Con Gas, Sin Hielo

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「ラストソルジャー」

2010年12月05日 05時41分14秒 | 映画(2010)
J.チェンの心の中は深くて重い。


宣伝で使われている「構想20年」なんて言葉はまったく参考にならないが、この映画はおそらく20年よりもっと昔からジャッキーの心にあった思いを綴ったものなのではないかと想像する。

主題歌パクリ疑惑で話題になった上海万博の式典で、前面に立って中国をアピールしていたジャッキー。中国人の血や思想と商業主義の融合は、20年、いやもっと前の香港のように進むのであろうか。

ハリウッドでも名声を築いた彼の言葉は、時に国際的に物議を醸す。それ故、直接的な刺激を避け作品を通して思想を語ることが望ましいのだろうが、彼の映画の持ち味はコミカルな要素であるだけに難しかった。

それだけに本作の重さ、これまでになかったラストシーンは、彼の本気度を語るに十分である。

中国外交の基本とも言われる言葉に「戦わずして勝つ」というものがある。

孫子の兵法にあるらしいが、本作の主人公である「小さい奴」は一貫して戦わないことを説く。

ジャッキーはコミカルだけでなくアクションをも封印した。

その代わりに掲げたのは、田畑、菜の花、そして平和。

「小さい奴」との旅を経て、「衛」の皇太子はそれまでの好戦的であった自分を戒める。

一見それなりのハッピーエンドかと思うのだが、その後に示される史実は重い。

「衛」は「秦」に滅ぼされ「秦」が中国統一を果たすのだ。「衛」はほぼ無抵抗で「秦」に国を差し出したという。

それでは「戦わずして勝つ」の真意とは何なのか?戦わなかったら負ける場合はどうすればいいのか?そもそも「勝つ」とは何か?

「小さい奴」は最後も戦わず、ただ国の主が変わることは拒んだ。彼に学んだ「衛」の皇太子は、国に固執せず民生の安定と平和を選択した。

冷戦の終結、資本主義の行き詰まりを経て、新たな混沌を迎える世界の中で、それぞれがどのような道を選択するのか。ジャッキーの回答は明確には示されていない。

(80点)
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