Con Gas, Sin Hielo

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「君への誓い」

2012年06月10日 22時21分13秒 | 映画(2012)
積み重ねる時間の尊さ。


実話に基づいたストーリーという下りはよく聞くし、記憶喪失という事象も遥か昔から使われている鉄板だ。

それでもこの物語が陳腐に感じられないのは、もちろん妻・ペイジ役をR.マクアダムスが演じているからと、あとひとつ、夫・レオが独白する人生観に共感するところがあったからだと思う。

人生には決定的瞬間が訪れる時がある。大きなうねりの前では、それまで積み重ねてきた時間は何の力も持たない。

交通事故に遭ったペイジは、ある瞬間以降の記憶をすべて失う。そこにはレオと過ごしたすべての時間が含まれており、力を持つどころかペイジの中にレオは存在すらしなくなってしまった。

かつての漫画「キャッツアイ」の最後で、記憶を失った瞳に対して「こんなすばらしいことはない。瞳ともう一度恋ができるなんて」と俊夫が言う場面があるが、この映画では、前のフィアンセに思いを寄せている時点で記憶が途切れているなど、なかなか状況は複雑で厳しい。

何て理不尽なと思いそうになるが、そこにも当然意味はあった。記憶が切れる瞬間こそがペイジの人生の分岐点であり、その後の時間の積み重ねで必然的にレオと出会うことができたのだ。

ペイジの両親の立場になって考えてみるのも興味深い。ある時、突然針路を大きく変えて自分らの元を離れていった娘が、突然その時点まで戻ってきたのである。

例えば新興宗教にハマってしまったなんて状況だったら、それは全力でもう娘は離すまいとするだろう。

しかし、謎解きのような展開で明かされるペイジの分岐点。改めて過酷な事実と向き合ったペイジの行動が興味深い。

前回は両親と完全に絶縁してしまったのに対し、今度は、一緒に住むことこそやめるが、父の計らいで再入学した法学校に通いながらゆっくり人生を見つめ直すのだ。

そして彼女の新しい人生の選択に大きく影響するのが、記憶にはないが記録として残っていたレオとの誓いの言葉だった。

大きなうねりの前では無力かもしれない日々の積み重ね。それでもそれはいまの自分を確立したすべてであり、一つとして無駄な瞬間はないのである。

「シャーロックホームズ シャドウゲーム」「ミッドナイトインパリ」ではちょっと残念な役回りだったR.マクアダムスは、今回はヒロインとして本来の輝きを存分に発揮しており、そんな彼女の姿を拝めるだけでも個人的には観る価値ありだった。

(80点)
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