Con Gas, Sin Hielo

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「羊の木」

2018年02月12日 20時35分21秒 | 映画(2018)
切羽詰まった同士の組み合わせ。


北陸のとある港町。過疎化に悩む市役所では一つの計画が秘密裏に進められていた。

それは、10年住むことを約束に身元引受人のいない受刑者を市が受け入れるというもの。過疎化対策と刑務所の費用節減という二つの果実を生む、行政として非常に効果の高い画期的なプロジェクトであった。

市が引き受けた6人はいずれも元殺人犯。別のタイミング、それぞれのルートで町にやって来た6人は、お互いの存在に気付かないようにという配慮で異なる職種に就くことになっていた。

主人公でプロジェクトの世話役を命じられる市役所の職員・月末(つきすえ)は、6人が到着するたびに同じセリフで町の説明をする。

「いいところですよ。人もいいし、魚もうまい」

この言葉は6人のうち5人にはほとんど届かなかった。町の長所を表しているようでいながら、裏を返せば「ありふれた日本の田舎」に過ぎないことを克明に語っていたからだ。

シャッター通りの商店街。ぽつぽつと営業している店があって、まばらに人が通るけれど、賑やかと呼べるのは年に1~2度開かれる祭りのときだけ。

海があるから産業は水産業。あとは公務員と病院と、その人たちを相手に商売する飲食店くらいか。役所はその町を延命させるべくそれなりに身を粉にして働いている。

小さい町ではすぐに顔が割れる。人がいいと言っても全員じゃないから、田舎は本来よそ者には厳しい。

こともあろうに役所のアシストも相まって早々に6人が交錯する場面が訪れる。更生の前に立ちはだかる壁に対してそれぞれが選んだ道は?

本作の原作は、なんと山上たつひこいがらしみきおだというから驚きだ。

ギャグ漫画の大家が描いた物語は、田舎町の過疎化、受刑者の更生を巡る厳しい現実を示しつつも不器用な人間への愛情に満ちていた。祭りのご神体である「のろろ様」にかつてのギャグセンスの片鱗を垣間見ることができたのはご愛嬌か。

映画としては、肝である6人の配役が良かったので全体が非情に引き締まった。特筆は優香の今まで見せたことがなかったパターンの役だろう。このポジションを攻めれば引く手あまたに違いない。

それにしても市役所側から見れば、一気に6人は無茶だった。責任は避けられないだろう。まずはお試しから始めないと。

(75点)
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