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「キングスマン:ファーストエージェント」

2021年12月27日 22時46分38秒 | 映画(2021)
国でできないからこその民間活力。


数度に渡る公開延期を経てようやく日の目を見ることになった本作は、完全独立の民間スパイ組織「キングスマン」誕生の秘話に迫るというもの。

第一次世界大戦の時代まで遡るので、これまでのシリーズ出演者は一切出てこない。だけでなく、シリーズ第1作の「キングスマン」で大ウケだった不謹慎系なネタも控えめで、重厚ささえ感じるほど作品の趣きが違っていた。

世界史は苦手教科だったので設定がどれだけ史実をなぞっているか分からないのだが、英国国王と敵対国のドイツ、そして革命直前のロシアの皇帝がいとこ同士だったとか、スケールがやたら大きい。

「キングスマン」の創設者であるオックスフォード卿が本作の主役。名家の当主として、国王へ様々な進言を行うほか慈善活動に熱心な側面も見せる一方で、彼が貫いてきたのは徹底した非戦の平和主義であった。

しかし20世紀初頭といえば今以上に世界が混沌としていた時代。上述のいとこ同士は策を巡らせながら覇権争いを繰り広げており、オックスフォード卿は英国の繁栄のために自身の信条を現実に適応させることを余儀なくされる。

ハイテクがない中での諜報合戦が、最近のスパイもの、アクション映画と一線を画していて興味深い。

技術がないならば人海戦術とばかりに、使用人のネットワークを世界中に張り巡らせて情報収集する彼ら。使用人ということで黒人と女性が登場し大活躍するという、物語の制約を逆手にとって現代のポリコレ方面までクリアしてしまう荒業には感心した。

そしてオックスフォード卿が終始一貫していたのが反戦の決意であった。あまりに頑なな姿勢が劇中で不幸な出来事を招くことになるのだが、その流れを含めてなお、映画は平和を求めることの重要性を説いている。

そのためには時に戦いも覚悟しなければならない。これが欧州人の考えであり、良し悪しではなく、戦いの歴史を持っているかどうかでこの辺りは決まっていくのだろう。

こうした組織があってほしいと思う一方で、現代は莫大な集中投資ができる彼の国に既に牛耳られてしまっているのではという一抹の不安を感じた。

(75点)
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