防衛力の乏しさを認識。
ZQNという名ではあるが、要はいわゆるゾンビ映画であり、それ自体はまったく珍しくない。
その中で本作が特筆されるべき点は、わが国では個人レベルでZQNを退治する手段がないということに焦点を当てていることである。
更には、人間とZQNの戦いと並行して、いやむしろそれよりも際立つ描写で、追い込まれたはずの人間たちのコミュニティの中で起きる争いや諍いを描いているところもおもしろい。
改めて平和な国ニッポンの社会は、ほとんどの国民が武器を持たない、使用しないことを前提に成り立っていることを実感せずにはいられない。だから外敵には弱いだろうし、お互いを信用しなくなったときの崩壊が無残な結末を招くことにも非常に納得がいく。
本作では、そんな平和社会でうだつの上がらない生活を送る主人公・英雄が、ZQN騒動に振り回される中で、いかに自分の中の生き抜く力を呼び起こすことができるのかを中心に話が組み立てられている。
しかしこれもおもしろいことに、英雄は銃使用の免許を持っており、幾度となくZQN退治にその力を発揮する機会が巡ってくるが、ことごとく踏み切れないまま窮地に追い込まれていく。
ついにはその切り札を他人に奪われ、丸腰で狭いロッカーに身を隠す英雄。彼はこの苦境にどう立ち向かっていくのか。
英雄はたまたま銃の免許を持っているだけで、どこにでもいる普通の日本人と何ら変わりのない人間である。
ロッカーに身を隠すまでの彼の行為や判断は、パニックになってなお日常の常識を踏み外さないし、本作はそれを決して勇気がないと蔑むように描いているわけではない。むしろ行きずりの他人である女の子を守ろうとする姿を、他者をしてほめさせているほどである。
「僕はただの「英雄(ひでお)」です」
何もできずヒーローになれない自分を情けなく感じ、自責の念にかられ続けていた英雄。全篇を通して変化した彼が、タイトルと逆説的な言い回しを最後になって敢えて口にする。
自分が思い描いていた英雄的行為とヒーローは結び付かなかった。しかしそれは決して失望でも自虐でもなく、何より重要なのはいま自分がどういう存在で何をすべきかということに尽きる。その先に誰かにとってのヒーローがいる。
パニック娯楽作にほんのりと柔らかいメッセージを漂わせている点は好感が持てるし、主役に大泉洋を配置したのも全体に説得力を持たせる効果を発揮している。
コミュニティリーダー伊浦の扱いや、終盤で主人公たちに襲いかかるZQNのご都合感など不満が残る部分もあったが、概ね楽しむことができた。それにしても、最近の長澤まさみは引き立て役が多くて不憫でならない。
(70点)
ZQNという名ではあるが、要はいわゆるゾンビ映画であり、それ自体はまったく珍しくない。
その中で本作が特筆されるべき点は、わが国では個人レベルでZQNを退治する手段がないということに焦点を当てていることである。
更には、人間とZQNの戦いと並行して、いやむしろそれよりも際立つ描写で、追い込まれたはずの人間たちのコミュニティの中で起きる争いや諍いを描いているところもおもしろい。
改めて平和な国ニッポンの社会は、ほとんどの国民が武器を持たない、使用しないことを前提に成り立っていることを実感せずにはいられない。だから外敵には弱いだろうし、お互いを信用しなくなったときの崩壊が無残な結末を招くことにも非常に納得がいく。
本作では、そんな平和社会でうだつの上がらない生活を送る主人公・英雄が、ZQN騒動に振り回される中で、いかに自分の中の生き抜く力を呼び起こすことができるのかを中心に話が組み立てられている。
しかしこれもおもしろいことに、英雄は銃使用の免許を持っており、幾度となくZQN退治にその力を発揮する機会が巡ってくるが、ことごとく踏み切れないまま窮地に追い込まれていく。
ついにはその切り札を他人に奪われ、丸腰で狭いロッカーに身を隠す英雄。彼はこの苦境にどう立ち向かっていくのか。
英雄はたまたま銃の免許を持っているだけで、どこにでもいる普通の日本人と何ら変わりのない人間である。
ロッカーに身を隠すまでの彼の行為や判断は、パニックになってなお日常の常識を踏み外さないし、本作はそれを決して勇気がないと蔑むように描いているわけではない。むしろ行きずりの他人である女の子を守ろうとする姿を、他者をしてほめさせているほどである。
「僕はただの「英雄(ひでお)」です」
何もできずヒーローになれない自分を情けなく感じ、自責の念にかられ続けていた英雄。全篇を通して変化した彼が、タイトルと逆説的な言い回しを最後になって敢えて口にする。
自分が思い描いていた英雄的行為とヒーローは結び付かなかった。しかしそれは決して失望でも自虐でもなく、何より重要なのはいま自分がどういう存在で何をすべきかということに尽きる。その先に誰かにとってのヒーローがいる。
パニック娯楽作にほんのりと柔らかいメッセージを漂わせている点は好感が持てるし、主役に大泉洋を配置したのも全体に説得力を持たせる効果を発揮している。
コミュニティリーダー伊浦の扱いや、終盤で主人公たちに襲いかかるZQNのご都合感など不満が残る部分もあったが、概ね楽しむことができた。それにしても、最近の長澤まさみは引き立て役が多くて不憫でならない。
(70点)
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