Con Gas, Sin Hielo

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「トイストーリー4」

2019年07月14日 22時27分45秒 | 映画(2019)
冒険は無限の彼方へ。


完璧な完結篇と言われた「トイストーリー3」から9年。なぜ続篇を作ることが必要と制作陣は思ったのか。

賛否両論はあるかもしれない。しかし、確かに本作にはこれまでのシリーズで扱われてこなかった側面が描かれていた。

一つは女性の自立と活躍だ。「トイストーリー2」以来の出演となるボー・ピープが最近のディズニープリンセスのように駆け回る。

アンディの妹・モリーの持ち物だったボー・ピープはアンティークショップへ引き取られた。物好きな買い手が現れないかぎり誰かの所有物になることはない。そう悟った彼女は、新たな道を切り開くべく店を飛び出し、無数の子供たちが集まる移動遊園地で独自の活動を展開していた。

子供は一人じゃない。世界は限りなく広い。これまで持ち主に尽くすことがおもちゃの使命と定義づけてきたシリーズに、突然反旗を翻したかのような彼女の姿勢に戸惑ったのはウッディばかりではない。

しかし一方でシリーズは、持ち主の成長という抗い難いおもちゃの運命も描いてきた。前作でアンディからボニーへと受け継がれて、完全にハッピーエヴァーアフターといかないことは誰でも分かる。

そんな閉塞的な世界観に新しい一つの解を与えているのがボー・ピープの生き方なのである。そして彼女は持ち主のために生きるおもちゃを否定しない。これがもう一つの側面、多様性である。

多様性の代表とも言うべき存在が、ボニーの手作りおもちゃであるフォーキーだ。先割れスプーン、毛糸、アイスの棒で組み立てられた彼は、本人が言うように素材としてはTrash=屑である。

しかし彼は他の誰よりもボニーに愛情を注がれる。姿かたちだけではない、誕生した経緯その他を含めて、彼は唯一無二の重要な存在である。これを人間に置き換えれば、LGBTや少数民族といった社会問題に通じることが分かる。

「トイストーリー」は初めての本格長編CGアニメとして、技術の先端を開発する素材として誕生した。しかし、技術が十分に発展した今、世界的に認知されたキャラクターたちは大きな発信力を持つようになり、作品の役割も変わったのだ。そういった状況を考えれば、今回の続篇は必然だったのだろうと思う。

もちろん発信するテーマがあるといっても、作品が堅苦しくなるわけではない。今回も魅力的な新しいキャラクターが次々に登場して観る側を楽しませてくれる。"Yes, we canada"の台詞が印象的なスタント人形、デューク・カブーンが特に愉快な活躍を見せてくれるが、その声がK.リーブスと知って驚いた。

今回監督を務めたJ.クーリー監督は、さすがに「ウッディの冒険はこれで終わり」と言っているが、そのうち時代がまた彼らのメッセージを求める日が来るかもしれない。

(80点)
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