心の傷のかさぶたを剥がしてえぐる。
最近ドラマやCMの露出が急増している奈緒の主演作。先日、「告白 コンフェッション」を観たときに、セリフもない役だったけど笑顔が強く印象に残って、また大画面で観てみたいなと思っていた。
本作を観ようと思った直接の動機はそれなのだが、なんだか公開直前になって想定外の炎上騒ぎが起こってしまった。
三木康一郎監督がインタビュー取材の中で、奈緒が希望していたインティマシーコーディネイター(心のケアをする専門家)の起用を拒否していたことを明かしたのだ。
本作は性暴力を正面から扱った作品であり、三木監督曰く、何人もの女優に断られた末に主演を受けたのが奈緒だったと言う。しかし、勇気と覚悟を持って仕事を引き受けた彼女の願いを監督は、間に人を入れたくないという理由で拒否したのである。
この監督のやり方と、それを得意げにインタビューで語る態度に批判が殺到し、映画公開初日の舞台挨拶は、謝罪から始まる異例の事態となってしまった。
中には「こんな監督が作った作品を観るべきではない」という声まで上がったが、それでは奈緒をはじめ作品に全力を注いだ人に余計な被害を与えてしまう。もやもや感が拭えないままではあるが、まずは作品を観ないと始まらないという思いで映画館へ足を運んだ。
高校教師の美鈴は、親友の美奈子の交際相手である早藤からレイプされた過去を持っている。早藤と美奈子は婚約するが、その裏で早藤は美鈴にちょっかいを出し続け、美鈴もどこか早藤に惹かれる部分があるのか、体の関係を断つことができずにいた。
そんな中、美鈴のクラス内で、生徒が人妻とラブホテルへ行ったという疑惑が持ち上がる。その生徒・新妻と1対1で面談する中で、美鈴は思わず表に出さなかった本音をぶつけてしまう。ともに性的なトラウマを抱える美鈴と新妻。小さな共感はやがて好意へと姿を変えていく。
奈緒はとても整った顔立ちをしているが、大きな瞳に吸い込まれそうという感じではないので、実はメイク、表情、演技でオーラをぼやかすことができる。初体験が心の傷となった美鈴の、失望と諦めに支配された痛々しい姿をよく体現していた。
しかし美鈴は、新妻との出会いによって少しずつ変わりはじめる。早藤に対しても、なしくずし的に引きずられるのではなく、毅然とした態度で自分の主張を伝え、そして・・・。
不幸な出来事で心に傷を負ってしまった人たちがいる一方で、そのきっかけを作る人物、本作で言えば早藤のような人間にも、それはそれで幼いころに種が蒔かれたのだろうと想像する。
負の連鎖を止めるには何が必要か。小さな出会いで逆回転が始まるのか。笑顔こそないけど少しだけ希望の光が差し込むラストシーンに少しだけ救われた。
(70点)※7月22日21時10分投稿
最近ドラマやCMの露出が急増している奈緒の主演作。先日、「告白 コンフェッション」を観たときに、セリフもない役だったけど笑顔が強く印象に残って、また大画面で観てみたいなと思っていた。
本作を観ようと思った直接の動機はそれなのだが、なんだか公開直前になって想定外の炎上騒ぎが起こってしまった。
三木康一郎監督がインタビュー取材の中で、奈緒が希望していたインティマシーコーディネイター(心のケアをする専門家)の起用を拒否していたことを明かしたのだ。
本作は性暴力を正面から扱った作品であり、三木監督曰く、何人もの女優に断られた末に主演を受けたのが奈緒だったと言う。しかし、勇気と覚悟を持って仕事を引き受けた彼女の願いを監督は、間に人を入れたくないという理由で拒否したのである。
この監督のやり方と、それを得意げにインタビューで語る態度に批判が殺到し、映画公開初日の舞台挨拶は、謝罪から始まる異例の事態となってしまった。
中には「こんな監督が作った作品を観るべきではない」という声まで上がったが、それでは奈緒をはじめ作品に全力を注いだ人に余計な被害を与えてしまう。もやもや感が拭えないままではあるが、まずは作品を観ないと始まらないという思いで映画館へ足を運んだ。
高校教師の美鈴は、親友の美奈子の交際相手である早藤からレイプされた過去を持っている。早藤と美奈子は婚約するが、その裏で早藤は美鈴にちょっかいを出し続け、美鈴もどこか早藤に惹かれる部分があるのか、体の関係を断つことができずにいた。
そんな中、美鈴のクラス内で、生徒が人妻とラブホテルへ行ったという疑惑が持ち上がる。その生徒・新妻と1対1で面談する中で、美鈴は思わず表に出さなかった本音をぶつけてしまう。ともに性的なトラウマを抱える美鈴と新妻。小さな共感はやがて好意へと姿を変えていく。
奈緒はとても整った顔立ちをしているが、大きな瞳に吸い込まれそうという感じではないので、実はメイク、表情、演技でオーラをぼやかすことができる。初体験が心の傷となった美鈴の、失望と諦めに支配された痛々しい姿をよく体現していた。
しかし美鈴は、新妻との出会いによって少しずつ変わりはじめる。早藤に対しても、なしくずし的に引きずられるのではなく、毅然とした態度で自分の主張を伝え、そして・・・。
不幸な出来事で心に傷を負ってしまった人たちがいる一方で、そのきっかけを作る人物、本作で言えば早藤のような人間にも、それはそれで幼いころに種が蒔かれたのだろうと想像する。
負の連鎖を止めるには何が必要か。小さな出会いで逆回転が始まるのか。笑顔こそないけど少しだけ希望の光が差し込むラストシーンに少しだけ救われた。
(70点)※7月22日21時10分投稿