Con Gas, Sin Hielo

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「新感染 ファイナルエクスプレス」

2017年09月18日 00時35分34秒 | 映画(2017)
愛と絶望のZ-TRAIN。


立川で映画を観るのは、あの「マトリックス」以来だからだいたい20年ぶりくらいだろうか。チェーンのシネコンが大勢を占める中で、シネマシティは本当に健闘している。今回ここを選んだのは、立川名物の爆音上映があるからだった。

予告から底割れしそうな振動を伴う音響が鳴り響く。もちろん段々と慣れてしまうのだが、内装も清楚でキレイだし、次は20年と言わずに機会があったらまたぜひ訪れてみたいと思った。

さて、本篇であるが、韓国映画界渾身のパニックホラー大作である。これまた20年近く前になるだろうか。硬派大作の「シュリ」から韓国エンターテインメントの扉が開かれ、韓流ブームを経て、現代は充実期とでも言えばいいのか、質の高い作品が定期的に輩出されるようになった(もちろんへんてこな反日映画は除いてではあるが)。

本作は、感染パンデミック系のいわゆるゾンビムービーだ。全速力で追いかけてくるゾンビはすっかり見慣れたし、大筋の話として特に目新しいものはない。

しかし本作が明らかに優れている点が2つある。それは、高速鉄道の車両内を主な舞台としたこと、そして大災害に見舞われる乗客のサイドストーリーを丁寧に組み立てたことだ。

新幹線を世界に売り込む鉄道技術大国としては、この手の作品はぜひわが国で実現させてほしかったが、なかなかどうして韓国もたいしたもので、車両という細長くて狭い独特な形の空間を生かした数々のアイデアは素晴らしいものばかりだった(ちなみに新幹線が舞台だったら自動ドアでみんな即アウトとなるだろう)。

時々とてつもない体力を発揮する主要キャストたちにツッコミたくなることもあったが(ほぼ素手で感染者たちを蹴散らしたり、身重の女性がアスリート顔負けに全速力で走ったり)、全篇を通して絶望感が支配していることもあり、気持ちが醒めることなく応援し続けることができた。

登場人物の設定は更に良かった。証券会社で働く人間味の薄いソグが、パニックの中で必死に娘を守ることで浄化されていく経過を主軸として、乗り合わせた老若男女様々な人間模様を分かりやすく描く。

誰にも命を懸けて守りたいものがある。観る側が共感したところで無慈悲に襲いかかる感染者。ひとつひとつの関係が引きちぎられていく切なさと悔しさが何にも増して心に迫る。

物語の作り込みは基本のはずだが、やっぱり普通のアクション作品はその辺を二の次にしていることが多いということなのだろう。

最後の場面の「それを持ってきたか」感も収まりとして言うことなし。あれでは涙腺はもたない。

(90点)
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