Con Gas, Sin Hielo

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「チケットトゥパラダイス」

2022年11月09日 21時34分55秒 | 映画(2022)
浮世離れの安定感。


G.クルーニーJ.ロバーツ。20年以上トップに居続けるザ・ハリウッドなトップスター2人の競演。それでいて大作感のない肩の力を抜いたようなハッピーな娯楽作品というところが、逆に目を引く本作。

二人の役どころは10年以上も前に別れた元夫婦のデヴィッドとジョージア。顔を合わせれば必ず嫌味の言い合いになるほど相性は最悪。

そんな二人の唯一の共通点が一人娘への愛情の深さだったのだが、その娘が卒業旅行で訪れたバリ島で現地の男性に恋をして結婚を決断してしまう。

これは一大事と休戦協定を組んで何とか結婚を思いとどまらせようと旅立つのだが・・・というお話。

G.クルーニーが演じるデヴィッドは決してかっこいい父親ではない。口は悪いし、踊りもダサい。年頃の娘にとって、愛情はあるけど若干うざったいという典型的な父親である。

一方のジョージアも、まだまだ恋愛は現役で知り合いのパイロットから求婚されているという設定ではあるが、必要以上にデヴィッドを罵ったり、娘の結婚を邪魔するために非道徳なことをしてしまったり、こちらも欠点が露出した、決してスマートじゃない女性となっている。

しかし、この困った両親も二人のスターが演じると何をやっても気品やオーラがにじみ出てくるから不思議だ。世の中アンチエイジングと言って背伸びしてがんばっている人が多いけど、元が備わっていれば、大スターじゃなくてもそれなりに輝いていられるのではないだろうかと少し思った。

映画の紹介では、なんとか娘の結婚を阻止しようと二人が駆け回るような印象を抱くが、上に書いた二人の気品も手伝ってドタバタコメディーにはなっていない。両親とも実際には結婚を潰そうという気持ちは半分程度で、もう半分は自分の娘を信頼して結婚を確認しに来ているように見えた。

そんな娘のリリーを演じたのは、「ディアエヴァンハンセン」でも好演していたK.デヴァー。彼女の理知的な佇まいは、両親の揺るぎない信頼を理解する助けになっている。

他の登場人物も悪人はおらず、南の島の明るい陽射しが常に降り注ぎ、物語も絵に描いたようなハッピーな展開を見せる。

驚きや発見があるわけではないけれど、閉塞感に覆い尽くされそうになる中で、映画館にいるときくらいは幸せな気分に浸りたいという思いにしっかりと寄り添ってくれる、実は稀有な作品なのであった。

(75点)
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