Con Gas, Sin Hielo

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「恋するプリテンダー」

2024年05月11日 22時10分32秒 | 映画(2024)
見れば幸せな気分になる。


なんでもこの冬のサプライズヒットだったそうである。

必ずしも世界的なネームバリューがあるわけではないキャスティングによる普通のラブコメが、現時点で2億米ドルを超える興行収入をたたき出したのだ。

理由について新型コロナが明けたからだとか様々な憶測が飛び交っているが、どういう作品なのか、本当に普通のラブコメなのか、とにかく観てみなければ始まらない。ということで公開早々に映画館へ足を運んだ。

冒頭、一人の女性がカフェを訪れる場面から始まる。若いけど絶世の美女という感じではない。どちらかと言えばファニーフェイス。ひょっとして彼女が主役なの?

女性はトイレを借りようとするが、杓子定規な店員は客でなければ貸せないと突っぱねる。そこにオーダーに並んでいた男性が助け舟を出す。「彼女はぼくの妻なんだ。妻の商品もオーダーしたから、トイレを貸してくれるよね」。

ドラマティックな出会い。確かにひさびさのラブコメ感満載の展開に期待は膨らむ。

女性=ビー(ベアトリス)はトイレへ駆け込むが、そこで洗面台の水をジーンズの股間にかけてしまう大失態。なんとか乾かそうととんでもない恰好でハンドドライヤーに股間を近づけて悪戦苦闘するビーの姿に、期待は確信に変わる。

ビーを演じるのはS.スウィーニー。最近急激に注目を浴びるようになった女優で、「マダムウェブ」にも出てたようである。確かにあの少女たちはかわいかったね。

よく考えれば、絶世の美女よりもくるくる変わるファニーフェイスの方がラブコメに合っているのも当たり前の話。物語が進むごとに、花咲く笑顔と愛らしいキャラクターが観る側に浸透して、魅力を最大限に押し上げる手筈になっているのだ。

トイレを終えて事なきを得たビーと、彼女を助けた男性=ベンは、店を出てから街を歩き、ベンの家へ行き、楽しい会話をしながら寝落ちして一夜を明かす。それは邪な気持ちなど一切ない、極めて自然で最高な時間だった。

しかしビーは、あまりにうまく行き過ぎた展開に怖気づいて、こっそりとベンの家を抜け出して帰ってしまう。彼女の気持ちが理解できないベンは、友人のピートに「最低な女だった」と愚痴を言うが、これを考え直して戻ってきたビーがうっかり耳にしてしまったから、さあ大変。

こうして書いていくとキリがないのでほどほどにしておくが、とにかく次から次へとベタの応酬である。主人公の男女は結ばれる運命にあるのに、良い方にも悪い方にも偶然過ぎることがこれでもかというほど起きる。

主人公の周りにも個性的なキャラクターが散りばめられる。ビーの元フィアンセ、ベンが昔フラれた元カノ、結婚式を挙げるビーの姉とベンの女友達、元カノのBFや結婚する二人の両親も含め、人種と個性と人間関係が入り乱れて混乱するがノリと勢いで突っ走っていく。

これでいい。これだからいい。でも、何でこの種の映画が最近なかったのか?と思うよりも、何故本作がこんなにヒットしたのかという疑問の方が大きいのは変わらない。

主人公のすぐ横に同性愛カップルを配置したとはいえ、グラマラスな肢体を持つビーと筋肉隆々のベンは、劇中の多くの場面で肌を露出し、典型的な女性と男性のアイコンとして機能しており、ビーが子供のころから結婚に憧れていたという設定もLGBTQ隆盛の逆を行っている。

実際S.スウィーニーは、最近ある映画プロデューサーから「美人でもないし、演技も下手なのになぜこれほど人気があるのか」と言われたそうで、この流れを理解できない、またはおもしろくないと思っている人は一定数いるのだろうと推察する。

それでも結果こそがすべて。こういう物語を欲している人たちが多くいることを証明したことは大きい。古典的なラブコメが好きなことも多様性に混ぜてもらってもいいじゃない。

(90点)
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