Con Gas, Sin Hielo

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「わたしに会うまでの1600キロ」

2015年09月25日 21時36分52秒 | 映画(2015)
山があれば川があり、暑さがあれば寒さがある。


人生の壁に当たったとき、人はよく旅をする。自分探しの旅は、できれば少し困難を用意した方がいい。

本作の主役であるシェリルは、母親を失ってから生きるための支えがなくなったかのように自暴自棄な生活を送るようになる。誰彼構わず男性と性交し、ついにはクスリにも漬かってしまう。

母が健在だったころは、母の理想をも超える立派な生き方をしていたはずなのに。その頃の自分に戻るための旅として選んだのが、メキシコ国境からカナダ国境まで西海岸を貫くパシフィッククレストトレイル(PCT)だった。

どうやら実話らしい。エンドロールに出てくる画像が本人なのだろう。主演のR.ウィザースプーンが惚れ込んだ話のようで、体当たりの演技がそれを証明している。

生半可な自分探しではない。自分自身をとことん追い込んで、そこから湧く生きるための力を体得するための業なのだ。

ただ、旅を続ける間はそんな先のことまで考える余裕もなく、その日の食料や寝場所の確保や、行き交う人たちとの関わりに全力を尽くす。旅が終わりに近づくときにやっと、「明日から毎日20セントでどうやって暮らそう」と思うくらいだ。

それでも、旅の途中で自分を見つめ、報われない境遇でも前向きだった母の面影を繰り返し思い出すことで、シェリルは気持ちの区切りがついたようだ。旅が終わった後のことはセリフでしか語られないが、それは再生のドラマには含まれないということなのだろう。

苦行ではあるものの、旅自体は大事件が起こることなく淡々としている。一泊お世話になる農家の人、砂漠で出会った怪しい男、オレゴンで行きずりの夜を過ごす男性と様々な出会いがあるが、すべて通り過ぎるだけというところが実話らしく興味深い。確かに、人生のほとんどって、実は劇的ではないのが事実である。

(70点)
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