Con Gas, Sin Hielo

細々と続ける最果てのブログへようこそ。

「トランス」

2013年10月14日 21時06分30秒 | 映画(2013)
圧巻のひねり技とでも言おうか。


D.ボイル監督の新作は、人の記憶をめぐる心理サスペンスとでも呼べばいいのだろうか。

記憶喪失になった主人公・サイモンと、彼が直感で自分の専門医にと選択した催眠療法士・エリザベス。

エリザベスの手によって、現実と深層心理、現在と過去をぐるぐると巡るサイモン。

必要以上にサイモンに深入りするエリザベスに謎を抱きつつも、サイモンの背後にいる窃盗グループ全体を手玉にとらんとする彼女の覚悟と勢いに圧倒されて、目が離せなくなる展開や演出は見事。

結局、明らかに彼女のシナリオでことが進んでいると予想できても、奥底にある事実は最後まで分からなかった。

というわけで、登場人物同様に彼女の手のひらで転がされて、どんでん返しにあーすっきり。・・・とは、実はいかなかった。

「こういうことだったんだよね」と物語を遡っていくと、どこかでまた「でも、ここはどういうことなんだろう?」と引っ掛かってしまう。

どうやらあまりにひねられすぎていて、一度観ただけで全体を理解することはできないということなのだろう。

俳優陣はよかった。特にJ.マカヴォイが、主役といいながら完全なダメ男というところに驚き。それも結構ハマっている。

最後のフランクへの届け物だが、これは彼の人生ももはやエリザベスの手のひらにあるという暗示なのだろうか。

(70点)
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「ブルー 初めての空へ」

2013年10月13日 14時29分34秒 | 映画(2013)
続篇の日本公開はどうなる?


まず有権者に訴えたいことは、本作が北米では2年半前に公開されて、全世界で約5億米ドルの興行収入を得ているということ。

わが国では効果的な売り方を見つけられなかったのか、あっさりとDVDスルー。「スクリーンで観たい」という根強い声に押されて、イオンシネマ限定の公開と至ったのである。

興行だけでなく批評家の反応も良かったと聞いたことがある。実際、物語、キャラクター、色彩、音楽のどれをとっても文句なしに楽しめる。

特に、主な舞台となったリオデジャネイロの風景が魅力的に紹介されているのが印象的だった。

観光スポットはもちろん、日頃からサッカーに熱狂する庶民の生活や、ちょっとしたスラムの家並みまで細かく描いているところは好感が持てた。

映像を観ながら一度は行ってみたいなと思ったくらいだから、W杯や五輪と重なっていたらひょっとしたら効果てきめんだったかもしれない。

ただ惜しむらくは、やはりわが国では国内向けの売りがないかぎり商売になりにくいということ。アニメは、たいがいテレビによく出る人を声優で起用して宣伝係になってもらうパターンになるが、それももはや目新しくなく目を引けるとは限らない。

今回もイオンが重い腰を上げて劇場公開はしたものの、特に宣伝もしていないから客席はがらがらだ。

かくて世の中は、何かしらの特徴を求めて、過激になったり余計な策を講じたりすることに注力するようになってしまうのだろう。

一昨日の「死霊館」も大括りにすればそうだが、シンプルだけど芯の通った作品がきちんと拡大公開される環境が定着するには、やはり声を上げ続けるしかない。

(85点)
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「死霊館」

2013年10月12日 00時40分25秒 | 映画(2013)
全米が泣いた・・・かも。


調べたら、今年は「エクソシスト」から40年にあたるらしい。

当時はオカルトブームなんて言われて、映画は半ば社会現象になった。撮影中に不可解な事故が起きたなんてことが、話題性に輪をかけた作品もあった記憶がある。

ただ、ブームというのは消費されるのが世の常で、オカルト映画も、ホラーが強調されて過激になったり、レベルの低い作品が乱造されたりするうちに、観ている側にとっての新鮮な驚きが失われていった。

それでも、それは決してオカルトというジャンルの魅力が失われたわけでは決してなく、丁寧に作られた作品はやっぱりおもしろいことを、本作は思い出させてくれる。

家に巣食う邪悪な悪魔。まさに古典的な題材だが引き付けられる。何しろ"Based on a True Story"である。

実在するエドとロレインのウォーレン夫妻が単なるオカルト信奉者ではないところがおもしろい。彼らは、超常現象は調べてみればそのほとんどが科学的に証明できるものだと言う。

そんな彼らがただ一つ外向けに話すことができなかったのが、ペロン家で起きた事件であった。

出現から攻撃、そして憑依へ。この段階を踏む悪魔の戦術は、映画の盛り上がりと非常に相性がいい。ゆっくりと遠くで起きるちょっとした現象が、直接的かつ凶暴なものに変異する様は見応え十分だ。

そして忘れてはいけないのが、ペロン夫妻、ウォーレン夫妻のいずれにも娘たちがいるということ。

これがまたみんなかわいくて、命を懸けても家族を守るという闘争心へと繋がっていく。観ているこちらも思わず手に力が入るのをおぼえる。

恐怖映画にしては甘い展開にも見受けられるが、現にペロン一家もウォーレン夫妻もその後無事に生きているわけで、家族の絆が成し遂げる描写は必然である。

それにしても、数々の悪霊がひとまずひとところに集められたウォーレン家の特別室は、その存在だけで生きた心地がしない。ひとまずおとなしく居るだけで、いつでも外に出られるようだし、とにかく娘は多難である。

(85点)
コメント (2)
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