地球規模のナイトスクープ。
いつものようにFMを聴いていると、流れてくる中で1曲だけ妙に耳に残る曲があった。
曲名は"SUGAR MAN"。アーティスト名は"Rodriguez"とある。当然知らない。
それからしばらく経って、あるサイトの映画紹介を眺めていたら、今度は「シュガーマン」という題名の映画に目が止まった。
なんと先日発表されたアカデミー賞の長編ドキュメンタリー部門を受賞し、日本では3月16日とのこと。運命と言うには大げさだけど、導かれるようにさっそく映画館へと足を運んだのであった。
ドキュメンタリーは、もちろん構成などの部分も重要ではあるけれど、最大の肝は何と言っても題材となる事象がどれだけ力強いかにある。
そういう面で、この一人のアーティストを巡る真実の話は圧倒的だ。
当初、「奇跡に愛された男」という邦題にはあまり共感できなかった。原題は"Searching for Sugar Man"、単に「シュガーマンをさがして」である。
「奇跡」の安売り感が嫌だったし、そもそも米国本土で売れなかった人物が奇跡に「愛された」と言えるのか合点がいかなかった。
しかし、映画の前半で明らかにされる彼を取り巻く環境を見聞きするにつれ、確かに彼と彼の曲は運命的な何か、即ち「奇跡」に導かれたのかもしれないと思うようになった。
彼を発掘し売り出そうとした人たちは、彼の佇まいや綴る歌詞に光るものを感じていた。メロディーやヴォーカルも先述の通り、他とは明らかに違う人を惹きつける要素を持っていた。
でも売れなかった。それは彼がヒスパニックだったことが影響していたのか、結果として米国のこの時代(70年代初頭)は彼を求めなかったのだ。
一方、当時の南アフリカはアパルトヘイトの嵐が吹き荒れていた。文化的に鎖国状態だったこの国に入ってきた、素性は知れないが心に真っ直ぐ訴えかける曲。口コミに近い形で評判が全土に広がり、推定売上50万枚を超える国民的大ヒットになったのだ。
米国で売れなかったこと、南アフリカで売れたこと、そうした要素が根底にある時代に彼が世の中に作品を発出したこと、それぞれが細い1本の糸で繋がれたような奇跡に近い出来事だった。
そしてこの映画の本筋である、この売れなかったアーティストの消息を訪ねる旅が、また感動的な物語を紡ぐのである。
彼の消息については、ちょっとしたサスペンス仕立てにもなっていて、詳細に書くとネタバレ的になるのでやめておくが、後半に描かれる1998年以降は、売れた売れない、生きている生きていないとは全く違う次元の話となっていて、これも非常に興味深い。
人はいかにして生きていくのか。正しいこと、守るべきこと、重要なこと。Rodriguezという一人の男の人間性を通して改めて考える気にさせられた。
今は全世界が即時に繋がる情報社会。南アフリカも、今やW杯が開催されるなど世界が注目する経済新興国になった。やはり彼のような存在が再び現れることは考えにくい。
(85点)
いつものようにFMを聴いていると、流れてくる中で1曲だけ妙に耳に残る曲があった。
曲名は"SUGAR MAN"。アーティスト名は"Rodriguez"とある。当然知らない。
それからしばらく経って、あるサイトの映画紹介を眺めていたら、今度は「シュガーマン」という題名の映画に目が止まった。
なんと先日発表されたアカデミー賞の長編ドキュメンタリー部門を受賞し、日本では3月16日とのこと。運命と言うには大げさだけど、導かれるようにさっそく映画館へと足を運んだのであった。
ドキュメンタリーは、もちろん構成などの部分も重要ではあるけれど、最大の肝は何と言っても題材となる事象がどれだけ力強いかにある。
そういう面で、この一人のアーティストを巡る真実の話は圧倒的だ。
当初、「奇跡に愛された男」という邦題にはあまり共感できなかった。原題は"Searching for Sugar Man"、単に「シュガーマンをさがして」である。
「奇跡」の安売り感が嫌だったし、そもそも米国本土で売れなかった人物が奇跡に「愛された」と言えるのか合点がいかなかった。
しかし、映画の前半で明らかにされる彼を取り巻く環境を見聞きするにつれ、確かに彼と彼の曲は運命的な何か、即ち「奇跡」に導かれたのかもしれないと思うようになった。
彼を発掘し売り出そうとした人たちは、彼の佇まいや綴る歌詞に光るものを感じていた。メロディーやヴォーカルも先述の通り、他とは明らかに違う人を惹きつける要素を持っていた。
でも売れなかった。それは彼がヒスパニックだったことが影響していたのか、結果として米国のこの時代(70年代初頭)は彼を求めなかったのだ。
一方、当時の南アフリカはアパルトヘイトの嵐が吹き荒れていた。文化的に鎖国状態だったこの国に入ってきた、素性は知れないが心に真っ直ぐ訴えかける曲。口コミに近い形で評判が全土に広がり、推定売上50万枚を超える国民的大ヒットになったのだ。
米国で売れなかったこと、南アフリカで売れたこと、そうした要素が根底にある時代に彼が世の中に作品を発出したこと、それぞれが細い1本の糸で繋がれたような奇跡に近い出来事だった。
そしてこの映画の本筋である、この売れなかったアーティストの消息を訪ねる旅が、また感動的な物語を紡ぐのである。
彼の消息については、ちょっとしたサスペンス仕立てにもなっていて、詳細に書くとネタバレ的になるのでやめておくが、後半に描かれる1998年以降は、売れた売れない、生きている生きていないとは全く違う次元の話となっていて、これも非常に興味深い。
人はいかにして生きていくのか。正しいこと、守るべきこと、重要なこと。Rodriguezという一人の男の人間性を通して改めて考える気にさせられた。
今は全世界が即時に繋がる情報社会。南アフリカも、今やW杯が開催されるなど世界が注目する経済新興国になった。やはり彼のような存在が再び現れることは考えにくい。
(85点)
他で「シュガーマン」の記事を読む時、ロドリゲスの英語表記を見た記憶がないんですが、なるほどRodriguezですか。ロドリグゥエーZ、ロケットパンチ出しそうだ。滅多にないかっこいい生き方を見た気がしますね(ロケットパンチは出さなくてもね)。
ロドリゲス、ヒスパニックに多い名前ですね。
MLBでスーパースターから一転、すっかりダーティーなイメージが定着したのはAlex Rodriguez。
同じ名前でも、生き方にはだいぶ人間性の差が付いてしまっています。