Con Gas, Sin Hielo

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「検察側の罪人」

2018年09月02日 15時58分10秒 | 映画(2018)
いっしょうけんめい、木村君。


SMAP解散から1年。ジャニーズ事務所に残った木村拓哉が嵐の二宮和也と競演を果たしたことで話題の本作。

本来、同じ事務所の後輩と共演するなんて普通のことであり、それが映画の宣伝材料になること自体が異様なのだが、それに観客が呼び込まれるのだから商売的には勝ちということになる。

両者が演じるのは東京地検の検事。先輩の最上は、鬼と言えるほどストイックに仕事に邁進するエリート。後輩の沖野は、新人の頃に教えを受けて以来最上を尊敬して自己研鑽を重ねる、こちらも将来のエリート候補である。

そんな二人がタッグを組んで当たることになった1件の殺人事件を巡り、二人の間に正義を巡る確執が生じることになる。

実力があり、かつ正義に対して強固な信念があるからこそ、最上は自ら進んで深い闇の奥へと分け入っていく。過剰な自信から周囲の声に耳を閉ざすようになるのは、偉い人たちが失脚するときの図式の典型だ。

尊敬する先輩の行動に疑念を抱きつつも、ついていくことしかできない沖野を変えたのは、サポート役として傍らにいた事務員の橘だった。最上に対して、率直に疑問をぶつける橘に触発された沖野は、最上が手を染めた悪事の一端を知り、彼に反旗を翻すことになる。

本当の検察の世界は知らない。しかし、思い込みで操作や取り調べを行って冤罪を招いた事例をあるという以上は、おそらく本作のような世界や、それが生まれる土壌は存在するのだろう。

それにしても、最上や沖野が生きる世界の窮屈さの描写には息が詰まる。非常に優秀で仕事に全力を賭して生きてきた最上が持つのが、心がバラバラな家族と成就できない歪んだ正義というのがあまりにも悲しい。

木村拓哉は隙のない人間役でつまらないなと思いかけたが、完璧な見かけの裏で実はすべてが破たんしているという設定が何かとても皮肉なものに感じられて、よくやるねと思えるようになった。

最後に叫び声を上げるのは沖野だが、自分の過ちに気付かなければ何も感じることはない。迷って考えることができる分だけ彼の方が未来は明るい。

(75点)
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