Con Gas, Sin Hielo

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「エリジウム」

2013年09月29日 06時43分37秒 | 映画(2013)
ヒスパニックは貧困の象徴?


はじめに言い切ってしまおう。

なぜこの映画に共感できないかというと、「エリジウム」が存在する社会の設定の根本がおかしいと思うからである。

宇宙コロニー「エリジウム」では、高度な科学技術によりどんな病気もたちどころに治療される。人々はいつも柔らかな日差しを浴び、豊かな緑の中で悠々自適な生活を送っている。

ただし、そこに暮らすことができるのは一握りの裕福な人たちのみ。大半の貧困層は、汚染と荒廃が進んだ地球で、常に死と向かい合いながらの暮らしを余儀なくされている。

実際の現代社会でも大きな問題とされている格差社会。この状況が著しく進んだとしたら、というのは近未来モノでよくみる設定なのだが、たいていの作品において問題の本質が直視されることはない。

本作の冒頭で語られる状況の解説。時は2154年、地球の環境は大気汚染と人口爆発によって変わり果てたと言う。

そう、問題はそこなのである。わが国の課題は少子化であるが、世界的にみれば人口は新興国や後進国を中心に爆発している。

このままでは水や食糧、そしてエネルギー資源の不足が迫ることは自明。そこで自然発生的に生じていることが弱者や貧困層の切り捨てだ。

更に経済効率を優先させる政治が状況を加速化させる。福祉を国民のすべてに行き渡らせたくても先立つものがない(と言う)。

それでも民主的に指導者が選ばれるかぎりは、表向きはできるだけ福祉を充実させようと努力するが、独裁国家となるとそうはいかない。

徹底した効率化で富める者のみが利益を享受し、貧困層はむしろその利益を生み出す道具として酷使され続けるのである。

もちろん利益を独占しようとする者にこそ圧倒的に非がある。しかし、その悪を倒して理想郷を開放することで最終目的が達成されるとするのではあまりにも問題認識が極薄だ。

M.デイモンの体を張った熱演には敬意を表するが、彼の努力で獲得した貧困層の権益をめぐり、そう遠くないうちに争いがはじまる光景が容易に想像できて、まったくカタルシスを得ることができなかった。

(45点)
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2 コメント

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Unknown (mig)
2013-10-03 23:23:07
あはは、クラムさん大真面目にとらえちゃうとこれツッコミどころだらけですね。
そこ含めてわたしは楽しんでしまいました♪
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うーん (クラム)
2013-10-08 23:21:00
migさん、こんばんは。

大まじめに記事書いてしまって、なんか恥づかしいですね。
でも、残念ながら不愉快の方が先に立って拭うことができませんでした。
「第9地区」は好きなので、次回作も引き続き期待します。
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