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「大統領の執事の涙」

2014年02月16日 21時22分57秒 | 映画(2014)
移ろいゆく歴史の評価の暫定版。


「フォレストガンプ」がそうだった。ある人物の一生を、時代の出来事を映しながら描いていく手法。

高齢の方や近現代史に関心がある人にとっておもしろいのは当然。一方で主題は家族愛を軸にしているから、これもほぼ鉄板。米国で受けるのは容易に理解できる。

不遇な幼少期から感情を抑えながら一心に働き続けた執事・セシルの生涯は、それは美談である。

年齢が増すほどツボに入り込むF.ウィテカーの演技もさすがだが、実は共演陣もかなり豪華で興味深い。歴代の大統領を名の知れた役者たちが演じるのが本作の見どころであるのは確実だ。

ただ改めて思うのは、大統領というのは因果な商売だということ。それぞれのキャラクターは作られた時点の評価で決まってしまう。

作られた時点とは、すなわち2013年、バラク・オバマ政権下ということである。

簡単な印象を言えば、アイゼンハワーは歴史、ケネディは伝説、ジョンソンとニクソンは暗黒、フォードとカーターはスルー(!)、そしてレーガンは共和党でありながらも強いアメリカを体現したことでそれなりに評価されているというところ。

人種差別に苦しみ続けた黒人の歴史は、ケネディとジョンソンによって改善され、レーガン政権時に起きたマンデラ氏の解放をもってその呪縛を解かれ、ついにオバマの大統領就任で結実するというのが、本作で描かれる大まかな歴史になっている。

分かりやすいし感動的ではある。でも個人的に少し引っかかるのは、セシルが息子のルイスと和解するところで、セシルが全面譲歩したように見えるところだ。

もちろん作品全体としてセシルの生き方を否定しているわけではない。寧ろ十分に敬意を払って描いている。

でも、セシルだって彼なりに長い間闘い続けてきたわけで、リタイア後にルイスのやり方にすり寄るようにはしてほしくなかったのが正直なところだ。

物事には、容易に結論を求めるべきでないものもある。そうしたものに対して、一部の正しいと信じ込む人たちが一方的に要求を押し付けようとすることを、これこそが唯一の正しい道と解釈されかねないのはミスリードだと思う。

あと、オバマの成果って、就任したことのほかに何があるのかというところも気になったかな。

それにしても、これまた仕方がないとはいえ邦題がベタです。

でも、狙っている層が分かりやすいし、自分が宣伝部にいてもゴーサイン出しちゃうだろうな。あの「涙」は何を指しているのか問われても、それは物語全体ですとしか言いようがないけど。

(75点)
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