Con Gas, Sin Hielo

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「おとなのけんか」

2012年03月10日 23時41分31秒 | 映画(2012)
笑えない立場を笑い飛ばす。


傑作舞台劇の映画化との触れ込み。確かに舞台は1軒の家の中で、回想もなく2組の夫婦による会話のみ。脚本の充実度と役者の技量があって初めて成り立つ構成であるが、まあとにかくおもしろい。

ひととおり「おとな」なやり取りを交わして切り上げるつもりだったのに、個性のまったく異なる4人が唯一共有していた方向性に微妙なズレが次々に生じて収拾がつかなくなってしまう。

大人っていうのは、時間を費やす中で成長したつもりになっているものの、逆に単なる面倒な人間になってしまっていることが往々にしてある。更に悪いことには、たいていの大人がそのことに気付いていない。子供もハムスターもそんなこと知ったこっちゃないという、飄々としたエンドロールが洒落ている。

演じる4人は「さすが」という言葉がぴったりだ。体裁を繕うよそ行きの表情、でもその中にどうしても垣間見えてしまう困った要素。4者4様ながら、それぞれが非常にリアルなものだから、身につまされるを通り越して笑いがこみ上げる。

4人もそうだが、現代社会は「謙虚」の大切さが軽んじられている気がしてならない。「学びて然る後に足らざるを知る」などとは考えず、とにかく権利を主張する。何故自分が思うような方向に進まないのかと他者へ矛先を向ける。

本心にそうした思いがある限り、いくらうわべで取り繕うとしても少し掘り下げれば隠れていた刃が顔を出す。そんなひりひりした状態で綱渡りを続けるのが「おとな」の世界なのだ。原題の"Carnage"を調べると、「殺戮」や「虐殺」といったおどろおどろしい言葉が意味として出てくる。

よくよく考えれば絶対笑えない。でも、どうにもならない問題は笑い飛ばすしかない。

(85点)
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5 コメント

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Unknown (mig)
2012-03-11 09:50:38
もともと密室劇好き、この監督の映画好きなんですが、これは舞台の映画化ってことで脚本は完璧でしたね。
それに巧い役者が揃って、ほんと笑わせてもらいました。ヴァルツさんの他のもぜひ観て下さいネ

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まりこ (mariko789w@yahoo.co.jp)
2012-03-11 21:03:33
はじめまして!ヾ(〃 ̄ ̄ ̄ ̄▽ ̄ ̄ ̄ ̄〃)ノ ハロハロー♪ 初めてコメント残していきます、おもしろい内容だったのでコメント残していきますねー私もブログ書いてるのでよければ相互リンクしませんか?私のブログでもあなたのブログの紹介したいです、私のブログもよかったら見に来てくださいね!コメント残していってくれれば連絡もとれるので待ってますねーそいじゃ゜.+*´Д`*+.゜´Д`*+.゜´Д`*+.゜アドレス残していくのでメールしてね!そいじゃ゜.+*´Д`*+.゜´Д`*+.゜´Д`*+.゜
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人間って、、、。 (mezzotint)
2012-03-12 10:55:09
クラムさん

こんにちは。何だかかんだ言っても、
結局は理屈よりその内に秘めたる心理って
大人であっても幼稚な部分ってありますよね。
まさにそれが、爆発したような気がしたように
思いました。
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密室劇の醍醐味 (クラム)
2012-03-18 09:37:44
migさん、おはようございます。

密室劇といえば「十二人の怒れる男」を思い出します。
話の切り口は違えど、登場人物間の均衡が目まぐるしく移り変わる様は共通しており、
観る側の目を釘付けにしてくれました。
C.ヴァルツ、次を楽しみにしたいと思います。
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見かけはおとな、中身は? (クラム)
2012-03-18 09:43:45
mezzotintさん、おはようございます。

これって決して他人事と決め付けられる話ではないですよね。
冷静沈着、クールな「おとな」でありたいと思いつつも、
たまに(「ときどき」ではないと思う)感情がつい表に出てしまう時がある。
ほとんどの人がそうじゃないかと思うんですよね、人間だもの(みつを)。
で、案外それで問題なかったりもするわけです(本日も反省の色なし)。
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