Con Gas, Sin Hielo

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「ドクタースリープ」

2019年12月08日 00時50分19秒 | 映画(2019)
シャインと共にあらんことを。


S.キューブリックによる不朽の名作「シャイニング」。他に類を見ない圧倒的な個性でホラー映画の金字塔とも呼ばれる作品だが、原作者のS.キングには大層嫌われているらしい。

それは原作をあまりに改変しているからだという話。確かに「シャイニング」で印象に残るものと言えば、独特の映像技法やJ.ニコルソンの怪演であり、タイトルにもなっている特殊能力のシャイニングは脇に追いやられていた感が拭えない。

ただやり方はどうあれ、キューブリックの「シャイニング」が数々の名場面を映画史に刻んだことは間違いない。三輪車を漕ぐビリー少年の映像を見ただけで背筋に寒気が走るのだから、その力は計り知れない。

そんな名作の40年後を描く本作。大人になったビリーが再び恐怖のホテルを訪れるという話を、S.キング自身が2013年に書き下ろした作品の映画化である。

40年前に仲違いした映画と原作を続篇でどう取り持つのかに興味が湧いたが、全体として器用にそれぞれの要素をすくい上げていた。

まず重要なこととして、全般を通して話の中心にS.キングが本来考えていた特殊能力をめぐる争いが置かれていたことが挙げられる。

子供の頃の事件のトラウマから能力を隠して生きていたビリー。その前に更に強大な力を持った少女が現れるが、やがて彼女の能力を狙う邪悪な集団の魔の手が迫り、ビリーはシャイニングを封印から解放する決断をする。

邪悪な敵との決戦の場にビリー自らが選んだのがいわくつきのホテルであった。毒を以て毒を制す。40年ぶりの特別な客にホテルが目を覚ます。ここからはキューブリックの名場面のオンパレードとなる。

無理のない設定で流れるように話は進む。敵との戦いも見応えがあるし、キューブリック版「シャイニング」へのオマージュも量的に十分。強大な力を持った少女に黒人を据えるぬかりなさも含め、特に苦言を呈するような点はない。

ただなんだろう。これを言うと身も蓋もないのかもしれないが、きっちりまとまり過ぎていて逆に物足りない、言い換えれば爪痕が残らない作品になっているように感じた。

ここは外してはいけないというリストのようなものがあって、それを一つ一つなぞって作っているから、原作や前の映画版の枠を超えられないことがはじめから分かっているのである。これはこれで有りだとも思うが。

大人になったビリーを演じるのはE.マクレガー。これまで演じたオビワンケノービやクリストファーロビンあたりに通じる点もあり、適役だったと思う。

(75点)
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