Con Gas, Sin Hielo

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「ディクテーター 身元不明でニューヨーク」

2012年09月12日 23時21分36秒 | 映画(2012)
人類なんて、所詮この程度。


S.バロン・コーエンの新作は、不真面目を装った真面目のようで、やっぱり不真面目という印象。

冒頭の、とある人へ捧ぐメッセージで弾頭を打ち込んだ勢いそのままに、全篇に渡って差別発言のオンパレード。

そんな言葉の激しさがさほど嫌味に感じないのは、誰より何よりアラジーン将軍に扮するサシャ自身が明らかに愚かに見えるから。

しかしアラジーン将軍の陰に隠れつつ、どの国もどんな思想も笑いの種にしてしまう潔さには感服する。

特におかしいのは、自然や人権を声高に唱える「少年」女子・ゾーイを将軍の相手に据えたこと。

真剣な市民活動の姿勢を一刀両断するなんてのは序の口で、店の経営をアラジーンが買って出て上意下達方式にした途端に上手く運び出すのもおかしいし、挙げ句の果ては二人の関係が進展してしまうのだから、とにかく痛快だ。

そして世界のジャイアンこと米国的民主主義への皮肉も忘れない。

同じような言葉を別で聞いたことがあるかもしれないが、変に社会派を気取った人物に説教されるよりも、この映画でアラジーンが単純明快に語る方が真っ直ぐ伝わってくるような気がした。

それはその後に続く愛の言葉があったからだと思う。

演出としては、話している途中でゾーイが目に入って言葉を変節させるのだが、これは言ってみれば、不完全だけどそれでもこの国が好きと多くの国民が胸を張って言える米国そのものを表しているのだと思う。

翻ってわが国は、最近でこそナショナリズムの芽生えが散見されるが、本当の意味での愛国心が根付いているのか疑問に感じる。

いいところも悪いところも分かった上でやっぱり日本が好きと言い切り、他国と渡り合っていくことができるだろうか。

少なくとも、この作品のように中国人をネタに使うなんてことは、深夜のUHFですら無理だろう。

日常で感じる閉塞感が本作をより痛快に感じさせたことは間違いない。

この手の作品を天下のパラマウントが製作し、B.キングズレーE.ノートンなんて一流どころが顔を出しちゃうんだから、やっぱり米国はすごい。

(90点)
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