誰かがどこかで止めていれば。
ジェンダーフリーがかなり世の中に定着し、男女を分ける言葉やカテゴリーの多くが姿を消したり形を変えたりしているが、幸いにも"nurse"という単語には性別を固定する概念がなかったため引き続き、というよりもむしろ頻繁に使われるようになった気がする。
本作に登場する主役二人も女性と男性の"nurse"である。細かい背景は説明されないが、二人とも子供を持つが配偶者とは別離しており、自らの収入で生計を立てなければならない看護師という立場にある。
特に女性看護師のエイミーは心臓に危険な病を抱えており、子育てと仕事と健康維持という難題をぎりぎりのバランスで毎日をこなしている。そんなときに男性看護師のチャーリーは、夜勤のヘルプとしてエイミーの病院へやって来た。
多くの病院で勤務した経験を持つチャーリーは、仕事での助けになる以上にエイミーの体調や家庭を気遣ってくれるようになる。そんな彼に信頼を寄せるエイミーであったが、その傍らで病院では不可解な事件が立て続けに起きるようになる。
冒頭に流れる過去の別の病院での緊急事態の様子でストーリーの柱は予測が付き、実際その予測に間違いはなく、そういった意味で展開の妙を楽しむ種類の作品ではない。
しかし、それを差し引いても主役の二人を演じるJ.チャステインとE.レッドメインに終始目が釘付けになる。
苦しみ、悲しみ、信頼、疑惑と揺れ続けるエイミーに対し、常に包み込むような穏やかな表情のチャーリー。しかし、その笑顔のすぐ下にはどす黒い感情が蠢いていたのである。
本作は実話に基づいた話であり、映画の中でも実際にも犯罪の動機は不明とされている。
確かにわが国でも、医療機関や介護施設に勤務する者が患者や利用者を標的にした犯罪を犯す事件を聞くことがある。おそらく彼らは根っからの犯罪者ではなく、その職業を目指したときは尊い目的を持っていたはずだ。
しかし何かがそれを変えた。医療や介護ばかりではない。国会議員も不祥事を起こした企業の役員も同じである。
この映画の中で最も衝撃だったのは、事件に関わった病院がことごとく隠ぺいに走っていたことだ。悪い報せほど早く報告するのが鉄則と言われる中で、あまりに手に負えない案件だと蓋をしてしまおうとするのは万国共通なんだと虚しい気持ちになった。
一連の事件で被害に遭った遺族の方々に心からお悔やみを申し上げたい。
(80点)
ジェンダーフリーがかなり世の中に定着し、男女を分ける言葉やカテゴリーの多くが姿を消したり形を変えたりしているが、幸いにも"nurse"という単語には性別を固定する概念がなかったため引き続き、というよりもむしろ頻繁に使われるようになった気がする。
本作に登場する主役二人も女性と男性の"nurse"である。細かい背景は説明されないが、二人とも子供を持つが配偶者とは別離しており、自らの収入で生計を立てなければならない看護師という立場にある。
特に女性看護師のエイミーは心臓に危険な病を抱えており、子育てと仕事と健康維持という難題をぎりぎりのバランスで毎日をこなしている。そんなときに男性看護師のチャーリーは、夜勤のヘルプとしてエイミーの病院へやって来た。
多くの病院で勤務した経験を持つチャーリーは、仕事での助けになる以上にエイミーの体調や家庭を気遣ってくれるようになる。そんな彼に信頼を寄せるエイミーであったが、その傍らで病院では不可解な事件が立て続けに起きるようになる。
冒頭に流れる過去の別の病院での緊急事態の様子でストーリーの柱は予測が付き、実際その予測に間違いはなく、そういった意味で展開の妙を楽しむ種類の作品ではない。
しかし、それを差し引いても主役の二人を演じるJ.チャステインとE.レッドメインに終始目が釘付けになる。
苦しみ、悲しみ、信頼、疑惑と揺れ続けるエイミーに対し、常に包み込むような穏やかな表情のチャーリー。しかし、その笑顔のすぐ下にはどす黒い感情が蠢いていたのである。
本作は実話に基づいた話であり、映画の中でも実際にも犯罪の動機は不明とされている。
確かにわが国でも、医療機関や介護施設に勤務する者が患者や利用者を標的にした犯罪を犯す事件を聞くことがある。おそらく彼らは根っからの犯罪者ではなく、その職業を目指したときは尊い目的を持っていたはずだ。
しかし何かがそれを変えた。医療や介護ばかりではない。国会議員も不祥事を起こした企業の役員も同じである。
この映画の中で最も衝撃だったのは、事件に関わった病院がことごとく隠ぺいに走っていたことだ。悪い報せほど早く報告するのが鉄則と言われる中で、あまりに手に負えない案件だと蓋をしてしまおうとするのは万国共通なんだと虚しい気持ちになった。
一連の事件で被害に遭った遺族の方々に心からお悔やみを申し上げたい。
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