Con Gas, Sin Hielo

細々と続ける最果てのブログへようこそ。

「ギフテッド」

2017年12月03日 13時13分31秒 | 映画(2017)
100点満点の親はいない。100点満点の子育てはない。


父親に促されて食卓につく子供。何気ない朝の家庭の光景から映画は始まる。

どうやら子供は学校へ行きたくないらしい。そして母親の姿はどこにもない。少しずつ2人の事情が明らかになってくる。

類稀な数学の才能を持つ7才の女の子メアリーは、自殺した母の弟フランクの元で暮らしていた。

幼くして高等数学の書籍を読み込んでいたメアリーにとって小学校は退屈以外の何ものでもない。周囲も彼女の力を適切に伸ばせる学校へ通わせるべきと進言するが、フランクは頑なにメアリーに普通の子供の生活をさせようとする。

その後決定的な対立軸として祖母のイブリンが登場する。彼女はメアリーの母親に英才教育を施し数学者として大成させた、まさにその人物であり、自分が引き取って育てることを主張した。

2人の方向は正反対でどちらも譲ろうとしないから、米国では当然法廷での争いに持ち込まれることになる。

公判の席では、フランクが現在の不安定な生活について、イブリンが娘を育てる過程での厳し過ぎた指導の様子について赤裸々に明かされて言い争う。母子であるからこそ裁判は非情だ。

フランクもイブリンもメアリーの幸せを願う気持ちに違いはない。しかし2人とも、そこへ至る行程はこうでなければいけないと思い込んでいるところが問題であった。

長い年月の確執による感情がそれに輪をかけて解決を難しくする。共通した頑固さはさすが親子としか言いようがない。

本作では、2世代に渡る複雑な親と子の関係が、メアリーを含めた登場人物それぞれの視点から丁寧に描かれている。

才能はあるけれど、それ以外は純然たる7才の普通の子であるメアリーの存在が興味深い。その才能を特別と思う周囲の人たちと、自分の身内の人間だから特別と考えるフランク。

この話の設定は象徴的だが、よく考えれば事の大小はあっても子育てに関する言い争いは普通の夫婦にもよくあることで、それは子供に対する大人の思いがそれぞれ異なるからにほかならない。本作のタイトル"gifted"は、メアリーのことであるとともに、すべての子供のことでもある。

フランクが劇中で「あなたのやり方が正しいという自信はあるのか?」と訊かれて「分からない」と言っていたのが印象的だった。

正しいかどうかは短期的に結果が出るものではないし、他の選択肢を取ったときの結果は誰にも分からない。(ただ、裁判所で同様のことを尋ねられたときは少し間をおいて「正しい」と回答していた。そりゃそうだ)。

裁判の果てにフランクたちは「妥協」という道を選択する。弁護士たちの判断が決して間違っていたわけではないが、これが更なる事態の急展開を呼ぶ流れは皮肉である。

映画としては、フランクが持っていた決定的なあるものが功を奏するのだが、それがなかったらこの問題は永遠に解決しなかったのではと思ってしまった。

メアリー役を演じたM.グレイス。知識が豊富でちょっと斜に構えた物言いや表情と、子供らしく無邪気に振る舞う姿の使い分けが巧みで非常に良かった。C.エヴァンスもキャプテンアメリカの面影を微塵も感じさせない父親ぶりが好印象だった。

(80点)
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「ザサークル」 | トップ | 「GODZILLA 怪獣惑星」 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

映画(2017)」カテゴリの最新記事