Con Gas, Sin Hielo

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「プレシャス」

2010年05月04日 02時52分52秒 | 映画(2010)
希望だけでは食べられないが、希望がなければ生きられない。


いわゆる小泉・竹中改革の批判として挙げられるのが格差の拡大である。

格差自体は資本主義社会では必然の話であるが、問題はその格差が固定すると言われることにある。

豊かな家庭に生まれた者のみが高等な教育を受けられるという、あれだ。

本作の主人公・プレシャスが生まれ育ったハーレムは典型的な貧民街。

貧困や無学だけではなく、家族による虐待が暴力までも固定化する。

そんな中でプレシャスを支え続けたのが成功した自分を妄想する瞬間だったのだが、それは悲しいことに他者から暴力を受けている時間と重なっていた。

それでもその希望の灯火が限りなく細い糸を伝うように、彼女を特別教育施設へと導いた。

そこには境遇は違いながらも不器用な青年時期を過ごしている同世代の女性たちがいた。

本当に一歩ずつ進む彼女たちを見るだけで不思議な感動を覚える。何しろ、彼女たちにとっては、こうして普通の日常を積み重ねることこそが重要なのである。

本作のラストは諸手を上げたハッピーエンドではない。むしろ彼女の行く末は明らかに前途多難だ。

それでもどこかしらさわやかな気分になるのは、彼女が明らかに心の中の希望を強く持っていることが伝わってくるからに違いない。

キャストもよかった。新人のG.シディベが今後どうキャリアを積み重ねるかには興味。「デジャヴ」のP.パットン、理知的な美しさに磨きがかかった感がある。M.キャリーL.クラヴィッツのミュージシャンコンビもさすがの存在感。マライアなんて「グリッター」で映画との相性は最悪かと思われたのに、これで払拭だろう。

そして母親役のモニーク。彼女がコメディエンヌと聞いて驚いた。この母親の激しさと悲しさなしにこの映画は成り立たなかったであろう。

(75点)
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