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「ウィンストンチャーチル/ヒトラーから世界を救った男」

2018年04月15日 15時38分01秒 | 映画(2018)
これは歴史の備忘録。


備忘録とは、筆者が事実に即して書いた記録であるが、必ずしもそれが事実であるかどうかは分からない。

第二次世界大戦前後の世界史は学校であまり教わった覚えがない。だから、ヒトラーやムッソリーニは映画等で知るかぎり極悪人であり、連合国側の指導者はそれに打ち勝った英雄というくらいの認識しかないのが正直なところだ。

ナチスの猛攻を受けて圧倒的な劣勢に立たされていた英国において、首相の座を託されたチャーチルとはどのような人物で、いかに難局を乗り越えることができたのか。

本作が描くのは首相就任から約1か月の期間。短期間ではあるが、おそらくチャーチルにとって最も苦しかった日々。それが原題の"Darkest Hour"に現れている。

紛糾する英国議会から映画は始まる。戦時の挙国一致内閣を訴えて時の首相に辞任を迫る野党。勢いに押されたチェンバレン首相は退陣し、野党が受け入れ可能な首相として、海軍大臣だったウィンストン・チャーチルを指名する。

チャーチル首相の誕生は初めから波乱含みであった。弁は立つが、過去には大きな失政も犯しており、首相としての手腕は心許ない。それに加えて、映画の冒頭では、すぐに癇癪を起こして女性秘書にパワハラをするような人物として描かれる。

首相に就任してからは、「英国は決して降伏しない、戦い続けろ」との姿勢を貫いた。フランス戦線の状況が芳しくなくとも、国内向けに大本営発表を行い、ダンケルクの海岸に追い詰められた36万人の兵を助けるために、別動隊に命を差し出して囮になることを強要した。

TOHOシネマズデイということもあって劇場は満員だったが、観客はこの物語をどう捉えたのかがとても気になった。

現代人は結果を知っている。ヒトラーは極悪人であるから、歴史的に見れば和解を結ぶ選択をしようとしたチェンバレン前首相たちの考えが間違いだという前提で見る。

しかし、映画の中に自分を置くかぎり、チェンバレンや、重鎮のハリファクス伯爵が完全におかしいとは思えなかったし、チャーチルの判断の方が直感的でとても危うく映った。

例えばヒトラーを金正恩に置き換えてみよう。チャーチルの判断が正しいと思った同じ人が、彼と和解の話し合いをすることに対してどのような意見を持つだろうか。

クライマックスに差し掛かる場面、チャーチルは公用車を降りて地下鉄に乗る。彼は、乗り合わせたたった1両の乗客に、たった1駅の移動の間に聞いた話をもって、重大な政治的判断を行う。

さすがにフィクションだろうと思う。映画的演出に違いないが、近い事実があったとしたらこれは究極のポピュリズムである。

人は舞台設定を変えれば、同じ状況でも違う決断を下す。本作を観るかぎり、第二次世界大戦はたまたまことがうまく運んだ歴史としか思えなかった。判断は慎重に行わなければならない。

主演男優賞を受賞したG.オールドマン。感情の激しい彼の一挙手一投足が本作の肝なので、超がつくくらいのアップで映される場面が多かったが、これもアカデミーのメイクアップで栄冠に輝いた辻一弘さんの特殊メイクは完璧だった。

(70点)
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