Con Gas, Sin Hielo

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「君の名前で僕を呼んで」

2018年05月03日 15時27分10秒 | 映画(2018)
時代は退廃的に成長する。


全体的に観ると、繊細な文学作品の香りに満ちた佇まいの映画なのだが、何かしっくりこないところが多いとも感じた。

主人公のエリオと、彼の家に短期ステイでやって来たオリバー。避暑地の独特な空気の中で二人の心が触れ合っていく様子が描かれるのだが、彼らの態度や行動がなかなか理解しづらかった。

反発したり仲良くなったりという以上に、彼らは、振り回されていたかと思えば、すぐに逆の立場になって相手を翻弄するような、そんな攻守交代が目まぐるしく変化する関係を続ける。

エリオはいつからオリバーを恋愛対象として見るようになったのか。そもそも彼は自分が同性愛者であることを知っていたのか。

オリバーの気持ちが分からないエリオは、同年代の女の子と関係を持つ。思春期の悩み故の過ちと言ってしまえばそれまでだが、相手にとってはとんでもない話だ。

オリバーはいつからエリオの気持ちに気付いていたのか。ついには「大人になれ。真夜中に待ってる」とメモを渡して二人の関係は成就する。

同性愛がどうのと言うのではなく、ここまでまわりくどくなることに違和感を覚えていたのだが、ここで気付いた。

この映画の舞台は1983年なのだ。

LGBTなどという言葉は当然なく、同性愛者は素性を隠して暮らすことを余儀なくされていたであろう時代。簡単に人と人が繋がれるツールもなく、彼らが自分の思いを伝えることは容易ではなかった。

そこに気付くと、本作への印象は大きく変わる。まわりくどいのではなく、彼らの行動の選択肢は限られていたのだ。

そして同じように、時代として彼らの結末は決められていて、17歳のエリオにはあまりにも辛い経験となるのであった。

冬になり、遠く離れたオリバーからの知らせを受けたエリオが声を殺して泣くのをこらえる場面で映画は幕を閉じる。バックには暖炉にくべられた薪が燃える音だけ。強烈な印象を残す名場面であり、このワンカットでアカデミーノミネートになったと言っても納得する。

ただ、作品として味わい深いのは理解するが、最愛のひとと結ばれない時代の悲しさは簡単には片付けられない。

最愛のひとは別にいたと親に告げられた時に子供はどう思うのかとどうしても考えてしまう。時代的にみてもあまりにも理解のある人が周りに多くて、ちょっときれいごとに偏っている点が否めなかった。

(70点)
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