生命を吹き込む荘厳な儀式。
R.ゼメキス監督ももう60歳を超えた。「バックトゥザフューチャー」から30年経ったのだから当然ではあるが、大成功を収めた「フォレストガンプ」以降は、あまり作品を発表していない印象がある。
それでも新しい技術を駆使して見たことのない映像を創り出そうという志向は変わらないようで、今回は超高層ビルの間を綱渡りする主人公フィリップの物語を、視覚効果をふんだんに使い表現してみせた。
舞台は、あのワールドトレードセンター。1973年にツインタワーとして完成したその当時に起きた出来事である。
映画は、フィリップが過去を述懐する形式で進む。綱渡りに魅せられた彼が、いかにしてNYの上空400mを歩くに至ったのか。
綱渡りの技術を磨いたり、新たな友人と出会ったりする場面は青春ものかスポーツものだが、NYへ渡って作戦実行段階に移ると、犯罪サスペンスの色を帯びてくるところがおもしろい。
冷静に考えれば、とにかく無茶な計画だ。映画のストーリーとしてはあり得るが、それ以前に実話なのだから驚くし、実現までに起きる出来事もドラマティックな展開の連続である。
そして迎えるクライマックス。明るさが増してくる空は、地上の喧騒とはまるで別世界。そしてフィリップは、その中空へ1歩を踏み出す。
劇中で、(綱渡り)事件が起きて初めてタワーが人々に温かく迎えられるようになったという言葉があった。
その後数奇な運命を辿るこのタワーだが、形は非常に無機質な細長い四角い箱である。綱渡りは、その箱に生命を吹き込むセレモニーであったのだ。宙に浮かぶように綱を渡るフィリップの神々しさがそれを物語っている。
ラストはツインタワーのシルエット。その建物は、30年近くに渡ってNYの象徴として人々に愛された。映画はタワーに捧げる鎮魂歌でもあった。
(75点)
R.ゼメキス監督ももう60歳を超えた。「バックトゥザフューチャー」から30年経ったのだから当然ではあるが、大成功を収めた「フォレストガンプ」以降は、あまり作品を発表していない印象がある。
それでも新しい技術を駆使して見たことのない映像を創り出そうという志向は変わらないようで、今回は超高層ビルの間を綱渡りする主人公フィリップの物語を、視覚効果をふんだんに使い表現してみせた。
舞台は、あのワールドトレードセンター。1973年にツインタワーとして完成したその当時に起きた出来事である。
映画は、フィリップが過去を述懐する形式で進む。綱渡りに魅せられた彼が、いかにしてNYの上空400mを歩くに至ったのか。
綱渡りの技術を磨いたり、新たな友人と出会ったりする場面は青春ものかスポーツものだが、NYへ渡って作戦実行段階に移ると、犯罪サスペンスの色を帯びてくるところがおもしろい。
冷静に考えれば、とにかく無茶な計画だ。映画のストーリーとしてはあり得るが、それ以前に実話なのだから驚くし、実現までに起きる出来事もドラマティックな展開の連続である。
そして迎えるクライマックス。明るさが増してくる空は、地上の喧騒とはまるで別世界。そしてフィリップは、その中空へ1歩を踏み出す。
劇中で、(綱渡り)事件が起きて初めてタワーが人々に温かく迎えられるようになったという言葉があった。
その後数奇な運命を辿るこのタワーだが、形は非常に無機質な細長い四角い箱である。綱渡りは、その箱に生命を吹き込むセレモニーであったのだ。宙に浮かぶように綱を渡るフィリップの神々しさがそれを物語っている。
ラストはツインタワーのシルエット。その建物は、30年近くに渡ってNYの象徴として人々に愛された。映画はタワーに捧げる鎮魂歌でもあった。
(75点)
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