は殺伐とし、唯一出る明るい話題は世界を股に掛けて活躍する伯父のハワードの話だけだった。

母は言う。「最後に頼れるのは家族だ」と。

自らの甲斐性のなさから少しずつ追い込まれる兄弟。彼らはハワードを最後の頼みの綱とするのだが、実はこの男にも似通ったDNAが流れていた。

坂道を転がり始めた石は下りきるまで止まることはない。自分と家族のことを考え、なんとしても不名誉と損害を避けようと奮闘した結果は、なかなか強烈な皮肉が効いている。

おそらく道が下り始めたのは相当前のことだろう。下りの道には相応の歩き方があるのに、彼らは分不相応に加速してしまったのだ。そしておかしいと思ったときに強くブレーキを踏むこともできなかった。

単純な話なのだが、キャラクターの設定や物語の展開を見ると、やはり巧く作り込んでいるなという印象を受けた。

(75点)
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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
こんにちは (mig)
2010-05-04 10:33:59
クラムさん更新ないなと思ってたらそういうことだったんですね、まとめてレビューupお疲れさまです^^


わたしの方も忙しくてコメントお返事も追いついてないのでこちらにのみ失礼します~

これはそんなに評判よくないみたいなんですよね、
わたしは十分楽しめたのでくらむさんも評価高めで嬉しいな。
アレンの映画ってニガテな人もいるようだけど、コリンもユアンもすごく良かったですよね、次回も楽しみ♪
楽しい週末を、、、!
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復活です。 (クラム)
2010-05-08 23:31:14
ようやくPCのある生活に戻りました。

本作は、それほどW.アレン臭はしないように感じたんですが、どんなもんでしょう。
兄弟モノって元々それだけで惹かれます。
更に情けない兄弟というところが、身につまされるものがあるというか・・・。
W.アレンの次回作って、もう決まってるんでしたか?
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