アジアと欧米のスクランブル交差点。
主要キャストすべてがアジア人の作品が北米BOX OFFICEで大ヒットを記録。そんな話題作が意外にも早く映画館にかかることとなったので、さっそく確認しに行ってみた。
冒頭は1995年のロンドン。高級ホテルのロビーに雨でずぶ濡れになった中国系と思しき家族が現れる。
明らかに分不相応な客人に対し、丁寧ではあるものの差別的に接するホテルマンたち。しかし、その中国系の家族は、ついさっきホテルを買い取った新しいオーナーさまであることが判明。
手のひらを返す従業員たちを尻目にスイートルームへ向かう家族。出だしの完璧な爽快感に本編への期待が膨らむ。
舞台は飛んで現代。ホテルの買収から20年余りが過ぎ、当時の子供たちは結婚適齢期に成長していた。跡継ぎ息子のニックは本拠地のシンガポールを離れ、ニューヨークで暮らしていた。
大金持ちは経済的に恵まれていても、何かと不自由があるらしい。誰も自分のことを知らないニューヨークで、大学で経済学を教えるレイチェルを恋人に持ち自由な生活を満喫するニック。
レイチェルとの関係を真剣に考えれば、いずれは家族に面通しをしなければならない。友人の結婚式の介添人を引き受ける機会に合わせて、ニックはレイチェルをシンガポールへ招待する。
本作の原題は「クレイジーリッチ:アジアンズ」。ただのリッチではない。スーパーリッチでもない。「クレイジー」なリッチである。
そして「アジアンズ」も単なるアジア人ではなく、様々な背景を持つアジア人というところが肝である。
旅行へ向かう前にレイチェルの母親が言う。アジアに住む中国系と米国で育った中国系は違うと。ニックの家族と会ったレイチェルは、そのことをいやというほど思い知ることになる。
クレイジーリッチな一族は、何にも増してファミリーの隆盛を第一に考える。見た目が似ていても、自由主義、個人主義の米国精神にどっぷりと漬かったレイチェルはエイリアン以外の何者でもない。
本作は、パッケージこそアジアを前面に押し出しているが、中身としては男女の恋仲に立ちはだかる家族や文化の壁という、極めてオーソドックスなテーマを扱った分かりやすい作品である。
キャラクターも分かりやすい。レイチェルは少したれ目がちで観る者を味方につけやすい顔立ち。ニックはさわやかなイケメン。厳しい表情でレイチェルを威嚇するM.ヨーに、変わり者揃いの脇役たち。
分かりやすさを派手さと明るさでコーティングして、アジア人の珍しさで話題性を加えたというところが勝因だろうか。
シンガポールが舞台というところもバランスが良い。米中関係は決して順風ではない中で、必然的に政治でも経済でもカギを握るのはこの場所である。双方の力をうまく利用してこれからも発展を続けていく。スクリーンに映る個性的な建物群や街並みを通して、あふれ出る活気を垣間見た気がした。
(80点)
主要キャストすべてがアジア人の作品が北米BOX OFFICEで大ヒットを記録。そんな話題作が意外にも早く映画館にかかることとなったので、さっそく確認しに行ってみた。
冒頭は1995年のロンドン。高級ホテルのロビーに雨でずぶ濡れになった中国系と思しき家族が現れる。
明らかに分不相応な客人に対し、丁寧ではあるものの差別的に接するホテルマンたち。しかし、その中国系の家族は、ついさっきホテルを買い取った新しいオーナーさまであることが判明。
手のひらを返す従業員たちを尻目にスイートルームへ向かう家族。出だしの完璧な爽快感に本編への期待が膨らむ。
舞台は飛んで現代。ホテルの買収から20年余りが過ぎ、当時の子供たちは結婚適齢期に成長していた。跡継ぎ息子のニックは本拠地のシンガポールを離れ、ニューヨークで暮らしていた。
大金持ちは経済的に恵まれていても、何かと不自由があるらしい。誰も自分のことを知らないニューヨークで、大学で経済学を教えるレイチェルを恋人に持ち自由な生活を満喫するニック。
レイチェルとの関係を真剣に考えれば、いずれは家族に面通しをしなければならない。友人の結婚式の介添人を引き受ける機会に合わせて、ニックはレイチェルをシンガポールへ招待する。
本作の原題は「クレイジーリッチ:アジアンズ」。ただのリッチではない。スーパーリッチでもない。「クレイジー」なリッチである。
そして「アジアンズ」も単なるアジア人ではなく、様々な背景を持つアジア人というところが肝である。
旅行へ向かう前にレイチェルの母親が言う。アジアに住む中国系と米国で育った中国系は違うと。ニックの家族と会ったレイチェルは、そのことをいやというほど思い知ることになる。
クレイジーリッチな一族は、何にも増してファミリーの隆盛を第一に考える。見た目が似ていても、自由主義、個人主義の米国精神にどっぷりと漬かったレイチェルはエイリアン以外の何者でもない。
本作は、パッケージこそアジアを前面に押し出しているが、中身としては男女の恋仲に立ちはだかる家族や文化の壁という、極めてオーソドックスなテーマを扱った分かりやすい作品である。
キャラクターも分かりやすい。レイチェルは少したれ目がちで観る者を味方につけやすい顔立ち。ニックはさわやかなイケメン。厳しい表情でレイチェルを威嚇するM.ヨーに、変わり者揃いの脇役たち。
分かりやすさを派手さと明るさでコーティングして、アジア人の珍しさで話題性を加えたというところが勝因だろうか。
シンガポールが舞台というところもバランスが良い。米中関係は決して順風ではない中で、必然的に政治でも経済でもカギを握るのはこの場所である。双方の力をうまく利用してこれからも発展を続けていく。スクリーンに映る個性的な建物群や街並みを通して、あふれ出る活気を垣間見た気がした。
(80点)
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