Con Gas, Sin Hielo

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「女と男の観覧車」

2018年07月02日 20時57分03秒 | 映画(2018)
同じところを上へ下へと動くだけ。


世界中で盛んに行われている#MeToo運動。今までのセクハラ問題と大きく違うところは、何十年も前に受けた被害を訴えて、世間の支持が得られれば相手の名声を地に落とすことができる点にある。

刑事事件の時効よりも長い昔の話を持ち出して糾弾するってどうなの?と思うが、そんな意見を口にした途端に攻撃される恐れがあるので慎重にならざるを得ない。

映画界に数々の功績を残してきたW.アレン監督、御年82歳。

人間の愚かさを描かせたら右に出る者がいないストーリーテラーである彼だが、その秘訣は間違いなく彼自身が「クズ」な人間であるからにほかならない。

交際相手の養女と関係を持って訴えられた事件が代表例として挙げられるが、その前も後も、次々に名立たる女優たちと浮名を流しては関係をこじらせて別れる繰り返し。

ここ数年はアレン作品への出演希望を名乗り出る俳優が多かったが、作品が良かろうと芸術性が高かろうとその人の素行に問題があれば認められない時代になったことで、毎年作品を発表し続けてきた彼にも変化の兆しが出てくるのかもしれない。

昨年北米で公開された本作は1950年代のNY:コニーアイランドが舞台。

主人公のジニーは女優を目指していたが、夢は潰えて今は愛していない夫と暮らし、前夫との間に生まれた男の子を育てるために遊園地のダイナーでウェイトレスをしている。

そこに現れたのが海水浴場でライフガードのバイトを務める若い男性・ミッキー。女盛りを越えつつある中でも、自分はこんなところにいる人間じゃないと思っていたジニーはミッキーと不倫関係に。

ミッキーと一緒になって再び輝ける自分になることを夢見たジニーであったが、そこに疎遠になっていた夫の娘が現れたことで事態は思わぬ方向へ転がり始める。

ジニーの設定は40歳。確かに40を過ぎてから何かを成し遂げる人もいることはいるが、そろそろ自分自身を知ったうえでいろいろと諦めることが必要な年代でもある。

動けば動くほど、希望を持てば持つほど、現実の絶望に落ち込んで行くジニーが滑稽で悲しい。

そんなジニーを演じるK.ウィンスレットが実にはまり役である。「タイタニック」の頃から、美人ではあるがもっさりとした印象があったが、アラフォーになってけだるさが更に増した。

不倫の愚かさをフルコースで詰め込んだ物語には新鮮味はほとんどない。「ばかだねー」と言いながら軽く観る映画である。

毎年届けられるアレン印の小説。かなりマンネリ感があるけど、これが好きだからきっと来年も観に来るだろう。下手に目立って世間の批判を浴びるよりはよほどいい。

(70点)
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