Con Gas, Sin Hielo

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「ダンケルク」

2017年09月18日 14時10分24秒 | 映画(2017)
混乱が助長する不安。


人間は理解できないものに恐怖を感じる。超常現象がそうだし、現実に起きていることで言えば、何をしでかすか分からない国のトップも同じである。

第二次世界大戦の序盤戦。攻勢を続けるドイツ軍に追い込まれた英仏連合軍は後がなかった。押し込められたのは砂浜海岸で、大型船が近付きにくい上に頻繁にドイツ空軍が空襲を仕掛けてくる。30万を超える軍勢は滅亡の時を待つしかないように見えた。

近代戦史に残る作戦と言われるダンケルクの戦いを、あのC.ノーラン監督がメガホンをとって映画化した話題作である。

戦争映画は時代のかがみと言われる。ベトナム戦争、湾岸戦争、そして9.11を経たテロと情報戦の時代と映るに連れて、対象となる題材や描かれ方が変化してきた。

しかし本作にはあまり思想的なメッセージを感じることはなかった。もちろん飛び交う弾丸や見えない敵からの攻撃は、戦争の恐怖を伝えるに十分な迫力であるが、それ以上にダンケルクから何とか脱出を試みる人たちの思いの方が強く印象に残った。

映画は出発点が異なる3つの物語が並行して描かれる。

陸からダンケルクの海岸に辿り着き脱出を図ろうとする兵士、海から救出作戦に参加しようとする民間人、空からドイツ軍の攻撃を阻止する空軍パイロット。

3つの舞台がテンポよく切り替わるのだが、実はこれらの話は時間軸が少しずつズレているので観ている側はかなり混乱させられる。

例えば、陸上の兵士たちに危機が迫り緊迫した音楽が徐々にピッチを上げるのだが、直後に切り替わる海や空はまったく違う時空間にあって音楽だけが引き継がれる。

戦場で顔がくすんだ兵士たちの見分けがつきにくいことも手伝って状況がつかめない。結果的にこれが不安感を増幅しているのだが、この映画の受け取り方がこれで良いのかどうかはこれまた分からない。

それにしても本作を観ていると、戦争の様相が大きく変わったことに気付かされる。とにかく人間が実際に現地へ行って戦うのだ。

現代において直接出向いて生命をさらして戦うなんてことがあるだろうか。そういう意味では人間は少しずつながら進化しているのかもしれない。新しい問題が発生して決して心が休まる暇はないが。

(70点)
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