Con Gas, Sin Hielo

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「ホイットニー~オールウェイズラヴユー~」

2019年01月19日 16時22分10秒 | 映画(2019)
誰も救おうとしなかった。


ともにショウビズ界の歴史に残る大スターであるにも拘らずこの差は何だろう。

「ボヘミアンラプソディ」は空前の大ヒットとなり、世の中は何度めかのクィーンブームに沸いている。一方で本作は陽の光を避けるようにひっそりと限定公開されているに過ぎない。

内容も対照的だ。前者がエンターテインメント性に優れ観た人の気持ちを高揚させるのに対し、本作は記録映像とインタビューを織り交ぜたドキュメンタリーであり、至るところで音楽が流れているのにまったく娯楽性を帯びずに心が荒涼とするばかり。

観る前に抱いていた印象は大雑把に言えば、映画「ボディガード」で頂点を極めたW.HoustonはB.Brownの結婚のあたりからドラッグに溺れるようになったというもの。

米国社会は、銃規制に消極的なトランプ政権を声を荒げて批判をするのに何故薬物には甘く、むしろPV等で公然とドラッグ常用を想起させるパフォーマンスをするのかずっと疑問に思っていた。

しかしこの映画を観て感じたのは、あまりにも深いところに根差している問題への絶望だった。

80年代半ばにすい星のごとく登場した彼女の陰には、既にその後の破滅を招くすべてが存在していた。人種、性別、家庭・・・。世の中にあるすべての障壁をまとっていたと言っても過言ではない中で、彼女は幼い頃からドラッグ常習者であった。

彼女の才能を見込んで育て上げた母や、チームとしてビジネス面を支えた父や兄らが登場してそれぞれの見解を語るのだが、言葉を聞けば聞くほど彼女の才能を吸い取って生きてきたようにしか見えなかった。

もちろん仕方のない部分はある。黒人差別が残る中で貧困から抜け出そうとしたら並大抵のことではかなわない。

エピソードとしてM.Jacksonとときどき会って何も言わずに長い時間を過ごしていたということが挙げられていた。二人は黒人の地位向上に貢献しながら孤高の存在だったという共通点があった。

悲劇的な死で幕を閉じた彼女の人生だが、その功績が色あせることは決してない。シングルチャート7作連続1位は、現在の集計方式やリリースの傾向を見るかぎり永遠に破られない記録として残るだろう。

ただやはり悔やまずにはいられない。誰か助けられる人はいなかったのか。キーパーソンと思われる同性の女性はインタビューに出てこなかった。「ボヘミアンラプソディ」でフレディを救ったような家族や友人がいれば、大きなステージで再びスポットライトを浴びる姿を見られたかもしれなかったのに。

(70点)
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