Con Gas, Sin Hielo

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「百花」

2022年09月19日 06時27分16秒 | 映画(2022)
記憶の迷宮を彷徨う。


劇場の予告で何度も見たこの作品。特に菅田将暉が好きというわけではないのだが、バックに流れる音楽の不安定なメロディーが妙に気になっていた。

実際に観てみると、それは主人公の働き先で開発したヴァーチャル歌手が歌う曲として使われていた。力を入れて開発したが、世間からの評判はいまひとつという設定で、スタッフ曰く情報の詰め込み過ぎで特徴がわからなくなり魅力がなくなってしまった、とのこと。

「忘れる機能を追加しておけばよかったですかね?」とご丁寧なコメントも付けて、記憶を失っていく主人公の母親と明確に対比させる存在となっている。

記憶をなくすのは悲しいことだが、それが人間の良さでもあり、それぞれが持つ魅力や過去の思い出が損なわれるわけではない、ということを言いたかったのではと推測する。

認知症が急速に進行する母と息子の現在と、二人の関係に影を落とす過去の出来事が交互に映し出される。様々なことを忘れる中で母の頭に残り続ける「半分の花火」とは何か。

母のあいまいな記憶が若干ミステリー仕立てになるところや、母と息子ならではの微妙な距離感、空気感といったあたりは巧く描けていると思う。

母親といえども一人の女性。理屈ではわかっていても息子という立場ではすんなりと消化できるものではない。もやもやしているうちに、母親はあっという間に遠ざかっていく。

全般的に物悲しく、認知症が進むという前提では二人の完全な和解というハッピーエンドも見出せない。最後は、残された者が物理的にも感情的にも折り合いをつけて乗り越えるしかない。やっぱり生前整理はしておかないと。

原田美枝子はまだ60代前半だから認知症を演じるには相当早いのだが、この役は女性の「気」を漂わせる必要があったので配役としては妥当であった。しかしメイクとはいえ老けた顔をアップで撮らせるのだから女優さんは大変だ。

(75点)
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