Con Gas, Sin Hielo

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「デッドドントダイ」

2020年06月07日 14時15分02秒 | 映画(2020)
ほぼ公平に因果応報。


先週に引き続いて、ゾンビである。自分の選択ながら、20世紀末よりも世界の終末観が増しているのを実感する。

本作のウリは、あのJ.ジャームッシュ監督がゾンビ映画を撮るということである。個人的にはこれまでピタッとハマる作品に出会ってはいないが、何と言っても巨匠である。今回も多くの著名な俳優陣が名を連ねている。

センターヴィルは、時代から取り残されたようなアメリカの田舎町。活気はないが日々は平和で、高齢の住人は町に1軒だけあるダイナーに立ち寄るのを日課とする。

そんな何の変哲もない町の墓地から死体が蘇り、ダイナーの店長と従業員が惨殺される。小さな警察署に勤務する3名の警察官が駆け付け、そのうちの一人・ロニーがつぶやく。「これはまずい結末になる」。

本作に登場するゾンビは最近流行りのウィルス性、敏捷なものではなく極めて古典的で、墓場の中から蘇り、のろのろ歩く。ただそれぞれが何らかの欲求に突き動かされているらしく、コーヒーを欲しがったり、Wi-Fiを求めたり、DIYの店に押しかけたりする。

タイトルでもあり劇中に頻繁に流れる歌の題名でもある"The Dead don't Die"。うろ覚えだが、「この世の後には、あの世があるから」なんて歌詞もあったように記憶している。

欲望を持って他人の迷惑、将来の心配など顧みずにうろうろするゾンビたちは、現世に生きる人間たちと基本的には同根だ。その意味からも、警察官だろうが、都会の旅行者だろうが、差別主義者であろうが、何らかの欲を持っている者たちは、本作の中で公平に裁かれる。いや、あの世へと導かれると言った方がいいかもしれない。

極めつけは、T.スウィントン演じるゼルダである。意味ありげに描き続け、常にオーラをまとっている彼女の最後の場面は、この映画最大のギャグであり、同時に我々を突き落とす。

この映画を検索すると「文明批評」という言葉が目に留まる。行き過ぎたなんとかの結果、というのは実に分かりやすい。コロナパニックもそう。自然の摂理からすれば、物事には必ず逆バネが働くんだよなーと、思いながらも「新しい生活様式」へ移行するのはそう簡単ではない。

(80点)
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