Con Gas, Sin Hielo

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「ローグワン/スターウォーズストーリー」

2017年01月21日 21時39分39秒 | 映画(2017)
潔く美しい使い捨て。


新しく誕生したトランプ大統領と真っ向から対立しているショウビズ業界。本作の舞台設定をみると、やはり考え方の根本が違うことを実感する。

1年前に公開されたエピソード7と同様に、主役を張るのは女性である。その程度ならよくあることだが、周りを固める同士たちがことごとくマイノリティであることに驚く。

もともと宇宙モノということで人間以外のクリーチャーも多く交じっているシリーズではあるが、人間側に黒人、東洋人、ネイティブアメリカンのような風体の人物を配する多様性推しは、時節柄新政権を挑発しているようにさえ映る。主人公のパートナーなんてヒスパニックだし。

それはさておき、既存の、しかもあまりにも有名なスターウォーズシリーズの真ん中に突然新たな物語をねじ込むという難易度が高い課題を、本作は見事にクリアしている。

特に、「新たなる希望」との繋がりにおいては、40年前の作品より世界を発展させない範囲で斬新な作り込みをしなければならないという縛りがあるのだが、そこは、帝国軍対反乱軍の知られざる前日譚を描く脚本が優れていた。

帝国軍が巨大な恐怖として君臨するベイダー卿の下で着々とデス・スターを完成に向かわせる中で、本作の反乱軍は真の統率者がおらずまったく力を持っていなかった。

そこに喝を入れて「新たなる希望」の輝ける功績へと結び付ける存在が今回の主役「ローグワン」というわけだ。

ジェダイたちが中心となって進む本家シリーズと同じ世界観を持ちながらも、存在はまったく一線を画している登場人物が何より魅力である。

盲目の東洋人は超越した力で敵と戦うが、彼の使う力は「なんちゃってフォース」である。口々に「フォースとともに」と言う割りには、劇中で本当のフォースを使えるのはベイダー卿だけで、故に彼の力が宇宙を制圧する脅威であることが明確に伝わってくる。

誰もフォースを使えないから、本家のクライマックスがフォースを使ったライトセイバーでの一騎討ちの印象が強い一方で、本作はもっと普通の人間的な戦闘になっている。

そして「新たなる希望」には誰一人として出てくるキャラクターがいないので、もったいない話と躊躇しそうな想いを断ち切って作中ですべてを整理している。

特に敵ではあるが、自分の指導で作ったデス・スターが上空にうっすらと姿を現すのを地上で確認する敵将の姿が、無力な人間を象徴していて切なかった。

改めて、課題の困難さを見極めた上で押さえる点と切り捨てる点を的確に判断し実行した制作陣の努力に敬意を表したい。

C.フィッシャーの冥福を祈る。

(80点)
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