求められるのは理性のリーダーシップ。
ピクサーの「インサイドヘッド」の公開は2か月先。頭の中という同じような題材を「あたまハネ」して製作したのかと思ったが、どうやら本作には原作があるらしい。
向こうが「喜び」「悲しみ」「怒り」といった感情をキャラクター化しているのに対して、こちらは「ポジティブ」「ネガティブ」「理性」「衝動」「記憶」と、行動に結び付く意識に焦点を当てている。
しかもそれぞれを人間が演じて名前までついている。議長の「理性」担当は「吉田」という名前で、大人のメガネ男子であり、性格は優柔不断というように、表の看板以外の属性が複層的に備わっているのである。
属性の質がことごとく違う5人が、主人公である櫻井いちこの行動を決める会議を進行しようというのだから、一筋縄でいくはずがない。
「頭の中がパニックになって~」というのはまさにそういう状態のことで、例えとしてはすんなり入ってくる(頭の中が真っ白に~」と言うとまったく違ってしまうが)。
いちこが30歳になっても自分の立ち位置を見定められずにいるのは、この脳内会議がうまく機能していないからにほかならない。
会議がうまくいかないのは議長が仕切り下手だからである。酷いときには限界だと言って議長職を放棄してしまうのだからどうしようもない。そんなときは、突然現れた超自我によってやけくそな決断に至ってしまうのである。
誰もが「理性」を議長にしているわけではないかもしれないが、理性が全体をコントロールすれば安定するという組み立ては納得する。だから自分の中の「理性」が真理に気付く瞬間がいちこの成長へ投影されているわけだ。
脳内会議はいわば密室ものとして展開するが、個性あふれる役者陣の丁々発止によって中だるみすることなく進行する。「衝動」の桜田ひよりがかわいい。
現実世界では、真木よう子が冒頭の胸元アップから一貫して、柔らかく線の細い女性を演じている。これまで気の強い役が多い印象があっただけに新鮮だ。
全体的に気軽に楽しめる作品に仕上がっているが、「あなたを好きだけど、あなたと一緒にいる私が嫌い」という別れの言葉は深く秀逸だ。
(75点)
ピクサーの「インサイドヘッド」の公開は2か月先。頭の中という同じような題材を「あたまハネ」して製作したのかと思ったが、どうやら本作には原作があるらしい。
向こうが「喜び」「悲しみ」「怒り」といった感情をキャラクター化しているのに対して、こちらは「ポジティブ」「ネガティブ」「理性」「衝動」「記憶」と、行動に結び付く意識に焦点を当てている。
しかもそれぞれを人間が演じて名前までついている。議長の「理性」担当は「吉田」という名前で、大人のメガネ男子であり、性格は優柔不断というように、表の看板以外の属性が複層的に備わっているのである。
属性の質がことごとく違う5人が、主人公である櫻井いちこの行動を決める会議を進行しようというのだから、一筋縄でいくはずがない。
「頭の中がパニックになって~」というのはまさにそういう状態のことで、例えとしてはすんなり入ってくる(頭の中が真っ白に~」と言うとまったく違ってしまうが)。
いちこが30歳になっても自分の立ち位置を見定められずにいるのは、この脳内会議がうまく機能していないからにほかならない。
会議がうまくいかないのは議長が仕切り下手だからである。酷いときには限界だと言って議長職を放棄してしまうのだからどうしようもない。そんなときは、突然現れた超自我によってやけくそな決断に至ってしまうのである。
誰もが「理性」を議長にしているわけではないかもしれないが、理性が全体をコントロールすれば安定するという組み立ては納得する。だから自分の中の「理性」が真理に気付く瞬間がいちこの成長へ投影されているわけだ。
脳内会議はいわば密室ものとして展開するが、個性あふれる役者陣の丁々発止によって中だるみすることなく進行する。「衝動」の桜田ひよりがかわいい。
現実世界では、真木よう子が冒頭の胸元アップから一貫して、柔らかく線の細い女性を演じている。これまで気の強い役が多い印象があっただけに新鮮だ。
全体的に気軽に楽しめる作品に仕上がっているが、「あなたを好きだけど、あなたと一緒にいる私が嫌い」という別れの言葉は深く秀逸だ。
(75点)
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