耐えられない退屈が心を壊す。
1920年代のアイルランド。イニシェリン島は、本土が見渡せるほどの距離に浮かぶ島であるが、耕せる農地があるわけでもない荒涼とした景色の中で、人々は細々と暮らしていた。
海の向こうでは内戦が繰り広げられており、時折砲弾が着弾する音が聞こえてくるが、島民たちはまったく意に介さず。主人公のパードリックをはじめ男たちは、することがないから昼間からパブに繰り出して酒を飲む。
そんな、豊かではないが至って平和な島に事件が起きる。
パードリックの飲み友達であったコルムが、ある日突然パードリックに絶交を言い渡したのだ。
嫌がるコルムに無理やり理由を聞くと、パードリックの無駄話に付き合うことで人生の貴重な時間を失っていると気付いたからだと言う。
楽しく飲んでいると思っていたのに。突然の告白に驚くパードリック。でも周りの意見を聞いてみると、どうやら自分は「いい人だけど退屈」というキャラクターで固定しているらしい。
しかし、いくら絶交しようにも島は狭すぎてどうしても日常的に顔を合わせる。その度ごとにパードリックの心は乱れ、異常に険悪な関係はエスカレートしていく。
実は50代も半ばになると、コルムの気持ちが分からないでもない。時間があるときに、ふと、残された時間、限りある時間を有意義に使わないとと、ある意味急かされたように思うことがある。
誰も忙しいときにはそんなことは考えない。考える余裕がない。むしろ、なんでこんなに忙しいのだろうと愚痴を言うかもしれない。
しかし不思議なもので、いざゆとりが出てくると、それが物足りなく感じる場合がある。コルムは言う。「作品を残すことで人は記憶に残る。いい人は誰の記憶にも残らない」。
自分は何故ここにいるのか。この世に生まれてきたのか。考えはじめてしまったら、それはもう出口のない迷路だ。
パードリックの妹・シボーンは、兄のことを心配する思いもあって島にとどまっていたのだが、悪意の塊のような島民たちに我慢が限界に達し、ひと晩泣いた後でついに島を出て行く。
過疎の町を捨てて行く人たちは、必ずしも都会に憧れて出て行くわけではない。退屈に飲み込まれるのが怖いから逃げるのだ。たとえそこが内戦の地だとしても。
(75点)
1920年代のアイルランド。イニシェリン島は、本土が見渡せるほどの距離に浮かぶ島であるが、耕せる農地があるわけでもない荒涼とした景色の中で、人々は細々と暮らしていた。
海の向こうでは内戦が繰り広げられており、時折砲弾が着弾する音が聞こえてくるが、島民たちはまったく意に介さず。主人公のパードリックをはじめ男たちは、することがないから昼間からパブに繰り出して酒を飲む。
そんな、豊かではないが至って平和な島に事件が起きる。
パードリックの飲み友達であったコルムが、ある日突然パードリックに絶交を言い渡したのだ。
嫌がるコルムに無理やり理由を聞くと、パードリックの無駄話に付き合うことで人生の貴重な時間を失っていると気付いたからだと言う。
楽しく飲んでいると思っていたのに。突然の告白に驚くパードリック。でも周りの意見を聞いてみると、どうやら自分は「いい人だけど退屈」というキャラクターで固定しているらしい。
しかし、いくら絶交しようにも島は狭すぎてどうしても日常的に顔を合わせる。その度ごとにパードリックの心は乱れ、異常に険悪な関係はエスカレートしていく。
実は50代も半ばになると、コルムの気持ちが分からないでもない。時間があるときに、ふと、残された時間、限りある時間を有意義に使わないとと、ある意味急かされたように思うことがある。
誰も忙しいときにはそんなことは考えない。考える余裕がない。むしろ、なんでこんなに忙しいのだろうと愚痴を言うかもしれない。
しかし不思議なもので、いざゆとりが出てくると、それが物足りなく感じる場合がある。コルムは言う。「作品を残すことで人は記憶に残る。いい人は誰の記憶にも残らない」。
自分は何故ここにいるのか。この世に生まれてきたのか。考えはじめてしまったら、それはもう出口のない迷路だ。
パードリックの妹・シボーンは、兄のことを心配する思いもあって島にとどまっていたのだが、悪意の塊のような島民たちに我慢が限界に達し、ひと晩泣いた後でついに島を出て行く。
過疎の町を捨てて行く人たちは、必ずしも都会に憧れて出て行くわけではない。退屈に飲み込まれるのが怖いから逃げるのだ。たとえそこが内戦の地だとしても。
(75点)
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