Con Gas, Sin Hielo

細々と続ける最果てのブログへようこそ。

「ゴールデンスランバー」

2010年01月31日 00時16分48秒 | 映画(2010)
あのころの絆。取り戻そうとするイメージ。


伊坂作品は原作を読んだこともなく、映画も昨年「重力ピエロ」を観たのみである。

でも何かこれ特徴じゃないかなと思ったのは、一見荒唐無稽と思えそうな舞台設定と細かな伏線を張り巡らせた筋書きだ。

総理大臣が市街でパレードだとか、アイドルを助けてヒーローになった宅配業者だとか、およそ現実社会では起こり得ない話なのだが、それでも進むうちに引きつけられるし、むしろそのあり得ない設定からも効果的に要素を引き出していく。

本作はファンの間でも最も映像化に向いていると言われているそうで、確かに圧倒的な苦境に立たされる主人公が生き延びいていく仕掛けには感心させられることしきりだった。

特にクライマックスから先は、以前の様々な場面へつなぐ糸が放出される。まさに次々に打ち上がる花火のごとし。たいへんよくできました。

あと好感が持てたのは、主人公・青柳と周りの人々がスーパーヒーローとは程遠い無力の人間であったこと。

青柳ができるのはとっさの大外刈りくらいだし、友人や同僚も力がない故に青柳の信頼に応えられないどころか、苦境に陥れるきっかけになってしまう有様。

ただみんなの救いたいという気持ちがかろうじて青柳を逃げ続けさせたというところがすばらしい。力はなくとも繋がっているというイメージが人を強くすることもあるのだ。

青柳を演じたのは絶好調の堺雅人。大河ドラマ「新選組!」では剣の達人・山南を演じたが、風貌は武闘派とは程遠い。原作はともかくハマり役だったと思う。

竹内結子は置いておいて、脇を固める俳優陣も役柄と相まって個性的でおもしろかった。特に永島敏行は怪演だった。

そして、仙台である。

いくら遠い昔とはいえ、25年べったり張り付いて暮らしていた土地だ。どこの建物だとか、どこを走っているとか、そりゃ結構分かるよ。

母親から聞いていたとおり実家のマンションも登場した。一瞬。分かる人には分かるってとこかな。

無理のない逃亡ルートという触れ込みだったけど、やっぱり切り貼りはあるんだね。

黄色い廃車が放置されていたところは小学校まで住んでいた家の近くだ。ちなみに八木山動物園やベニーランドとはかなり離れた場所である。

でも劇中で、昔の思いに巡らせるときは、誰か同じ思いを持っている者がいるみたいなことを言っていたと記憶しているが、自分自身、昨年から急に仙台に縁があることが増えてきた実感がある。

あのころの仲間もそんな思いでこの映画を観るのかもしれない。

(85点)
コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「ラブリーボーン」 | トップ | 「恋するベーカリー」 »
最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
こんばんは、お久しぶりです (パピママ)
2010-02-04 00:36:02
コメントありがとうございました。
引越しされたのですね。
ブログのタイトルも変えて、新規一心ですね。
この映画は中々内容も充実していて、最後までハラハラしどうしで面白かったです。
あの、七夕の前夜祭で上がる花火は綺麗でしたね。思いがけない花火の使い方にも感心しました。
仙台の街も、意外と美しく撮れているのも良かったです。
返信する
返事遅れました。 (クラム)
2010-02-09 01:11:46
パピママさん、こんばんは。

いろいろ突っ込みどころもあるのですが、押し切ってしまう力がありました。
花火の使い方なんてかなり突飛でしたけど、とにかく見映えがよかった。

「意外と美しく」なんて謙遜ですね。
一般的な評価としては仙台はとてもきれいな街のようですよ。
地下鉄東西線の工事でけやき並木が失われちゃってるのは残念ですが。
返信する

コメントを投稿

映画(2010)」カテゴリの最新記事